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群馬 サラメシ① 「尾瀬」の守り人たちを支える社員食堂とは?

12月22日(金)「ぐんまスペシャル サラメシ 群馬特別編」 放送直前企画
  • 2023年12月18日

12月22日(金)「ぐんまスペシャル サラメシ 群馬特別編」の放送に合わせ、県民のランチをさらに取材しました!シリーズ1回目の今回は、番組内で舞台になった「尾瀬国立公園」を管理する会社の社員食堂から。広大な湿原を守る知られざる仕事がまだまだありました。

(前橋放送局 ディレクター 宮内智子/2023年11月取材)

植物900種類以上!生きものの楽園・尾瀬を守る社員たち

訪ねたのは、片品村にある尾瀬国立公園の管理を請け負っている会社。
従業員36人で、尾瀬のおよそ4割にあたる土地の管理・保全を担っています。

伺ったのはちょうどお昼時!早速、会社の社員食堂をのぞいてみると…
月曜日は“うどんの日”ということで、従業員のみなさん、片手にどんぶり!

セルフサービスでうどんを温めていました。きのこがたっぷり入ったつゆと、ネギ・山菜は好きなだけ。それだけじゃありません!てんぷら5種に小鉢が3つと、盛りだくさん!!

「奥さんから旦那さんを預かっているので、変なもん食べさせられないから」というのは、社員食堂を一人で切り盛りしている星野チエミさんです。

単身赴任の従業員たちの健康を気遣い、チエミさんが、自宅で育てた季節の野菜をたっぷり取り入れています。派手さはないけれど、優しいおふくろの味。旬のものが食べられて、なおかつヘルシーな献立は、男女問わず大人気です。

星野チエミさん

大自然を相手にする仕事のため、体力を使うことも多いみなさん。かなりの量ですが、女性の従業員の方もペロリと平らげます。のど越し抜群のうどんで“するっと”食べられちゃうんだそう。

尾瀬を管理する「環境保全グループ」 高野さん

年間約16万人が訪れる尾瀬国立公園。安心・安全に楽しんでもらうために、様々な仕事があるんです。
食堂にやってきた環境保全グループマネージャー、高野尚之さん(51)にお話を伺いました。

主に尾瀬の保全・管理を任されている高野さん。取材した11月の主な業務は木の間伐。木材を切ってしまったら、自然を壊してしまうのでは?と思いきや、尾瀬を守る大切な仕事の一つなんだとか。伐採しているのは、尾瀬国立公園を囲う山林。昔から林業が盛んで、間伐・植林が行われてきました。

しかし、植林した森は人が適宜、伐採・管理しないと木が大きく育ちません。木がしっかり育たないと森の保水力が失われ、土砂崩れなどを引き起こし、同じ山々からなる尾瀬にも悪影響が出てしまうといいます。また、この森の水は、水力発電にも利用されているため、私たちの生活にも大きく関わっています。山々を管理することで、尾瀬や地域の暮らしを守っているんです(ちなみに間伐材は、尾瀬の動植物を守るために敷かれる「木道」の材料に!)。

この仕事の特権! 高野さんイチオシ “冬”の尾瀬

冬は雪が積る尾瀬。そのため月1回、山小屋や橋の除雪に向かいます。3m以上の雪を下ろすため、約一週間泊りがけの作業に。へとへとになりながらの作業ですが、この時にしか見ることのできない景色があるといいます。湿原が一面の銀世界に。

見慣れた湿原の景色ではなく、この仕事でしか味わうことができない絶景です。

高野尚之さん(入社32年)
「他ではなかなか経験できない仕事がたくさんあります。だからこそ面白いし、あきがこないのかと思います。尾瀬を守ることで一人でも多くのお客さんが楽しんでくれたらうれしいです!」

次世代の子どもにつなぐ「広報チーム」 大木さん

取材をしていると唯一おかわりしている人を発見!

広報チームの大木高雄さん(42)です。
セルフサービスのうどんの日は、いつも必ずおかわりしてしまうんだとか。
そんな大食漢の大木さんのお仕事は、尾瀬を多くの人に知ってもらう「広報活動」です。雪がなくなる5月から10月の間は、小学生や中学生などの学校や企業を対象に、ツアーを行っています。大木さん自らガイドもしているんです。

聞けば大木さん、尾瀬で働きたいと思ったのは中学3年生のころ。群馬県、福島県、新潟県が主催する「尾瀬子どもサミット」に参加したことがきっかけでした。群馬県伊勢崎市出身のため、それまで尾瀬を訪れたことはありましたが、「きれいな場所」としか感じていなかった大木さん。このイベントで同行していたガイドから、生きものの生態や、尾瀬の環境について学んだことで、今まで見ていた景色ががらりと変わったといいます。

今ではこどもたちに尾瀬の魅力を伝える側になった大木さん。ガイドの時に心がけているのは、「実体験を語ること」なんだそう。本を読んで得られる知識ではなく、実際にその場所でどんな動物がどんな行動をしていたのか、鹿の鳴き声はどんなものか、なるべくその場所でしか伝えられない情報を大切にしています。

大木高雄さん
「ただ知識を伝えるのではなく、体験を通して面白く語れば、何となく記憶に残るんじゃないかと思っています。ここで聞いた話がきっかけで自然に興味を持ってもらえたら、それが次につながるかもしれないので」

尾瀬を子どもたちに知ってもらうことは、未来につなぐ種まきのようなもの。
さまざまな仕事があって初めて尾瀬は守られていくことに気づいた1日でした。

ぐんまスペシャル「サラメシ 群馬特別編」もぜひご覧ください。
放送日:12月22日(金) 午後7時30分~<NHK総合・群馬県内向け>

  • 宮内智子

    前橋放送局ディレクター

    宮内智子

    2018年入局 
    群馬県に赴任して4年目。
    海なし県の群馬だからこそ山のおもしろさに気が付きました!

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