22の基幹統計で延べ31
手続き上ミス 予算影響なし

厚生労働省が不適切な手法で統計調査を行っていた問題を受けて、政府は、特に重要な統計と位置づける56ある「基幹統計」を点検した結果、22の統計で、延べ31の手続き上のミスなどが見つかったことを公表しました。厚生労働省の調査のように予算や給付に影響が及ぶような問題はなかったとしています。

厚生労働省が賃金や労働時間に関する「毎月勤労統計調査」を不適切な手法で行っていた問題を受けて、政府は、特に重要な統計と位置づける56ある「基幹統計」について、適切に行われているか点検を行い、24日夜、結果を公表しました。

それによりますと、7つの省庁の22の統計で、延べ31の手続き上のミスなどが見つかりました。国土交通省が行っている「建設工事統計」では、事業者からの報告内容に誤った記載があり、公表した値が、実態よりも大きかったことが明らかになり、正確な値を確認したうえで、結果を訂正するとしています。

また、総務省の「住宅・土地統計」や、財務省の「法人企業統計」、それに文部科学省の「学校教員統計」など9の統計では、集計されていない事項があったということです。

さらに、国土交通省の「建築着工統計」では、一部の都道府県の抽出方法が国が示している手順と細部で違っていたほか、経済産業省の「商業動態統計」など延べ20の統計では、手続き上の問題などが見つかりました。

これらのうち、21の統計は、当初の計画どおりに調査を行っていなかったなど、統計法の規定に反しているおそれがあるということです。

ただ、厚生労働省の調査のように予算や給付に影響が及ぶような問題はなかったとしています。

政府は、統計調査への信頼を回復するため、総務省の統計委員会に新たな専門部会を設置して、「基幹統計」に加えて、「一般統計」についても、再発防止などに向けた検証を行うよう要請することにしています。

経産省 3つの基幹統計で手続きミス

経済産業省では、企業の事業内容などを調査する「企業活動基本調査」と、全国の小売業者の販売額などを調べる「商業動態統計調査」、それに、ガスの販売量などを調べる「ガス事業生産動態統計調査」の3つの統計調査で、手続き上のミスがあったことが分かりました。

このうち「企業活動基本調査」は、全国の従業員50人以上の3万7000社余りを対象に、年に1度、企業の事業内容などを調査していますが、「社外取締役の有無」の項目を「取締役の人数」に変更したにもかかわらず、総務省に必要な申請をしていなかったということです。

また、毎月、全国の小売業者などから一部を抽出して、販売額などを調べている「商業動態統計調査」では、平成29年に調査対象を変更した際に、必要な申請を総務省に行っていませんでした。

さらに、毎月、ガスの販売量などを調べている「ガス事業生産動態統計」では、四半期ごとの結果について、本来、経済産業省と総務省の双方のホームページに公表する必要がありますが、総務省のホームページに掲載していなかったということです。

これら3つの調査について、経済産業省は担当者の変更で引き継ぎが行われなかったことなどによる手続き上のミスで、調査した結果に誤りはないとしています。

農水省 2つの統計で公表遅れ

農林水産省では2つの統計で調査結果の公表が遅れるミスがあり、農家の所得などを調べる「農業経営統計」で最長およそ5か月、牛乳や乳製品の生産量などを調べる「牛乳乳製品統計」で最長2日、予定の期日より公表が遅れたということです。

農林水産省によりますと、いずれも取りまとめや分析に時間を要したことが原因だったということで、調査結果に誤りはないとしています。

文科省 統計の一部公表せず

文部科学省では、今回、4つの統計を点検した結果、調査対象の選定方法などに問題はなかったということです。

一方で、3年ごとに、教員の給与を、校長や教頭といった役職別に公表する「学校教員統計」で、平成19年度のものから4回続けて「特別支援学校」の一部を公表していなかったということです。
また、「学校教員統計」と「社会教育統計」の中間報告の公表時期が当初の計画よりも2か月前後遅れたケースもあったということです。

総務省 3統計でミス

総務省では住宅や居住している世帯などを調べる「住宅・土地統計」と、企業の収益や就業者などを調査する「経済構造統計」、それに家計の収支などを調査する「全国消費実態統計」の3つの統計でミスが見つかりました。

いずれも、調査計画の承認を受けるための書類に、集計していない項目を誤って記載していたということで、調査結果への影響はないとしています。

厚労省 3統計で公表に遅れ

厚生労働省では9つの統計が点検の対象となり、問題が明らかになった「毎月勤労統計調査」のほか、3つの統計で公表時期が遅れるミスがありました。

新たにミスが見つかったのは、医薬品や医療機器などの生産額をまとめた「薬事工業生産動態統計」、病院の数などの「医療施設統計」、入院患者数の推計などの「患者統計」の3つです。

これらの統計は結果の公表が2か月から9か月、計画の期日より遅れていたということです。厚生労働省は「調査対象からの報告が遅れるなど、集計作業に時間がかかった。今後、対応を検討し改善する」としています。

国交省 1兆6000億円余過大公表も

国土交通省では、7つの基幹統計でミスがあったことが分かり、このうち大手建設会社50社を対象に工事の受注状況を調べる「建設工事統計」は、実態より1兆6000億円余り過大な項目があったなどとして訂正しました。

誤りがあったのは、平成29年2月分から平成30年11月分までの「建設工事統計」の、施工済みの工事費を示す「施工高」と、未着工の工事費を示す「手持ち工事高」の項目です。いずれも建設業界の景気の先行きを示すもので、このうち平成29年度の施工高はおよそ15兆2000億円と、実態より1兆6000億円余り過大に公表していたということです。

国土交通省はミスの原因として、事業者からの報告内容に誤りがあったことに加え、集計担当者が1人で作業を行っていたため、チェック機能が働かなかったことをあげていて、24日付けで調査結果を訂正しました。

また、「建築着工統計」では、一部の都道府県での抽出方法が国が示す手順と細部で異なるケースがあり、調査結果に問題はないとしていますが、今後、適切な手順で抽出を行うよう指示することにしています。

このほか、「鉄道車両等生産動態統計」「自動車輸送統計」「港湾統計」「造船造機統計」「法人土地・建物基本統計」でも、計画で定められた期日から公表が遅れるなどの手続き上のミスがあったということです。

国土交通省は「国民生活に重要な統計行政で多くの問題が見つかり、大変申し訳ない。チェック体制の見直しなど、再発防止に全力で取り組みたい」としています。