台風から2年 日南大島「奇跡の海」を水中カメラマンがリポート
- 2022年09月09日
日南市の大島周辺は亜熱帯域と温帯域のサンゴ130種類以上が共存する、世界的にも珍しい豊かな海です。台風の被害から2年。今、海がどうなっているか潜水取材しました。
リポートをするのは宮崎放送局の取材カメラ担当で、NHKの潜水班にも所属するカメラマン・小林です。潜水班とは海や川など水中での取材や撮影が専門のカメラマンを中心とするグループです。いざ大島の海へ。
新たな発見相次ぐ、日南大島のサンゴ
ことし7月に見つかった九州最大級のハマサンゴ。数百年前から生息しており、人と比べてもこの大きさです。
太い幹が特徴のこのサンゴ。今年2月に新種のサンゴだと分かり、コノハナウミアザミと名付けられました。世界中でもこの海域にしか生息していません。
貴重な発見が相次いでいる大島のサンゴ。主に黒潮が流れ込む島の西側に生息しています。
2020年の台風で被害が…
一部のサンゴは一昨年の台風10号で大きな被害を受けました。下の写真は2年前に島の沖合およそ100メートルで私が撮影した映像です。
押しつぶされたり、まっぷたつに割れたハードコーラルと呼ばれる硬いサンゴ。台風による波が海底を根こそぎかき回し、辺り一面が岩だらけになっていました。被害があった海底は今どうなっているのか。当時と全く同じ場所を地元ダイバーと一緒に潜りました。水深6メートルあまり。目の前に広がっていたのは予想外の光景でした。
サンゴを破壊した岩の上に、ウミアザミというソフトコーラル柔らかいサンゴが広がっていたのです。2年間でこんなにサンゴが増えているとは思いもしませんでした。
大島のサンゴの再生力
海の中で何が起きていたのか。20年以上にわたって大島周辺のサンゴを研究する深見裕伸教授を訪ねました。
深見裕伸 教授(宮崎大学)
2年前は丸裸だったのでそう考えるとソフトコーラルが増えてますね。ソフトコーラルはサンゴ礁で最初に入ってくるパイオニアと言われています。それが1番最初に今入ってきて増えている段階だと思います。
深見裕伸 教授(宮崎大学)
体の中に「共生藻」という藻類がいて、それが光合成した栄養分を海の中にたまった余剰分を放出するので、それをエサにしていろんな動物が集まってくると思います。生態系の基盤を作る感じですね。
被害から2年、海底で目の当たりにしたのは以前の姿に戻ろうとする大島のサンゴの再生力でした。
さらにもう1つ、サンゴの生命力を感じる出来事がありました。中央に出っ張りのあるこのサンゴ。実は2年前に今回案内してくれたダイバーが岩の陰から引っ張り出したサンゴでした。日陰にいると生きられないサンゴを1つずつ手で起こして助けていたのです。傷ついたサンゴが今も元気に生き残っていました。
福田道喜さん(地元ダイバー)
あのときに起こしてまわったりしたので、まだ元気にしてるっていうのはすごくよかった。生きていれば当然産卵もするわけで、子孫もちゃんと残していってくれるので、すごくいいことだなと思います。
奇跡の海 日南大島
サンゴは今、産卵のシーズンを迎えています。黄色の小さな命がサンゴの表面で揺れていました。
また新しい奇跡を見せてくれるのではないか。そう感じさせてくれる大島の海の今でした。
取材後記
今回取材した地元ダイバーの福田道喜さんはこの貴重なサンゴをどのように保護していくか、宮崎県や日南市と協力して進めていきたいと話していました。
これは水中を撮影する4Kカメラです。流れがある水中でも安定して撮影できるよう重さはおよそ20キロあります。
このカメラで今後この大島の海がどう変わっていくのか、引き続き取材を続けていきたいと思います。