介護職にとって腰痛は「職業病」
2000年に介護保険制度が始まってから要支援・要介護と認定された人の数は年々増加を続け、2021年には684万人と、20年でおよそ3倍にもなりました。
介護に関わる人の中で“職業病”といわれるほど多いのが「腰痛」です。
介護の現場では人を持ち上げたり、前かがみで作業したりと腰に大きな負担がかかります。腰痛があると介護する側がつらいのはもちろんのこと、される側も適切な介護が受けられなくなるため腰痛対策がかかせません。

介護のプロが実践する“ボディメカニクス”
ボディメカニクスは「相手との重心を近づける」「大きな筋肉を一緒に使う」など、8つの原則からなる介護技術で多くの介護現場で活用されています。
その原則をいかした代表的な姿勢が“ハリ胸&ぷりケツ”となります。
相手を移動させるときや前かがみで作業するときにはこの姿勢を意識してください。

【“ハリ胸&ぷりケツ”】
- ポイント①両足を開く
- ポイント②重心を低く保つ
- ポイント③体の中心と対象を近づける
- ポイント④体幹を使って持ち上げる

“ハリ胸&ぷりケツ”を応用し車いすからベッドへ移動させる
介護現場において車いすからベッド、またはその逆の移動が腰に負担がかかり、無理に行うと「ぎっくり腰」を引き起こす確率が高くなります。そこで“ハリ胸&ぷりケツ”を用いた移動方法を紹介します。
まず移動させる前に確認!
- 周囲にものがないか確認
- 車いすとベッドの位置はおよそ30度の角度に

- ブレーキがかかっているか確認
- フットレストを開く(上げる)
- ベッド側のアームレストを外す
- ベッド側の足を少し前に出して内股にする(※少し浅めに座らせるといい)

以上の準備ができたら移動させます。
移動させるときのポイントが3つ!
ポイント1
対象者のベッド側の足を両足で挟み、ひざ折れ防止をする。

ポイント2
対象者の両脇から手を入れ肩甲骨の下側に添える。
そして、対象者のベッド側の肩と自分に肩を接触させ、肩と両手を三角形とした“三点固定”。

ポイント3
三点支持を保ち“ぷりケツ”姿勢で対象者の体を引きよせお尻を浮かせる。
そして回旋させベッドに移動。対象者はスキージャンプ選手のような体勢。

この移動方法はお風呂やトイレ、車の座席に移動させるときに活用できます。
ぜひお試しください。
腰痛予防や再発防止に有効な“これだけ腰痛体操”
“これだけ腰痛体操”は背筋の筋肉がほぐされることで滞った血流が改善し、疲労が回復しやすくなる効果があります。また一度腰痛を経験した人は、脳が痛みの記憶を覚えていて、その恐怖がストレスとなり、痛みを増すという悪循環に陥っていることもあります。“これだけ体操”を繰り返し行うことで「痛くない」と脳に覚え込ませる効果もあります。