【特集】介護 負担を軽減する心構えや介護うつのセルフチェック、腰痛対策

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【特集】介護 負担を軽減する心構えや介護うつのセルフチェック、腰痛対策

介護には心理的、身体的負担が重くのしかかるケースが少なくありません。介護が原因でうつ病を発症することもあります。負担を軽減するための介護の心構えや介護うつに早めに気づくためのセルフチェックについて紹介。介護する際の腰痛対策についてもあわせて解説します。

介護うつ

高齢化や核家族化が進む中、介護に悩みをもつ人が増えています。メンタルの調子を崩し、いわゆる「介護うつ」という言葉も生まれています。

介護で「うつ病」を発症する要因

介護をしている人で、精神的・肉体的なストレスが重なり睡眠が十分にとれない状況が続き、さらに「自分がなんとかしなければ」という責任感が強い人は、「うつ病」に注意が必要です。
介護で「うつ病」を発症する具体的な原因として、下記の3つがあります。

  • サポートで寝られない
    たとえ介護度が低くても、常に気を張っていることで夜も眠れなくなります。睡眠がとれないと体の負担が大きくなるだけでなく精神的にも悪影響を与え、怒りやすくなったり集中力も低下します。
  • 家族に協力してもらえない
    家族や親族などからの協力が得られないとなると「なんで私ばかり」と不満がたまったり、「自分がなんとかしなければ」という責任感に追い詰められるようになります。
  • 変わっていく親の姿がつらい
    変わっていく親の姿を受け入れられないという人が多くいます。
    それまでできていたことが急にできなくなったり、人格がすっかり変わったように感じたりします。そんな状況にいらだち、強く当たってしまったりしてしまうということもあります。

介護うつのセルフチェック

うつ病には気分が憂うつ、興味関心が薄れるという症状が有名ですが、それ以外に3つのチェック項目があります。

うつ病 3つのチェック項目

  • 眠れているか?
    時間があるときにぐっすり眠れていれば、問題はありませんが、寝ようとしても寝られない状態が続くとうつ病の可能性は高くなります。
  • 食べられているか?
    一段落してしっかり食べられている時は大丈夫ですが、食が細まったり、逆に過食になったりしてきたら注意が必要です。
  • 死にたいと思うか?
    認知症の介護は責任を感じることが多く、うまくいかないことが重なると自分を責めてしまいがちになります。さらに、あまり関わりを持たない人から「親なんだから大事にしてあげて」「なるべく家で過ごさせてあげて」などと言われると逃げ場がなく、追い詰められます。

「いつまで続くのか」、場合によっては「死んだほうがましだ」と思うことはありますが、「死ぬしかない」「自分が死んだほうがうまくいく」と深刻に考え始めたら、それは“うつ病”が進行しているサインかもしれません。



介護の心構え

介護の心理的負担を軽減するための心構えの鉄則を紹介します。

介護の心構え 4つの鉄則

  • 睡眠時間の確保
    短期入所のショートステイをの利用し、睡眠時間を確保することが重要です。
    特に夜の眠りの確保が難しい介護者には積極的に利用すべき方法だといえます。施設入所に抵抗のある本人や家族もショートステイだと受け入れやすい面もあります。
  • “推し”でストレス解消
    好きなものを食べる、好きな音楽を聴くなど介護する人が好きなものならなんでもOKです。短い時間でも好きなことに夢中になることで、つらい気持ちが和らぎます。
    ショートステイなどを活用して、思いっきりストレスを発散させ、よい介護につなげましょう。
  • 親スイッチを切り替える
    親や配偶者など強くて頼れる存在だった人の能力が落ちていき、人柄も変わっていくのを見るのはつらいもの。そこで第三者として接するように心がけるようにします。
    自分はプロの「介護者」なのだと位置付け、接することで心が軽くなる場合が多くなります。
  • 抱え込まない
    「自分がやらなければ」と抱え込まず介護サービスを使うことが大切です。
    介護士などとのつながりもでき、新たな介護の方法も見えてくる場合があります。また地域の高齢者相談センターなどの窓口に相談するのも一つの方法です。

「介護うつと予防」について詳しくはこちら



認知症ケア「ユマニチュード」とは

介護の中でも特に負担が大きい認知症。認知症というと「物忘れ」というイメージがありますが、「ものを盗まれたと妄想してしまう」「迷子になって家に帰れなくなる」など、さまざまな症状が出てきて心身共に疲弊してしまいます。また介護する側は相手を思い介護していますが、相手も認知機能が落ちているため、うまく伝わらないことも多いのです。そんな状況を少しでも改善するために生まれたのが、フランス語で「人間らしさを取り戻す」という意味の“ユマニチュード”です。

ユマニチュードの4つの柱

認知症ケアで大切なことは、「相手を大切に思っている」というメッセージを相手が理解できるように届けること。そのためにユマニチュードでは「見る」「話す」「触れる」「立つ」の4つの柱を行うことで、介護する人の優しさを受け取ってもらえるようになります。

ユマニチュード 4つの柱

  • 見る
    ポイントは、目線の高さを合わせることです。
    目線の高さを合わせることで、対等な存在であることを伝えます。
    認知症の人の視野は、私たちが想像しているよりも狭いので注意が必要です。寝ている人には体を起こしてあげるなど、同じく目線を合わせてあげることが大切です。立って話しかけると見下ろすようになるため、決してやってはいけません。
  • 話す
    話すときは目を合わせたまま、ゆっくり話しかけます。
    そして相手の好きなことや興味を引きそうなことを前向きな言葉で話し、話題がない時は介護する人が行っている行為「手を洗いますね」「立ちましょうね」などを口に出したくさん話しかけましょう。話す際に注意することは、一方的に話さないこと!相手が理解できずパニックになってしまう恐れがあります。
    話しかけてすぐに返答がなくても3秒待ってみることがポイントです!
  • 触れる
    相手に触れる時は、「下から支える」「広い面積で触れる」「つかまない」「ゆっくりと手を動かす」ということに注意します。触れる場所も重要な要素です。できるだけ背中、肩、ふくらはぎといった鈍感な部分から触れ始め、次第に手や顔など敏感な場所に進むようにしましょう。
  • 立つ
    認知症ケアで負担が大きくなる原因の一つが寝たきりの状態になることです。
    連続ではなくてよいので、1日合計20分間立つことで寝たきり予防につながります。立つことで本人の自信にもつながり、その人らしい生活を続けていく原動力にもなります。立つことが難しい場合は、体を起こすだけでもよい刺激になります。

「認知症ケア“ユマニチュード”」について詳しくはこちら



腰痛対策

介護に関わる人の中で“職業病”といわれるほど多いのが「腰痛」です。
腰痛があると介護する側がつらいのはもちろんのこと、される側も適切な介護が受けられなくなるため腰痛対策がかかせません。

介護の現場ではなぜ腰痛をおこしやすい?

介護の現場で腰痛の原因となるのは、①前かがみの動作と、②持ち上げる動作の2つの動作です。

前かがみの姿勢になったときの負荷

まっすぐな姿勢で立っているときには、上半身の重みを下半身全体で支えているので腰への負担は軽減されています。ところが前かがみの姿勢になると、上半身の重みを腰だけで支えなければならず、腰への負担が大きくなって腰痛をおこしやすくなります。

また、重いものを持ち上げると、背中の筋肉が過剰に収縮して、腰椎の骨と骨の間のクッションの役割をする椎間板をつぶすような力が加わり、腰痛のきっかけになります。

「介護の現場ではなぜ腰痛をおこしやすい?」詳しくはこちら

介護のプロが実践する“ボディメカニクス”

介護の現場ではボディメカニクスという技術を身につけて、腰痛対策をしています。
ボディメカニクスは「相手との重心を近づける」「大きな筋肉を一緒に使う」など、8つの原則からなる介護技術で多くの介護現場で活用されています。

その原則をいかした代表的な姿勢が“ハリ胸&ぷりケツ”となります。

ハリ胸&ぷりケツの姿勢

【“ハリ胸&ぷりケツ”のポイント】

  1. 両足を開く
  2. 重心を低く保つ
  3. 体の中心と対象を近づける
  4. 体幹を使って持ち上げる

相手を移動させるときや前かがみで作業するときにはこの姿勢を意識してください。

「“ハリ胸&ぷりケツ”を応用して車いすからベッドへ移動させる」方法はこちら



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