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群馬 ヘアドネーション 邑楽町の10歳が夏休みに人生初の決断

  • 2022年09月14日

例年以上に暑かったことしの夏。その夏休みにかげがえのない思い出を作ったお子さんも多くいると思います。

邑楽町の小学4年生の女の子は、8月20日に迎えた10歳の誕生日に合わせて、ある大きな決断をしました。それは、生まれて初めて髪を切ること。
「ただ、誰かのためになるのであれば」という思いからでした。

(前橋放送局ディレクター 杉山裕美/2022年8月取材)

赤ちゃんの頃から1回も…

邑楽町のラーメン店です。カウンターのお客さんの中に…。

いました!長い髪の家族です。

邑楽町に住む藤江さんの一家。

その自慢の一人娘が、小学4年生の和恋さんです。

母・藤江直美さん

「お姉ちゃん髪の毛、長いね~って言われたら、何て言うんだっけ?」

藤江和恋さん

「赤ちゃんのころから1回も髪の毛を切ったことがないんです!」

10歳の誕生日に向けて

和恋さんは5歳のころテレビで見た「世界一、髪の長い少女」に憧れて以来、髪を伸ばし続けてきました。ただ、10歳になるのを機に、大事な髪を切る決断をしたのです。

藤江和恋さん
「1人じゃ嫌だけどママもおばあちゃんも切るよって。じゃあ3人で切るんだったら大丈夫かなと思って」

髪を切る10歳になる誕生日当日に向け、家族みんなで伸ばしてきたのです。中でも一番長い和恋さんの髪の毛。実に1メートル10センチです。

母・藤江直美さん

「お風呂とお風呂から出た後の、髪の毛を乾かすっていう時間と労力は本当に大変で…」

特別な日となるヘアドネーション

なぜ、和恋さんたちが髪を切る決断をしたのか。

後押しをしたのは、女子高校生たちでした。3年前、和恋さんのおばあちゃんが存在を知った「ヘアドネーション」。

ウイッグを求める子どもに髪を寄付する活動に取り組む、女子高校生たちのサポートを受けることになったのです。

ぐんま国際アカデミー 女子高生ヘアドネーション同好会 廣瀬楓佳さん
「本当に特別な日になると思うので、その手伝いができることがすごくうれしいです」

ウイッグで気持ちが前向きに

高校生の活動開始から5年。ウイッグを届けた子どもの数は18人になりました。

その1人、太田市に住む高校1年の山本ななみさんです。5年前、小児がんを発症しました。

山本ななみさん
「病気の治療の副反応で、きれいに抜けちゃいました。髪の毛ないんだってショックな気持ちでした」

医師の紹介でウイッグをつけるようになった山本さん。気持ちが前向きになり、病を克服しました。

山本ななみさん
なっちゃんかわいいじゃんって言われて、とってもうれしかったのは覚えています。普通の人というか、いつもとちょっと違う自分になれたような感じで自信が持てました」

母・山本裕美さん
「やっぱり周りの人からあの子、病気なんだろうなっていう目でちょっとかわいそうな目で見られることが結構あったので、やっぱり表情が明るくなったし、家族みんな明るくなった感じがしますね.本当にありがたいです」

“ドキドキ”の当日

思いをつなぐ「ヘアドネーション」。

和恋さんの10歳の誕生日、いよいよ当日です。

「きのう、きれいに洗ったんだよね」

「うん、きれいに洗った。いつものお風呂より長かった」

「お昼ごはんも、ほとんど食べられてないよね」

「食べてない、食べてないよ…パンケーキ食べただけ、緊張するし…」

きょうで、長い髪ともお別れ。
隣町の美容室に到着しました。支えてくれる高校生たちの姿もありました。

まず最初は、おばあちゃんです。

次は、お母さん。

そして…。
美容師が、和恋さんの髪を切る準備を進めていた、その時でした。

「ママ!一番最初に和恋の髪の毛を切ってほしいんだけど!」

「ドキドキ」の初カットはママが

また10年後に

10歳で初めて切った髪。

和恋さん「髪の毛のバトンです。よろしくお願いします」

藤江和恋さん
「一番最初は嫌だったんですけど、いいことになるんだったらやってみようって思って、やった結果として自分も成長できた。私も元気なので、私の髪の毛をもらった人が元気をもらってくれればいいなって思います」

そして、最後に力強く宣言してくれました。

「また伸ばして、また10年後に切る!」

  • 杉山裕美

    前橋放送局ディレクター

    杉山裕美

    2020年入局。営業部門を経て、この夏からディレクター。県内に多く暮らす外国人の取材やツイッター発信など取り組む業務は多岐。

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