ページの本文へ

にいがたWEBリポート

  1. NHK新潟
  2. にいがたWEBリポート
  3. 『上中下越に佐渡(さぁ~ど~)ぞ!』新潟県三条市

『上中下越に佐渡(さぁ~ど~)ぞ!』新潟県三条市

  • 2022年11月21日

三条市

新潟県の37市区町村の魅力をお届けする「上中下越に佐渡(さぁ~ど~)ぞ!」。第25回は三条市です。三条市と言えば、なんといっても金属加工業を中心とした「ものづくり」。職人たちのおなかを満たしてきたというカレーラーメンなどグルメも独自の発展を遂げてきました。自然にも恵まれ、下田地区にある景勝地の八木ヶ鼻では四季折々の壮大な景観を楽しむことができます。

「街を編集する」

そんな三条市中心部の歴史ある商店街には「ものづくり」の精神を受け継ぎながら新たな文化を発信する拠点になろうと挑戦している新しい書店「SANJO PUBLISHING」があります。コンセプトは「街を編集する」。
洋品店だった3階建ての建物をリノベーションして去年2月にオープン。入り口には大きな「3」の文字。三条市の「3」、そして、本を開いた状態をモチーフにしたというデザインが斬新。

店内は洋品店だったころの痕跡もあって、どこかレトロな雰囲気が漂う、おしゃれなつくりになっています。シャッターを下ろした店が軒を連ねる商店街にあって異彩を放ち、店に一歩入ると別世界に踏み込んだような感覚に陥ります。店内には新刊と古書、合わせて2000冊。書店部門担当の町田憲治さんのセレクトです。

7割が古書 3割が新刊

ものづくりの街、三条市らしくデザインやアートなど創作意欲をかき立てる本が多く集められ、眺めているとさまざまな思いが浮かんでは消え、しばし日常を離れることができます。こんな書店が家の近くにあったらいいなと思わずにはいられません。

本が人と人をつなげる

この書店のユニークな取り組みが「ひと棚本屋オーナー制度」。これは棚を希望者に月3千円で貸し出して蔵書や自身の創作物を販売してもらおうというもの。町田さんが、お客さんに本を買ってもらうだけでなく、書店づくりに参加してもらいたいと始めました。棚を持ってもらうことで、棚のオーナーと店、オーナー同士のつながりが生まれ、地域の活性化につながればというねらいです。

書店部門担当 町田憲治さん

町田憲治さん
私たちだけで書店をつくるのではなく、いろいろな方が参加できる参加型の書店にしたい。本には人と人をつなげる役割があり、つながりの中から新たなアイデアやものづくりへの意欲もわいてくる。魅力の多い三条市が本を中心にしてさらに魅力ある地域になるように取り組んでいけたら。

2022年11月に取材した時点で6人が棚のオーナーになっています。地元で新たにサッカーチームを立ち上げ、Jリーグを目指そうという団体の代表がサッカーに関連した本を並べたり、絵本作家の方が自身の作品を並べたり。棚の並べ方もオーナーに任せられ、店の書棚にいっそうの彩りを添えています。

編集・制作部門

さらにこの「SANJO PUBLISHING」には、2階に喫茶・軽食スペースがあり、コーヒーを飲みながら本を読めるほか、3階には編集・制作スペースもあります。

書店に編集・制作スペースとはこれいかに。3階をのぞかせてもらうと、そこには編集作業などを行える広い作業スペースや出版物を印刷することのできるちょっといい複合機も。

編集・制作部門の本格的な稼働はまだまだこれからということですが、担当の水澤陽介さんが鋭意作業を進めていました。目指しているのは燕三条地域の魅力を発掘し、発信する書籍の出版。水澤さん自らがものづくりの工場などに出向いて職人から話を聞き、その魅力を伝えようと取り組んでいます。

「本を作れる本屋に」

さらに、水澤さんには大きな野望が。それは、誰もが本を作れる本屋になること。

水澤さんの話
ものづくりの町、三条市の本屋だから本が作れる本屋にしたい。誰もが本の作り手として自由な創造性を発揮できる環境をつくることができれば、地域の文化はもっと豊かになる。本を読むだけでなく、本を書きたい、本を作りたいという人が集まれる場所を作りたい

可能性 感じました

表現したい人が集まり、新たな文化の発信の拠点になる。ものづくりの町 三条の書店らしい夢のある取り組み。
読書離れが進み、町の本屋がひとつ、またひとつと消えていく昨今…。「SANJO PUBLISHING」がある商店街もシャッターを下ろした店が並び、平日、日中の人通りは多いとは言えません。SNS全盛の時代に地方都市で新たに町の書店を立ち上げる、まして書店を中心にして地域を活性化する。正直なところ、そんなことが本当に可能なのかと感じていました。
しかし、実際に訪れて、お話を聞いていくと、「SANJO PUBLISHING」であれば可能なのかもしれない。町の書店の新たな可能性を示しているのかもしれない。そう思うようになりました。
この地域にはほかにも個性的な書店が点在し、5分ほど歩いたところには、図書館を中心に鍛冶ミュージアムや科学教育センターが入った複合施設が2022年7月にオープン。本を中心にした地域の活性化が進んでいます。
ものづくりだけでない、本の町としてのこれからの三条市に注目です。みなさんも、さあ、どうぞ!

ページトップに戻る