群馬 浅間山 天明の大噴火から240年“遠く離れた地から語り継ぐ”
- 2023年10月23日
群馬と長野の県境にある浅間山。240年前に「天明の大噴火」と呼ばれる大規模な噴火が起き、嬬恋村の鎌原地区では、477人が亡くなるなど壊滅的な被害が出ました。しかし、被害はふもとだけではありませんでした。浅間山からおよそ70キロも離れた伊勢崎市まで泥流が押し寄せ、家屋や田畑に被害が出ました。また、利根川には多くの遺体が流れ着いたと言われています。噴火から240年たった今、浅間山から遠く離れた伊勢崎市で後世に語り継ぐ取り組みを取材しました。
(前橋放送局 記者 渡辺毅/2023年9月取材)
“240年前の噴火” 伊勢崎市で初公開の資料
伊勢崎市の赤堀歴史民俗資料館には、天明3年の浅間山の大噴火から240年のことし、さまざまな資料が初めて公開されました。
資料が伝えているのは、浅間山から遠く離れた伊勢崎市の被害の様子です。田も畑も境がわからないほど灰が降ったと記されています。
噴火による泥流の被害が伊勢崎市まで及んだことを示す絵図です。
伊勢崎市 赤堀歴史民俗資料館 川道亨さん
「240年前に起きた実際の災害について、少しでもリアリティーをもって皆さんに見ていただければ、災害について関心を寄せていただけるかなと考えています」
大噴火の被害 “紙芝居で後世に伝える”
こうした大噴火の被害を後世に伝えようと活動する人がいます。
伊勢崎市に住む飯島恭己さん(79)です。
飯島さんが住む伊勢崎市の戸谷塚町には当時、多くの遺体が流れ着き、その犠牲者を供養するための地蔵がいまもたっています。
その歴史を語り継いでいこうと、飯島さんは6年前からある活動を始めています。それがこの紙芝居。地元の人たちが被災しながらも懸命に流された人の救助にあたったことを伝えています。物語は飯島さんが考え、絵は親族に描いてもらいました。
飯島恭己さん
「流れ着いた人々の1人でも2人でも多くの人を収容したいという村人の心がこもった絵になっている。やはりここに生まれたからには誰かが伝えていかなければならない」
“1人でも多くの人に 未来に語り継ぐ”
240年前に起きた出来事を1人でも多くの人に伝えていきたい飯島さん。9月中旬、地元の観光ガイドに初めて紙芝居を披露しました。
「あの浅間山が大噴火を起こしました。川の近くに住んでいる人たちもいっしょに(泥流が)押し流していきました」
飯島さんは、未曽有の災害に直面した地元の人々が地蔵をたてた思いを紙芝居に込め、読みました。
「河原に流れ着き、村の人たちは毎日、毎日遺体を捜してきれいにして収容して埋めました。お地蔵様を建てて供養をいたしました。先人たちが果敢に立ち向かったことを忘れてはならないと思います」
「人助けというのでしょうかね、やったことは今思えば感銘しますね」
「こんな大変なことがあったのを皆さんに知ってほしい」
浅間山から離れた場所で暮らす人たちにも噴火をひと事と思わずに関心を持ち続けてほしい。そう願い、飯島さんは紙芝居の活動を続けています。
飯島恭己さん
「浅間山の大噴火みたいな大災害が起こりえるということをまず知っていただきたい。1人でも多く、夜泣き地蔵のことを知ってそれを広めていってもらえたらと思っています」
飯島さんは、この紙芝居を地元の小学校などでも披露して、子どもたちに語り継ぐ活動も行っています。