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ヒグマとすみ分けどう進める? 札幌市の場合

となりのヒグマとどう暮らす?
  • 2024年4月30日

札幌市郊外の森に設置した、追跡取材のための自動撮影カメラに今季最初のヒグマが写りました。ヒグマの活動期です。人とヒグマのあつれきを減らすため、すみわけをどう進めるのか、今シーズンのここまでの動きを札幌市で取材しました。

4月30日のほっとニュース北海道で放送しました。NHKプラスはこちらから(配信5月7日まで)

ヒグマはいつから活動している?

NHKでは、札幌市郊外の森の様子を追跡取材するため自動撮影装置「ヒグマカメラ」を2022年から設置しています。ことしは2月5日、1メートル以上の雪がまだ残る時期から運用を始めました。冬眠から目覚める時期はいつなのか、調べるためです。

札幌の森を定点で撮影するヒグマカメラ

この森では、2023年には3月30日から31日にかけて、雪の上にヒグマの足跡だけが見つかりました。ヒグマそのものが記録されたのは4月26日でした。2024年は…。
カメラがヒグマの気配をとらえたのは、4月24日の午前1時ごろ。現地から電波で送られてくる映像のアングルが上向きにかわりました。
現地を確認すると、やはり、カメラは下から強い力でしゃくり上げられた様子です。

過去、カメラに興味を示すヒグマが多かったことから、今季は、ヒグマカメラをとるカメラも置いてあります。その映像はこちら。白黒のため、鮮明ではありませんが、右肩に白い斑紋がある個体がやってきていました。これが、今シーズン映像でとらえた最初のクマになりました。

ヒグマカメラを写していた「ヒグマカメラ」の映像

札幌の森にもヒグマの活動期がやってきました。

すみ分けのためにどうする?

札幌市がヒグマ対策を進める場合、とても難しい事情をかかえています。それは、市街地と森が隣り合わせの地域が多いという点です。森は、奥山のヒグマ本来の生息エリアまでつながっています。

そうした森の、市街地に近い場所にヒグマが定着してしまうと、そのヒグマだけでなく、その子どもたちも市街地に出やすくなって、あつれきの元になってしまいます。

こうしたヒグマたちに、人側がプレッシャーをかけて、市街地への出没を抑えようという対策が「春期管理捕獲」です。札幌市の場合は、3月から4月の終わりにかけて行われました。

春期捕獲の対象地域に向かう札幌市のヒグマ防除隊のメンバー

対象地域は、去年までは、郊外の国有林の一部が対象になっていました。ことしは、そのエリアを拡大し、市街地に隣接した森にも対象を広げました。

この春期管理捕獲は、どちらかというと、ヒグマに人間に追われる経験をさせて、人への警戒を持たせること、周辺を居心地の悪い場所だと認識させることが狙いです。

新たに設定した地域のうちの西野地区の2か所は、2023年にヒグマの出没が相次いだ住宅街に隣接する森です。活動が出没状況にどんな影響をもたらすのか効果に期待です。

札幌市環境共生担当課 坂田一人 課長
「今回、たまたま西野の住宅街のすぐ裏が市民の森で札幌市で管理している場所だったのでこのような事業ができましたけど、そうでない場所、民有林もたくさんあるので、そういったところへのアプローチはなかなか難しい」

開発が進み、権利関係が複雑になっている、都市近郊林ならではの事情もあります。

地域からヒグマ対策を考える

一方で、地域からヒグマ対策を考えようという新たな動きが春先にありました。南区の南沢地区、東海大学とその周辺です。東海大学は2月25日、地域の人たちに呼びかけて地域フォーラム「となりのヒグマとどう向き合う」を開催しました。

東海大学は、2019年、学内の森にセンサーカメラをつけて、生息する動物について調べたところ、ヒグマが利用していることが確認されました。

撮影:東海大学 河合研究室

去年、9月には周辺で出没を繰り返したヒグマ1頭が駆除されて、今後、ヒグマ対策をどう進めていけばいいのか、地域の人たちと一緒に考えようというのが、フォーラムの狙いでした。

東海大学生物学科 河合久仁子 教授
「急遽、地域の人たちに呼びかけたのにもかかわらず、たくさんの方に来ていただいて、質問もたくさんあってよかったです。地域の人、教職員、学生、みんなでクマのことを知って一緒に学んで行けたらと思います」

札幌市内では、川沿いや公園で、住民が草を刈ってヒグマが利用しにくいようにする活動が広がっていて、効果もあがっています。

学生の中からも、このあと、地域の人たちとヒグマ対策を進められないかと声もあがっています。東海大を含む南沢地区で活動がどう広がっていくのかにも注目です。

  • 向井徹

    札幌・デジタル戦略G

    向井徹

    ヒグマとサケを主なテーマに森や川のお話をお届けしています。 月末の土曜日午前7:55- の5分番組「755DDチャンネル」担当。 ひるナマ!サケお兄さん コーナーも担当中です

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