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物価高でリユース市場に注目?工具専門や無人販売も

  • 2022年09月22日

食料品や電気代などあらゆるものの値上がりが続く中、多くの家庭が家計の節約を迫られています。こうした物価高や環境意識の高まりを背景にいま注目が集まっているがリユース市場です。新発田市で創業し、国内外で900以上の店舗を運営する「ハードオフコーポレーション」は事業者向けの工具専門店や無人店舗などを相次ぎ出店しています。市場の動きをどう見るのかや会社の戦略について山本太郎社長にインタビューしました。(新潟放送局 野口恭平 記者)

あなたはどうしてリユース店に?

9月中旬、3連休最終日に新潟市西区にある店舗へ取材に向かいました。

この店舗は衣料品やテレビ・PCなど、さまざまなリユース品を取り扱っています。
店を訪れた人たちにどんな理由で来たのか尋ねてみました。

南区から娘3人と訪れたという女性。最近転職して給料が少し下がったといいます。

先日はスーパーで特売のサラダ油が300円を超えていてびっくりしました。3人の娘は好みがバラバラで1~2年で趣味も変わる…。全員に毎回新品を買うのはもったいないので、7歳の娘のリュックはリユースでと買いに来ました。私の通勤かばんや子どもの学習机もここで買いました

南魚沼市から友人に会いに来たというこちらの男性。時間つぶしに訪れたと言いつつ、じっくり店内を見て回った結果、3000円のベビーカーやスノーボードなどを購入していました。

家電や趣味のものが値上がりしているが賃金は上がらないのできれいに管理されているものだったら気にならない、中古品でもいい

こちらの男性は母親のテレビを探していました。

母親のテレビが壊れたので買いに来ました。以前、冷蔵庫を買い替えた時は半導体不足で値段が上がっていたし家計的にも新品はどうかなと思ってリユースにしようと。

少しでも家計の足しに 資源の循環も

ただ捨ててしまうより少しでも家計の助けにしようと必要なくなったものを売りに来た人も多くいました。

こちらの女性は3連休の間に自宅を掃除し、着なくなった自分と娘の服やスニーカー、それに未使用の引き出物を売りに出していました。買い取り価格は840円でしたが納得している様子でした。

先日、売りに出してみたら結構いい値がついたのでまた来てみました。夫婦2人でつつましく暮らしているので、ちょっとしたお金が入るなら捨てるよりも役には立つかな。これから着るものだと高く買い取ってくれるそうなので、勉強になりました。

このほか「ゲーム好きなので自分が使わなくなったとしても誰かに使ってほしい」といってゲーム機とソフトを売りに来たお客さん。「レアメタルは貴重なので有効活用してほしい」とパソコンの部品を持ち込んだお客さんなどさまざまな人が訪れていました。

広がるリユース市場 社長はどう見る?

リユース市場はここ数年拡大し、ことし以降もさらなる成長が見込まれています。

専門誌「リサイクル通信」の推計

こうした状況を企業側はどう見ているのか。新発田市で創業したリユース会社の山本太郎社長(41)に話を聞きました。

山本太郎社長

一番はSDGsをはじめ環境への意識が高まったり価値観が変わったりしていて「ものを買って使って捨てる」のではなく「買って使ってリユースする」、誰かに使ってもらうのが本当に一般的になったことが大きい。また、物価高でリユース品がお手頃だろうということでお客様の来店も増えて(店側の)買い取りや販売が伸びていることもあると思います

プロ向けリユースや究極のリユースも

環境意識の高まりを受けこの会社は事業者向けのリユースにも乗り出しています。

金属加工業が盛んな燕市にことし8月オープンしたのは、「工具」の専門店。

この会社では通常の店舗で一番目立つところに置くのはスマートフォンですが…

こちらの店舗で入り口付近にあるのは電動工具。売れ筋だそうです。

このほか電動のノコギリに大型扇風機や除雪機、それに大量のドライバーや金づち。

チェーンは造園業の人も購入するそう

「つり具」という重たいものをつり上げるチェーンまで、すべてリユース品です。

経営が厳しくなったり後継者が事業を縮小したりして大量に持ち込むケースもあるそうです。

こうしたプロ向けの道具は木くずや油で汚れていることが多く担当者がブラシなどでメンテナンスします。また、大型の機材も持ち込まれるため通常の店にはない高圧洗浄機も備えていました。この会社では東京にも工具専門店を出店し店舗を増やしたい考えです。

無人店の料金箱

さらに思い切って値段を下げ商品を売り切ろうという試みも始めています。
新潟市にことし8月オープンしたこの店舗、並ぶのは通常の店舗で売れ残った洋服やおもちゃなど。

特徴は店に原則スタッフがおらず「無人」店だということです。

売れ残った商品はこれまで海外にまとめて販売したり廃棄したりしてきましたが、有効活用できないかと100円から300円で販売しています。

店舗は24時間営業。代金は客に箱に入れてもらう仕組みです。
ローコストオペレーションでビジネスとして成り立たせようとしていて、いまのところ経費をまかなえているそうです。

無人店 担当社員

担当社員
いまのところおもちゃが売れ筋で、先日はカギが開かなくなったダイヤル式金庫も売れていました。この店舗があることで(売り切る)最後のチャンスということで並べています

フリマアプリなどネット取り引きの増加は?

リユース業界はフリマアプリ大手のメルカリが利用を伸ばすなど、インターネットを通じた取り引きが急拡大しています。

山本さんの会社もここ数年、減益となるなど影響を受けていましたが新たなトレンドも見えてきたといいます。

お客様を一定数フリマアプリに持っていかれたなという感覚や不安もありました。フリマアプリで売り買いするのがトレンド、うちが遅れてるんじゃないかというような…。ただ、そこから数年たって大分変わってきたなという気がしています。大きくいうとフリマアプリが出てきたおかげでリユースがより大衆化されて、リユースを使う環境ができたので全体でいうとプラスだったのかなと。ものを売る時に時間があってより高く売りたいという時はフリマアプリを使うだろうけれど、逆にいうと引っ越しをしないといけない時や家のものをまとめて売りたい時、高額なギターとかオーディオも専門店だからと持ってきていただけるのはリアルの強み

2019年に父親から社長を継いだ山本社長。就任直後にコロナ禍に見舞われましたが、デジタルなど新たな挑戦を続けてきたといいます。

リアル店舗が僕らの強みなんですけど、リアルとデジタルを切り離すのはいけないなと思いまして。リアルがあってデジタルはまた別のものということではなく結びつけるというか、デジタルは無機質になりがちなんですけどそこに人のありがたみとか、そういったものを出すのを心がけています。例えば、デジタルでも意識しているのが我が社らしさを出そうということ。(専用のアプリを通じて)利用者が売りに出した品物に全国の店舗が手を上げる「オファー買い取り」という仕組みを取り入れたり、全国の店舗を1店舗ずつめぐる楽しみをつけたり。リアルの魅力をしっかりデジタルでも詰め込むことをやっています

900近い全国の店舗を回ったファンはすでに3人いるそうですが(取材時点)「私はまだまだです」と山本社長。

新潟発企業として 全世界へ

この会社では新業態を立ち上げる際は、テストマーケティングをかねて県内に出店してきました。
新潟県には大都市から小さな自治体まであり、四季もはっきりしているため「日本の縮図」だと考えているからです。この環境を生かし、国内外で事業を展開していきたいと意気込んでいます。

われわれは新潟県新発田市が本社だからこそ、いまがある。新潟の成功事例を各地に広げていくことを常に意識してやっています。新潟は非常にポテンシャルがある場所ですし首都圏とはまた違う。地方すぎない、田舎すぎないところがあって新潟での成功が他のところでも横展開しやすいなというのは常に感じています。新潟で培ったリユースの文化をこれから世界に広めていきたい。

最後に今後の経営にあたって大切にしたいことばを聞きました。

「不易流行」
会社設立から、ことしで50年。経営理念など変えてはいけないところは守り、デジタルや海外進出など変えるべきところはチャレンジしたい。

フリマアプリをはじめとする競合他社やコロナ禍など厳しい経営環境が続く中、40代の社長がどのようにリユース文化を発展させていくのかこれからも注目していきたいと思います。

動画はこちらから

  • 野口恭平

    新潟放送局 記者

    野口恭平

    2008年入局 徳島放送局、報道局経済部を経て新潟放送局へ。幼いころから南魚沼市で年末年始を過ごす。現在は経済を担当。ものによってリユースを使うか否かで家族会議が続きます。

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