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新潟の「ご当地アイス」 物価高の中 伝統と挑戦

  • 2022年08月23日

 夏の猛暑をしのぐのに欠かせない「アイス」。近年の異常とも言える暑さに新型コロナウイルスによる「巣ごもり需要」も加わり、全国のアイスの販売額は2021年、過去最高を記録しました。こうした中、新潟をはじめ各地で高い支持を得ているのがいわゆる「ご当地アイス」です。
 一方、アイス業界では急激な物価上昇で原料コストなどの負担が増しています。逆境の中、長岡市の老舗菓子店はアイスづくりの伝統を守り、新潟市のアイスメーカーは新たな取り組みに挑戦しています。(新潟放送局記者 米田亘)

伝統を守るアイスの老舗 物価高で増す負担

長岡市神田町の老舗菓子店「川西屋」です。
創業は明治42年、アイスの販売も80年余りの歴史があります。

店には「アイスキャンデー」と書かれた昔懐かしい旗やのぼりが掲げられ、アイスの持ち帰りは新聞紙にくるむなどレトロな光景が。味はいちご、ミルク、抹茶、小豆の4種類あり製法は一貫して変えず伝統を守り継いでいます。

店主の早川吉博さん

早川吉博 店主 
「うちの店の良さはお客さんの顔が見えるところ。お客さんが『懐かしい』とか『美味しい』とか言ってくれるのが聞こえる。それが良いところだと思っている」

取材した平日にも、朝から多くの客が訪れました。

近所に住む常連の男性

常連の男性
「夏になると必ずこれ(アイス)があって。ずいぶん食べてました」

一緒に来た孫娘のお気に入りは「いちご味」
常連の女性 多くのアイスを購入

記者
「何本買われたんですか?」
常連の女性
「きょうは30本にモナカ10個。子どもがいるので冷凍庫に入れて毎日食べてます」

しかし、厳しい現状もあります。
物価高や原油価格の高騰などから砂糖や割り箸などあらゆる原材料が値上がり。

2年前には新型コロナウイルス対策としてアイスを袋で包むために1本100円から110円に値上げしましたが、この物価高の中で利益が圧迫されています。

店主の早川吉博さん
「砂糖もね、1キロあたり12円値上がっている。発泡スチロールの箱とかね、ドライアイスもみんな値上がりしている。なかなか大変だわ」

新潟市のアイスメーカー 新たな分野に挑戦 

地域密着型で地元に根付いてきた「ご当地アイス」。困難を打開するために新たな挑戦に乗り出す老舗メーカーもあります。

新潟市北区のアイスメーカー「セイヒョー」です。

昭和20年代に販売を始め、県民に広く親しまれるこちらの商品。氷屋として創業したノウハウを生かし舌触りのよいさわやかな食感にこだわります。

新潟市のアイスメーカー 飯塚周一 社長

飯塚周一 社長
「食べた時のサクサク感が非常にこの商品の特徴で、それを出すためには48時間かけて(仕込んだ)氷を砕いて、できるだけ水分を入れずに氷だけを固めるというイメージの作り方をしています」

県内有数のアイスメーカーであるこちらの会社も物価高によって厳しい状況に置かれています。

アイスの原料や包装にかかる費用などあらゆるものが値上がり。
光熱費は例年の同じ時期と比べて4割以上も上昇したといいます。

さらに販売していた給食用のデザートは
新型ウイルスによる休校や食材費の高騰の影響で注文が止まることも。

飯塚社長
「コメとか野菜とかは必ず必要なものなので予算は割いていくんでしょうけど最終的にデザートは予算のあり方によってどんどん削られてくる。物価高になってくると当社の給食関係のデザートはちょっと厳しいかなと思います」

こうした状況を打開しようと取り組んだのが新たな分野への進出でした。

東京の酒造メーカーが発売した“ご当地サワー”。先ほどのアイスをもとにして作られました。

飯塚社長
「子どもの時に当社の商品を食べていただいていると思うんですけど、大人になってくるとあまり食べなくなってくるかなと。その時にこういうサワーを通して当社の商品を思い出していただけることになれば当社にとってもいいかなと考えています」

さらに「ご当地アイス」の販路拡大にも力を入れ、この夏は一大消費地の関東1都6県で15のスーパーなどでも販売を開始しました。

さらにアイス以外の商品として冷凍食品の開発も。
「くろさき茶豆」など新潟の特産品の価値をアピールしています。

創業106年を迎えたこの会社では、ご当地アイスの老舗として伝統を守りつつ、新たな挑戦を続けていく考えです。

飯塚社長
「100年間、新潟に続く会社として一体何ができるんだろうと。何をすべきなんだろうということから新たなチャレンジをしていって、次の100年に向けて頑張っていきたい」

取材を通じて

 取材したメーカーによれば、かつてアイスは冷凍技術や輸送コストなどの兼ね合いから全国で販売するにはハードルが高く、そのことが地域で地道に販売される「ご当地アイス」の誕生につながったということで、いまも全国に「知る人ぞ知る」アイスがあるということです。

 今回のリポートは、県内企業のいまを探ろうと新潟放送局でシリーズでお伝えしている「ガタBiz」のコーナーにあわせて取材しました。猛暑の中で「少しでも涼しさを感じられる企画を!」と思い立ち取材を始めたのですが、まさしくこの「ご当地アイス」にこそ地域密着で頑張るお店や企業の伝統への思い、挑戦する姿勢が詰まっているのだと感じさせられました。

 急激な物価上昇の波が押し寄せる中、いまアイスだけでなくあらゆる業界の事業者が苦境に立たされています。こうした逆境に立ち向かう新潟の人々や企業の動きを、今後もお伝えしていきます。 

  • 米田亘

    新潟放送局 記者

    米田亘

    平成28年入局。札幌放送局、釧路放送局を経て、令和2年に新潟放送局へ赴任。現在、一次産業を中心とした経済取材を担当。

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