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新潟市のバス交通どう変わる?

持続可能な「地域の足」確保なるか
  • 2023年12月15日

 

新潟市内の路線バスを運行する新潟交通は運転手不足などを理由に運行本数を減らしていて、公共交通機関をどのように維持していくかが市の課題になっています。新潟市は今後6年間の運行に向けた新しい協定を新潟交通と年内に結ぶ方針で協議を進めています。市内の路線バスは今後どう変わるのか「地域の足」は守られるのか、これまでの動きをまとめました。
(新潟放送局 記者 髙尾果林)

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市と新潟交通の協定とはどんなもの?

新潟市の篠田市長(当時・左)と新潟交通の佐藤社長(当時・右)

2014年4月、新潟市と新潟交通が初めて交わしたのが「新バスシステム事業にかかる運行事業協定書」です。この「新バスシステム」とはBRT=バス高速輸送システムのこと。この協定はBRT構想のもとに生まれたものでした。

BRT構想とは
持続可能なバスネットワーク確保に向けて市中心部の過剰な便を減らし、郊外路線を充実化させようと導入が検討されました。具体的には市中心部にバス専用レーンを設けて2両編成の連節バスを走らせて収容力をアップ。市中心部の便を減らすことで、手が空いた運転手を郊外の路線に振り向ける構想でした。

1度に大勢の人を運ぶことを目的に導入

協定の主なポイントは▼新潟市がBRTの停留所や連節バスなどを所有・整備する一方で、新潟交通が運行や管理を行う「公設民営方式」をとること▼市がバス専用レーンの整備を進めること▼年間の最低走行距離数を957万キロとすることでした。

この協定により市中心部を走る「萬代橋ライン」も誕生したのです。

予期せぬ課題が BRT構想断念へ

市はBRT実現に向けて動き出しましたが、課題に直面しました。

郊外と市中心部を結んでいた路線に乗り換えが生じたため、市民から「不便になった」という不満の声が上がります。

道路の間に作られたバス停

さらに2016年、市は路上にバス停を設けてバス専用レーンにバスを走らせる社会実験を行いましたが、利用者からはバス停の位置をめぐって安全面への不安の声があがったほか、渋滞が発生するなどの問題が浮上したのです。

バス停へ向かう人たち

これを受けて市は、専用レーンよりも駅や周辺道路の整備を優先して工事を進めましたが、そのさなかに新型コロナウイルスの感染が拡大。バスの利用者は激減したほか運転手も不足して減便が相次ぎ、新潟交通の業績は悪化。市はBRT構想を事実上断念しました。

新しい協定の内容は?

12月市議会で説明する市長

新たな協定はこうした反省を踏まえ、次のような内容になる見通しです。

新協定で市と新潟交通が同意している内容
・「専用レーンの整備」「走行距離確保」の文言を削除
・2025年春に供用を開始するJR新潟駅のバスターミナルを経由し、
 駅の南側の各方面から新潟市役所まで運行する新路線を設ける
・連節バスを引き続き利用する(BRTという名称は廃止)
・大型2種免許の取得費用を市が補助するなど運転手不足解消のための対策 など

12月12日に開かれた市議会の一般質問では、新潟交通との協定に関する質問が出されました。

新潟市議会の一般質問(12月12日)

中原市長は、これまでの協定について▼導入から新型コロナ感染拡大前まではバスの利用者数が増加に転じるなど一定の効果があったとしたほか▼新路線ができることで郊外の路線が減便されるかどうかについては交渉中であり、新潟交通の労働力から考えるとギリギリの調整を図ってもらう必要があるという考えを示しました。

そのうえで中原市長は次のように述べました。

中原市長
運転手の不足などバス交通をとりまく状況が大きく変化していることから本市のバス交通の未来を見据えた実現可能な事項を位置づけ、バスネットワークの維持・確保に取り組んでいきます。

新たな協定は年内に締結される見通しです。2024年問題など運転手不足が懸念されるなか、市民の生活に欠かせないバス交通を守ることにつながるのかが焦点です。

  • 髙尾果林

    新潟放送局 記者

    髙尾果林

    2021年入局。事件・事故や裁判の取材をへて、現在、新潟市政などを担当。

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