ページの本文へ

ぐんまWEBリポート

  1. NHK前橋
  2. ぐんまWEBリポート
  3. 群馬 障害ある子のファッションショー 鳥居百舌さん太田で開催

群馬 障害ある子のファッションショー 鳥居百舌さん太田で開催

  • 2023年07月20日

ことし5月、太田市で開かれたファッションショー。ランウェイを歩くのは障害のある子どもたちです。笑顔に包まれた会場。そこにあったのは自分の可能性を切り開こうとする人たちの姿でした。

(前橋放送局 記者 辻智史/2023年5月取材)

企画者は“ちどり足のもず”

企画したのはインフルエンサーやモデルとして活動している鳥居百舌さん(20)。難病のため、下半身などに障害があり生まれつき歩行に困難を抱えています。以前は、障害があることを知られたくなかったといいます。

鳥居百舌さん
「やっぱり自分の障害に対してコンプレックスを持っていたので、本当に周りから見られるのすら嫌でしかたなかったです。SNSでも上半身しか写していませんでした」

しかし、家族からの励ましがあり、およそ1年半前に、全身を写した動画を初めてSNSに投稿。不安もあったという鳥居さん。しかし、鳥居さんの動画に次々に寄せられたのは「応援してるよー!!」、「元気をありがとう」などの応援のコメントでした。

鳥居百舌さん
「『もずちゃんの歩き方かわいい』のようなうれしいコメントがたくさん来てびっくりしました。自分の歩き方もまた1つの自分なのかなと思って素直に受け止められるようになりました」

自身の歩き方から“ちどり足のもず”の名前で活動。投稿する動画や画像は評判となり、インスタグラムには、いまや10万人以上のフォロワーがいます。

“夢を大きく持ってほしい”

そんな鳥居さんが今回のイベントを企画したのには、ある思いがありました。

鳥居百舌さん
「やっぱり障害があるからこの夢は諦めた方がいいのではないかとか、自分の中で限界を決めちゃうことがあるので、その限界を取っ払って、もっと夢を大きく持ってもいいんだよと伝えたいです」

そして、鳥居さんはクラウドファンディングでショーの開催資金を集めました。応募したモデルと面談を重ね、一人ひとりの障害を考慮した衣装を用意するなど、準備を進めました。

きょうだいで出演したモデル

鳥居さんの企画したショーのモデルに応募した、須田恋羽さん(13)と庵仁さん(10)のきょうだいです。2人とも、筋力が次第に低下する難病の筋ジストロフィーで、車いす生活を送っていて、外出する際には、上半身を支えるためのベルトを着用する必要があります。姉の恋羽さんは中学2年生。ファッションに興味がありますが、好きなデザインの服を選べないときがあるといいます。

須田恋羽さん
「前面にかわいい絵などがあってもベルトで隠れちゃったり背面にプリントがある服とかは車いすの背もたれで見えなかったりします」

それだけに、今回のショーに向けて、気持ちは高まっています。

須田恋羽さん
「私はフリフリした服が好きなので、そういうのを着たいなと思います。どういう自分になるのか楽しみです」

満員の会場へ

迎えた当日。モデルたちは気に入ったデザインの衣装に身を包みます。そして、100人を超える観客たちで満員の中、ショーが始まりました。次々とランウェイにモデルが登場。

弟の庵仁さんはロックなコーディネートで会場を盛り上げます。

舞台袖では、出番を待ち、緊張した様子の恋羽さんの姿。
「すごい人が集まっているね」と声をかけた記者に対して、発することができたのは、たった一言でした。

「やばい・・・」

しかし、出番が来ると堂々と登場した恋羽さん。ランウェイの中央で、ポーズを決めました。

最後は鳥居さん自身も登場し、大きな拍手の中ショーは幕を閉じました。

ランウェイから羽ばたく

須田恋羽さん
「失敗したらどうしようとか思ったけど終わってちょっと時間がたったら、楽しかったなと感じます」

勇気を出して挑んだ恋羽さん。ショーをきっかけに鳥居さんのようなインフルエンサーになりたいという夢を持ちました。そして、自身もSNSでの発信を始めました。

須田恋羽さん
「車いすに座っててもできることはたくさんあると思いました。これから、もっともっとおしゃれしていきたいです」

鳥居百舌さん
「モデルさん自身も次こういうことやりたいとか自分の夢を語ってくれて、このファッションショーがそのモデルさんの夢につながってくれてすごいうれしかったです。やっぱり『障害者=地味』という固定観念がなくなってほしいと思います」

誰でもファッションを楽しめる社会へ

このファッションショーを企画した鳥居さんは、障害者用のファッションアイテムなどを販売する会社をことし設立していて、障害の有無に関係なく、誰もがおしゃれを楽しめる社会に変えていきたいと活動を続けていくということです。

  • 辻智史

    前橋放送局記者

    辻智史

    2022年入局。警察担当。秋田県出身。あきたこまちをこよなく愛します。

ページトップに戻る