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日本勢以外の熱戦にも注目!~世界の強豪の理由に迫る~(前編)

2014年02月17日(月)

スポーツジャーナリスト宮崎恵理さんのコラムです。

ソチオリンピックで、今大会日本初の銀メダルと銅メダルを、
スノーボード男子ハーフパイプの平野歩夢選手、平岡卓選手が獲得した。
圧倒的王者だった、アメリカのショーン・ホワイトが4位。
このニュースに日本じゅうが驚きと喜びの声を上げたのではないだろうか。


■新種目スノーボードクロスの魅力

オリンピックに続いて行われるソチ・パラリピックで、
初めてスノーボード種目が行われる。
それが、スノーボードクロスだ。

パラリンピックのスノーボードクロスは、
旗門で規制された1000m前後のコースを滑走し、タイムを競い合う種目。
コース上にはキッカーと呼ばれるジャンプセクションや、
コースが大きな波のようにうねっているウェーブ、
よりスピードが出るバンクなど、さまざまなセクションがある。
次々と襲いかかるセクションをクリアしながら、
どれだけ速くゴールするか。それが、この競技の見どころだ。

 

ソチ・パラリンピックで行われるのは、
下肢に障害がある選手のカテゴリーのみ。
オリンピックでは、予選の後、6人1組で3人(もしくは4人1組で2人)勝ち上がる
トーナメント方式で競技が行われるが、
パラリンピックでは、1人が3回ずつ滑走し、
2回のベストタイムの合計で順位が決定するというルールとなっている。


注目したいのは、アメリカの男子、エヴァン・ストロング選手
サンフランシスコで生まれハワイ・マウイ島で育ち、
少年時代はウェイクボードやスケートボードを楽しんでいた。
17歳の時、バイク事故で左脚ヒザ下を切断。
事故前はスケートボードのプロとして活躍していたが、
事故後は一転、義足をつけてスノーボードに挑戦。
2011年にアメリカで人気のウインターXゲームズ
パラ・スノーボードクロスで金メダルを獲得すると、
11/12シーズンのW杯総合優勝を飾り、
13年にはIPCのスノーボードクロス・プレ大会で優勝。
ソチ・パラリンピックで、もっとも金メダルに近い選手なのである。

ストロング選手は、プロスケートボーダーだった実績から
現在でも使用する用具やウェアーなどはもちろん、
クルマメーカーや、アメリカにある様々なファンドなど
14ものスポンサーがつき、
「プロアスリート」として年間を通じて活動できる環境にある。
彼はいわゆるグーフィースタンス(右足を前にして滑るスタンス)
通常は左足で雪面を蹴るスタイルなので、
利き足の左足を切断しているストロング選手が
世界のトップに肩を並べるまでには並々ならぬ努力を要したはずだ。
それを支えてきたのは、
こうしたプロのアスリートとして活動できる環境だったのではないだろうか。


ストロング選手が義足で出場し優勝したXゲームズでは、
一般の大会期間中、同じコースを使用して
障害者カテゴリーのレースが行われている。
障害者カテゴリーとしては、
チェアスキーのスキークロスなども人気が高い。

Xゲームズは、アメリカのスポーツ専門チャンネルが主催する
エクストリームスポーツの大会
で、
毎年夏季、冬季に行われている。
Xゲームズのウルトラクロス(スノーボードクロスとスキークロスの選手が2人1組で戦う種目)
金メダル、スキークロスで銀メダルを獲得し、
バンクーバー五輪のスキークロスにも出場した元日本代表の瀧澤宏臣氏は、
Xゲームズの大会規模について、こう語る。

「例えば、2011年のXゲームズでは優勝者には3万ドル、
2位は1万5000ドルといった賞金が出ました。
予選を通過するだけでも250ドル。
スノーボード種目ではソチ五輪で銀メダルを獲得した平野歩夢、
銅メダルを獲得した平岡卓選手らも出場しています。
ヨーロッパからの出場者も年々増加していて、
世界トップクラスの大会になっています」。



北米では、夏季、冬季、競技を問わず、さまざまな賞金レースが開催される。
障害者のカテゴリーもあるが、
一般のレースに障害者が出場することも少なくない。
レースという実戦の舞台で研鑽しながら、
自分の活動費を稼ぐ選手の姿は、
北米では当たり前となっている。

そうして、Xゲームズのような世界屈指の大会で実績を残すことで、
多くのスポンサーがつく。
実力があればプロとして活動できるスポーツ環境があるからこそ、
ストロング選手のようなビッグスターが育ち、
初のパラリンピックにも臨めるのである。


後編へつづく。

 

 

 

◆シリーズ ソチパラリンピック(アンコール)
本放送:夜8時00分~8時29分
再放送:午後1時5分~1時34分

(1)目指せ!“ぶっちぎりの速さ” ―アルペンスキー 狩野亮―
→本放送:2014年2月12日(水)再放送2月19日(水)

(2)攻めてつかめ!まだ見ぬ“金” ―アルペンスキー 鈴木猛史―
→本放送:2014年2月13日(木)再放送2月20日(木)

(3)究極の走りへ!最強ロシアに挑む ―ノルディックスキー 久保恒造―
→本放送:2014年2月17日(月)再放送2月24日(月)

(4)ただひたむきに 前へ ―ノルディックスキー 出来島桃子―

→本放送:2014年2月18日(火)再放送2月25日(火)

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