日本の高血圧の推定患者数はおよそ4300万人。実に国民の3人に1人は高血圧とされ、服薬や生活習慣の指導の対象になっています。病院や健康診断などで「塩分はなるべく控えるように!」と言われたことがある人も多いのではないでしょうか?でも、本当に減塩をすれば血圧は下がるのでしょうか?逆に塩の減らしすぎはリスクにならないのでしょうか?そんな疑問を解決するために、私たちが訪ねたのはイギリス。ある驚くべき方法で国民全体の食塩摂取量を減らすことに成功し、大きな成果を上げているというのです。

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日本の高血圧の推定患者数はおよそ4300万人。実に国民の3人に1人は高血圧とされ、服薬や生活習慣の指導の対象になっています。病院や健康診断などで「塩分はなるべく控えるように!」と言われたことがある人も多いのではないでしょうか?でも、本当に減塩をすれば血圧は下がるのでしょうか?逆に塩の減らしすぎはリスクにならないのでしょうか?そんな疑問を解決するために、私たちが訪ねたのはイギリス。ある驚くべき方法で国民全体の食塩摂取量を減らすことに成功し、大きな成果を上げているというのです。
2014年、世界的な医学雑誌「BMJ Open」で関係者に衝撃を与える研究が発表されました。イギリスでは2003年頃から、産官学一体となった強力な減塩キャンペーンが行われ、その結果、2011年までの8年間でイギリス国民全体の食塩摂取量は1日あたり9.5gから8.1gに減少しました。つまり1.4gの減塩を8年かけて達成した計算です。小さじ1杯の塩がおよそ6gなので、1.4gというと小さじ1/4程度にすぎませんが、そんなわずかな減塩がもたらした健康効果は研究者も驚くほどのものでした。
最高血圧は2.7mmHg減少、最低血圧は1.1mmHg減少。これもわずかな変化に思えますが、そんな事はありません。高血圧を引き金とする病気に「脳卒中」と「虚血性心疾患(※心筋梗塞や狭心症などの総称)」がありますが、その死亡率を調べたところ、なんと40%以上も減少していたのです。1日あたり1.4gほどの減塩であっても、高血圧を改善するだけでなく、命に関わる病気を防ぐことができる事が、このイギリスの取り組みによって明らかになったのです。
日本人の1日の食塩摂取量は平均9.9g。減塩の取り組みを始める以前のイギリスと同じレベルの食塩を摂取する状況が続いています。日本でも同じようにこっそり減塩してくれればいいのに・・・と思わずにはいられません。
残念ながらイギリスのように大規模なキャンペーンには至っていませんが、ようやく最近になって、商品を減塩のものに切り替えていこうという動きも出始めています。今秋、大手の食品メーカーが、減塩を前面に出したカップめんを発売、1食あたり1.4g食塩を減らしました。さらに、コンビニチェーンでは、軒並み、お弁当やお総菜で"こっそり減塩"を始めています。今のところ売り上げには影響していないようなので、消費者である私たちは、減塩されたことに気がついていないのかもしれません。
2020年4月から、日本でも1日あたりの食塩摂取量の目標値が0.5g引き下げられて男性は7.5g、女性は6.5gになります。
イギリスの取り組みを見ると、減塩は、決してハードルが高いことではないようです。日々の買い物で、食品表示を見るだけでも、意識が変わり、減塩につながるといいます。
まずは1日1.4gでも減らしてみようという意識で、毎日の食生活を見直してみてはいかがでしょうか?