本文へジャンプ

日本勢以外の熱戦にも注目!~世界の強豪の理由に迫る~(後編)

2014年02月17日(月)

宮崎恵理さんコラム
日本勢以外の熱戦にも注目!(前編)より

■激闘! アイススレッジホッケーでロシアが牙城を崩すか

4年前、ホームのカナダを準決勝で倒して銀メダルを獲得した
アイススレッジホッケーの日本チームは、
今回、ソチへの出場がかなわなかった。
2013年10月、イタリアで行われた最終予選で、
日本は6チーム中5位という結果に終わり、出場権を逃したのだった。

 

そのアイススレッジホッケーでは、なんといっても、
ホームのロシアの急成長ぶりが見どころになる。
4年前のバンクーバー大会には出場すら果たせなかったが、
2012年の世界選手権Bプール(2部相当)で優勝し、
翌2013年の世界選手権Aプールで銅メダルを獲得。
ソチ本番で、金メダルを賭けた戦いに挑む。
ロシアはクロスカントリースキーやバイアスロンでは、
どの障害カテゴリーでもトップ3にロシアの選手が入るほど、
充実した選手層を誇る。
ロシアでは、パラリンピックメダリストは、オリンピックのメダリスト同様、
多額の報奨金や生涯の生活を補償される制度があるという。
アイススレッジホッケーが短期間で急成長してきたベースには、
国の威信をかけて、という方針とともに、
こうした選手への手厚い制度があるからだろう。


アイススレッジホッケーの世界の2強はアメリカとカナダだ。
13年の世界選手権でカナダが金、アメリカが銀。
カナダは4年前のホームでの惨敗の雪辱を晴らすべくのし上がって来た。
アメリカはバンクーバー大会の金メダリストだ。
ロシア、カナダ、アメリカ、いずれのチームも
20代の若手選手の活躍が目立つ。

アメリカチームの平均年齢は21歳、
カナダチームは23歳前後と、非常に若い。
パラリンピック経験を積んだベテランもいるが、
10代の頃から育成してきた選手が、中心となってチームを形成し
スピードや体力で、他を圧倒している。

オリンピックの競技のように、
ジュニア育成が難しいと言われるパラリンピックで、
なぜこれほどまでに若手選手が育てられるのか。



ロシア、アメリカ、カナダでは、
国のアイスホッケー連盟傘下にアイススレッジホッケーが含まれ、
常に世界トップレベルの戦略、戦術情報を共有できるという環境がある。
さらに、アメリカには、全米各地にアイススレッジホッケーチームが存在し、
シーズン中に30〜40試合ものリーグ戦が行われている。
リーグを勝ち抜いた各エリアのトップ8チームがプレーオフに進出し、
全米選手権が行われる。
シニアチームだけでなく、ジュニアチームだけのリーグも存在するという

一方、日本では、アイススレッジホッケーのチームは全国に4つ。
しかし、北海道と青森は1チームの人数が少なく連合チームとなっているため、
実質は3チームで試合を行っている。
クラブ選手権は年に2回(2013年は1回)のみだ。
その他、日本代表のためのトライアウトや代表合宿、
海外遠征などは年間を通して行われているが、
自国で切磋琢磨できる環境は、北米などに比べれば
雲泥の差であることがわかる。

アイススレッジホッケーというスポーツの認知度の違い、
カルチャーの違いと言ってしまえばそれまでだが、
若手育成は遅々として進んでいないのが現状だ。
日本チームの持ち味だったスピードは、もはや世界のスタンダードとなり、
守備から攻撃に転じるトランジションの速さ、
徹底した攻撃システムを、世界の若手選手がどんどん吸収している。
4年後に日本チームがパラリンピックにカムバックするためには、
ベテランの経験を継承できる若手選手の育成が急務
といえそうだ。

昨年10月、最終予選で優勝した韓国も、国内リーグのチームは実業団化し、
ほぼ毎日リンクで練習できる環境が整っているという。
4年後のピョンチャン大会に向けて、ソチでどんな戦いぶりをみせるのか。
こちらも興味深い。



■氷上のチェス、車いすカーリング

そして、もう一つ、
日本チームが出場を逃した競技に、車いすカーリングがある。
トリノ大会から正式種目となった車いすカーリングは男女混合チームで戦う。
ストーンを手またはスティック状のキューと呼ばれる
補助具を使用してリリースするが、スウィープは行わない。
つまり、純粋にストーンを投げるテクニックだけで勝負が決まるのである。
トリノ、バンクーバーと2連覇しているカナダが、ソチでの3連覇に挑む。
それを追いかけるのは、トリノ、バンクーバーで
銅メダルを獲得しているスウェーデン。
ロシアは今大会、初出場だ。

車いすカーリングの魅力は、ベテラン選手の活躍。
体力勝負の競技とは異なり、知力、熟練のテクニック、
強いメンタリティがモノを言う。
実際、カナダのリード(1番目の投球者)を務める女子選手は47歳。
スウェーデンの男子スキップ(キャプテン)は、59歳。
4年前の日本チームでは、当時75歳だった比田井隆選手が、
セカンドとして活躍した。
豪快なパワーショットでテイクアウトしたり、
狙ったところにぴたりとストーンを止めたり。
そのゲーム性の高さが、車いすカーリングの醍醐味だ。



今大会日本チームが出場できなかった競技種目も、見どころは盛りだくさん。
4年後のピョンチャン大会では日本チームの勇姿が見られることを期待しつつ、
今大会は世界の高い技術を純粋に堪能したい。

  

◆シリーズ ソチパラリンピック(アンコール)
本放送:夜8時00分~8時29分
再放送:午後1時5分~1時34分

(1)目指せ!“ぶっちぎりの速さ” ―アルペンスキー 狩野亮―
→本放送:2014年2月12日(水)再放送2月19日(水)

(2)攻めてつかめ!まだ見ぬ“金” ―アルペンスキー 鈴木猛史―
→本放送:2014年2月13日(木)再放送2月20日(木)

(3)究極の走りへ!最強ロシアに挑む ―ノルディックスキー 久保恒造―
→本放送:2014年2月17日(月)再放送2月24日(月)

(4)ただひたむきに 前へ ―ノルディックスキー 出来島桃子―
→本放送:2014年2月18日(火)再放送2月25日(火)

コメント

※コメントはありません