真珠生産量・日本一の長崎 大村湾で養殖に挑む18歳の若者
- 2022年09月14日
長崎の真珠 13年ぶりに全国1位に!
今回お伝えするのは『長崎の真珠』についてです。
去年(2021年)、長崎の真珠の生産量が13年ぶりに全国1位となりました。長崎県には入り組んだ地形の地域が多く、真珠養殖に適しているそうです。
一方で、真珠養殖の現場では、後継ぎ問題も深刻化しています。そんな中、この春新たに真珠養殖に挑戦し始めた若者がいます。
NHK長崎放送局 西牟田知佳
漁業のまち★西海市西彼町
その若者に会いに訪れたのは、西海市西彼町です。カキ養殖や真珠養殖が盛んにおこなわれています。
こちらが真珠養殖を始めた鈴木勇汰郎さん(18歳)です。
この春、高校を卒業して、この道30年の父・正和さんのもとで働き始めました。
勇汰郎さん
「幼稚園のころからお父さんの作業場について行きました。魚とか海が好きで、休みの日はお父さんの手伝いをしたり、海で泳いだりしていました。
そういうのをやっているうちに、小さいころからずっと漁師になると決めていて、そこはずっと曲げずに今、頑張っています」
勇汰郎さんには高校時代、どうしても海に入りたくなって、冬の寒い日にもかかわらず、海に飛び込んで泳いだというエピソードも。
元気いっぱいで心の底から海と地元の町を愛する気持ちが伝わってきました。
早朝から始まる作業
勇汰郎さんが働くのは長崎県西海市の西彼町。大村湾の入り組んだ地形がとても美しい場所です。
本土から船で約5分の島に作業場があります。
時刻は朝6時半。島に向けて出発!
春から夏はもっとも忙しい時期のため、早朝から仕事が始まります。
高度な技術★真珠の核入れ作業
作業場に到着しました。
ここで、真珠養殖の工程について紹介します。大まかにいうと、「稚貝を育てる→核を入れる→貝の管理→真珠を取り出す」の順序となります。
取材した日に行われていたのが、母貝であるアコヤガイに真珠のもととなる核を入れる作業“玉入れ”です。
核は、別の貝の貝殻を削ってつくられたものです。
その核と一緒に入れるのが、光沢のある貝から取り出した外とう膜です。
真珠ができる仕組みを紹介します。外とう膜の細胞が貝の中で増殖して核の周りを覆い、何重もの層をつくることで真珠になります。すごいですね。
まずは外とう膜をハサミで切っていきます。
外とう膜は汚れを取り除く必要があります。そうしないと真珠の色がくすんでしまうからです。
汚れを取り除いたら、まずは縦にメスを入れ、
その後、横に1.5ミリから2ミリの大きさでカットしていきます。
カットした外とう膜をアコヤガイの卵巣に核とともに入れていきます。
玉入れは、高度な技術を要します。
正和さん
「貝の中は小さいので、傷つける面積をなるべく小さくして入れるのが難しいですね」
この道30年の父・正和さんも難しいという作業。鈴木さん親子の真剣な眼差しから神経を使う細かい作業であることもうかがえました。
玉入れは、スピード勝負でもあります。短い時間で一つでも多くの貝に核を入れていきます。
核を入れる場所が少しでもずれると真珠にならず、ずれが生じて貝にダメージを与えると死んでしまいます。
勇汰郎さん
「0.1ミリ単位で作業を行い、少しでもずれたら失敗してしまうので難しいですね。まだ貝のことがわかっていないので。数をこなして上達していけたらと思っています」
玉入れを終えたアコヤガイは、その後、網に入れ、真珠を取り出す12月下旬まで念入りに管理をします。
真珠になるまで育つのは8割程度。高度な技術はもちろん天気や気温など、さまざまな条件が重なって、ようやく美しい真珠が出来上がります。
漁業を通して地域を盛り上げたい
2022年8月25日現在、西彼地区の漁業者160人のうち、30歳以下の若手は、わずか2人。勇汰郎さんは地域にとっても貴重な存在です。
勇汰郎さんは地域の漁業者の方から「がんばりよるね~!」と声をかけられることも多く、励みになっているそうです。
地元の大村湾の自然のなかで育まれる真珠。勇汰郎さんは、漁業を通して地域に貢献したいと意気込んでいます。
勇汰郎さん
「最近、若手が減って、漁業後継者が減って、平均年齢もぐっと上がっています。自分(若手)が漁業で頑張ってる姿を、これから就職する皆さんに見てもらい、漁業をやってみようかなという人が一人でもいたら嬉しいと思って、頑張ってやっています」
勇汰郎さんの挑戦はまだまだ始まったばかり。父・正和さんを尊敬し、真珠養殖に真摯に向き合う姿から、とても頼もしく感じました。
今後の活躍に期待したいです。
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