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ヒグマカメラ2023 札幌の森のヒグマはいま 0755DDチャンネル

  • 2023年11月6日

札幌市郊外の森にすむヒグマたち。NHKは自動撮影カメラでその暮らしぶりの長期取材を続けています。一方で気掛かりなのは市街地への出没です。2023年春から夏にかけての、札幌の森のヒグマたちについてお伝えします。
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初回放送:2023年7月29日

雪山の雪を掘ってカメラを設置

NHK北海道のデジタルチームは、2022年初夏から、札幌市郊外の森にすむヒグマの長期取材を続けています。2年目のことしは、冬眠あけ直後の様子も探るため、3月8日、雪山に入りました。
自動撮影カメラを設置するのは、定点でのデータを集めるため、2022年と同じ場所です。積雪は1メートル以上、春の雪解けが一気に進むことを考えて、地面まで掘り進み、地面にバッテリーを設置、カメラを木に固定しました。

最初のヒグマは3月30日から31日にかけて

最初にヒグマを確認したのは3月31日未明の映像でした。正確には30日午後9時から31日午前3時の間。この2枚の画像を見比べて、雪に新たな足跡がついていることがわかりました。

日中に確認したところ、雪の上にヒグマのツメあとがくっきり残っていました。足跡は一頭分、斜面の上の方からカメラの横を通過して、谷の方に続いていました。

去年と同じヒグマたちがやってきた

カメラで撮影している風景からすべての雪が見えなくなったのは4月12日。このころからエゾタヌキやエゾリスの活動が活発になってきました。
ヒグマが姿を見せたのは4月26日夕方。肩の白いL字白斑がはっきり確認できました。この白斑は、去年の取材で8月に一回だけ確認していた個体と同じものとわかり、同一の個体と確認しました。

その二日後には、3頭の子グマを連れた母グマが現れました。この観察ポイントでは去年、親子連れを繰り返し観察しています。子グマの一頭の白斑が一致して、こちらも2年連続の観察となりました。

春から夏へ 体は小さくなっていく

このあとヒグマがやってきたのは、2ヶ月後、6月26日です。現れたのは、4月26日に観察したL字白斑の個体です。
冬毛から夏毛にはえかわる真っ最中で、特に背中の上が、心配になるほど、けばだっていました。ヒグマならではの行動、「背こすり」を観察できました。

この背こすりは、立木に背中をこする行動です。匂いをこすりつけて、通りがったかヒグマ同士のコミュニケーションに役立てていると考えられています。L字白斑の個体は、7月17日にもせこすりに現れました。

L字白斑の個体は、7月19日にも現れました。この時は、倒木を動かしてアリを探す様子を観察できました。それまで食べていた草はかたくなり、夏の森は、ヒグマにとっては食べ物が少ない季節。倒木にかくれた地面や木の皮の下のアリは、この時期の大事な食料です。夏は1年を通じて、ヒグマがもっとも痩せている季節でもあります。

2023年前半の観察結果

3月8日から7月28日までの、ヒグマ出現数は7回であった。このうち、4回は、首周りにL字白斑を持つ個体の出現で、2日から2か月ごとにヒグマカメラの前を通りがかった。単独の若い個体(右肩に白い三日月白斑)は6月28日に現れたが、これ1回のみの出現にとどまった。

※4月28日の親子は、メス1子3。

森と市街地 ヒグマにとってどう見えているのか

札幌市ではことし6月、市街地周辺でのヒグマの出没が相次ぎました。特に、南区の真駒内公園での出没は、今後のヒグマ対策を考える上で、重要な案件となりました。

ヒグマが藻岩山から真駒内公園を経て南東へ移動していくルートは、以前から警戒の対象になってきました。2022年に江別市で開かれた「野生動物と社会」学会のエクスカーションでもこの藻岩山が視察先に選ばれています。
ヒグマ対策を担うEnVision環境保全事務所の早稲田宏一さんは、案内役を務めたこのエクスカーションで次のように解説しました。

EnVision環境保全事務所の早稲田宏一さん
「真駒内公園につらなるように手前から山の尾根があります。ヒト慣れしたクマが出てしまうと、こういうところを使って出てきてしまう」

藻岩山の山頂から見ると、真駒内公園の緑地は藻岩山の尾根の先端のそのすぐ先。札幌市ならではの課題、市街地と森が隣接する最前線の一つになっているのです。

真駒内公園でのヒグマ出没を受けて開かれた札幌市のヒグマ対策委員会のあと、委員会のメンバーで酪農学園大学の佐藤喜和教授は次のように指摘しました。

佐藤 喜和教授 酪農学園大学 環境共生学類 
「クマにとって、真駒内公園はヒトの生活圏という意識はなくて、むしろクマの生活している森と同じ、緑地の連続する場所と認識していると思う。都市計画、河川管理、森林管理の部門と連携しながら、ヒグマの侵入しにくい市街地作りを具体的に考える必要がある」

酪農学園大学 佐藤喜和教授(右)

一方、市街地周辺に生息するヒグマの現状について、佐藤教授は—。

「(市街地に隣接する)都市近郊林ゾーンに、あまりにも多くのクマが存在していてヒトとの無害な接触を繰り返し、ヒトに慣れる状況がある。そうしたクマは何かのきっかけでヒトの生活圏に入ってきてしまう」

ヒト慣れするヒグマに対する、なんらかの対策が必要になっています。

ヒトの側ができること

7月18日、藻岩山のふもと、北ノ沢地区にある住宅の裏山に、通称クマボラ(クマ侵入防止のための環境ボランティア)のメンバー15人が集まりました。
環境市民団体エコ・ネットワークとNPOのEnVision環境保全事務所が呼びかけて活動しているグループで、不要になった果樹の伐採やヤブの草刈りなどのヒグマ対策を2020年から続けています。

この住宅では、畑のまわりに植えていたサクランボを目当てに、ことしからヒグマの親子が出没するようになりました。このため、自家用に植えたままになっていた、サクランボやプラムなどの伐採を、クマボラに依頼しました。

ヒグマが折ったサクランボの枝

クマボラ呼びかけ人 小川巌さん (エコ・ネットワーク)
「クマを引き寄せるために果樹を植えているわけではないんですけど、放っておくと、クマにとってはまたとないエサ場になります。ですから不要な果樹はどんどん取り除いていかないといけない」

こうした、不要になった果樹は、高齢化がすすむなか、個人が伐採したり処分したりするのは簡単ではないのが現状です。

小川巌さん
「いま、クマの方にばかり関心が行きますけど、人間の方が注意しなければならないことがあると思うんです。それを市民の力でもっと広げていきたいんです」

この記事を書いたヒト

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随時更新中です。札幌の森に設置した自動撮影カメラの画像とヒグマ関連情報をまとめています。

ヒグマ情報 #ヒグマ
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