「武力でしか領土とれない 守れないは悲しい」竹島の日に考える

竹島

「竹島は僕たちから遠い存在に思えてしまう」
2月22日の「竹島の日」を前に中学生が書いた作文の一節だ。
以前は竹島にあまり関心がわかなかったという、中学生たちの率直な思い。
地元・島根県の中学生たちが書いた作文から、竹島の日に領土について考える。
(松江局 奥野葉月)

竹島問題 今なお解決されず

島根県の松江市からフェリーで2時間余りの隠岐諸島。竹島は、そこからさらに150キロほどの沖合にある。
面積およそ0.2平方キロメートルと東京ドーム4つほどの小さな島だ。

竹島

アシカやアワビがよくとれたことから、かつては漁師が行き来してその生活を支えてきた。

アシカ猟が本格化すると、地元で漁の安定化を求める声が高まり、日本政府は1905年(明治38年)に閣議決定によって竹島を島根県に編入し、領有の意思を再確認した。

しかし1952年、当時の韓国のイ・スンマン(李承晩)大統領が、朝鮮半島周辺に「李承晩ライン」と呼ばれる境界を一方的に設定し、その中に竹島も含むとし、現在も警備隊を置いている。

日本は、竹島は歴史的事実に照らしても、国際法上も明らかに日本固有の領土だとしたうえで、韓国による竹島の占拠は、国際法上何ら根拠がないまま行われている不法占拠で、国際法にのっとり、冷静・平和的に紛争を解決する考えだとしている。

遠い存在の竹島

竹島がある島根県は、明治時代に竹島を県の所管とした2月22日を条例で「竹島の日」としている。
若い世代に竹島に関心を持ってもらおうと島根県などが「竹島の日」を前に毎年行っている作文コンクール。今回は、県内の中学生の724作品が寄せられた。

寄せられた作文

「日本本土から約200キロメートルも離れた竹島を自分の目で見ることはできない。竹島は僕たちから遠い存在に思えてしまう。しかしそれは違う」

「私の結論は正しい知識を身に付けることと、領土問題への意識の風化を止め、解決への輪を広げることです。解決までに時間がかかるからこそ意識の風化を防がなくてはなりません」

作文では、竹島を一見、遠い存在として捉えてしまいがちだとして、同世代の若者たちの無関心さを懸念する意見も目立った。

理解する難しさ

島根県内のあちこちで見ることができる「竹島かえれ島と海」と書かれた看板。

「竹島かえれ島と海」の看板

「『竹島かえれ島と海』の言葉がどんな意味なのか分からなかった」

作文の冒頭でそうつづったのは島根県大田市の中学3年生、山根かおるさんだ。

授業を受ける山根かおるさん

看板は小さな頃から知っていたものの意味が分からず、領土のことだと知っても「争いが始まる前に竹島をあげてしまえばいいのではないか」とすら感じていたという。

そんな山根さんに大きな影響を与えたのが父・一成さんだった。山根さんに竹島の歴史、そして、今どんな状況にあるのかを話している。
小学校の教師で、毎年2月22日の「竹島の日」が近づくと学校で竹島の特別授業を行っているが、授業を行うと、子供の頃から竹島問題を理解してもらうことの難しさを感じるという。

山根さんと父の一成さん

「国際条約だとか戦争に関わることが多いので、シンプルに、分かりやすく教えるというのは難しい。勉強すると、どうしても子供たちは『韓国が憎い』とか『むかつく』と言うことがあるが、けんか腰ではなく、こんなことを学んできたということを穏やかに話し合えるようになってほしいです」

ウクライナ侵攻と領土問題

作文では、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻から領土問題のことを考える中学生もいた。

「世界中でさまざまな問題が生じている。少しでもこのような問題が解決に向かうように私は将来、選挙に積極的に行ったり、領土問題について意見を伝えたりして、社会で起こっていることに関心を向けたい」

「目指すは平和的な解決。あきらめてはいけない、時間がかかってでも解決しないといけないともう一度思いました」

山根さんも、領土をめぐる戦いでたくさんの命が失われる状況を悲しいと感じている。

山根かおるさん

「武力っていう方法でしか領土をとれない、守れないっていうのは、悲しいことだなって思っています。武器を置いて、ちゃんと領土について話し合って解決されることが望ましいかなと思います」

中学生が訴える竹島問題の今後

授業の様子

「竹島の日」を前に、山根さんは同級生たちが学んだことの発表に耳を傾けていた。
竹島をめぐる歴史、日本と韓国の竹島への向き合い方、そしてウクライナ情勢と様々な面から竹島問題を見つめてきた山根さんは、多くの人がこの問題に関心を持ち、考えていくことが必要だと感じている。

山根かおるさん

「国民がまず問題について知り、意見を伝えていけば次に解決が見えてくるのではないでしょうか。
これからも領土問題が続けば、今度は私達の世代が解決しないといけなくなるので、そのためにも今学び、知識を身につけて、将来、武力ではなく、話し合えるように、自分の考えをちゃんと持っているようにしておくことが大切だと思います。意見のすれ違いがあるから、じゃあ日本はどうするのか、両国はどうしたらいいのかっていうところに視点をおくことが大事だと思います」

以前は、竹島の問題に関心がなかったという山根さんの作文はこう締めくくられている。

「教育や主張の発信を政治任せにせず、1人1人が意識して行動すべきだ。私も領土問題のすべてを知っているわけではない。まずはそれを自覚することが大事だ」

松江局記者
奥野 葉月
2018年入局。初任地が松江で、一畑グループの取材歴は松江局で最長。「贈り物は一畑で」だっただけに寂しさも。