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2023年7月5日(水)

あの事件から1年 いま旧統一教会は?政治との関わりは?

あの事件から1年 いま旧統一教会は?政治との関わりは?

日本を震撼させた安倍元首相銃撃事件からまもなく1年。旧統一教会をめぐる数々の問題は、今、どうなっているのか。改革を進めているとする教団。事件後、初めて教団内部や幹部らを独自取材。信者たちは?問題となった高額献金は?韓国で開かれた集会で、教団総裁が信者たちにが語ったこととは―。そして「教団との関係を断絶する」とした自民党など政治は、その後、教団との関わりを絶ったのか?徹底検証しました。

出演者

  • 櫻井 義秀さん (北海道大学教授)
  • 桑子真帆 (キャスター)

※放送から1週間はNHKプラスで「見逃し配信」がご覧になれます。

安倍元首相銃撃から1年 旧統一教会は?政治は?

桑子 真帆キャスター:
1年前の7月8日。元総理を銃撃するという凶行に及んだ山上徹也被告。旧統一教会に恨みを募らせた末に事件を起こしたと供述したことから、教団を巡る多くの問題に関心が集まりました。

特に問題視されたのが、信者や家族の生活が成り立たなくなるほどの「高額献金」。そして、教団の活動にお墨付きを与えてきたと指摘された「政治との関係」でした。

番組では、事件の3日後に最初の放送を出して以来、旧統一教会を巡る数々の問題について放送してきました。今回は、教団の現在地を改めて問い直します。

まずは「高額献金」について。教団の改革は進んだのか検証します。

銃撃事件から1年 旧統一教会はいま

川崎市にある旧統一教会の教団施設。今週、事件後に初めて取材班がその内部に入りました。

この日、信者たちは月々の献金を納めていました。

教団は事件後、改革のガイドラインを策定。信者の生活を困難にする過度な献金にならないよう指導・徹底するなどとしました。月収の3割、おおよそ10万円を基準に、それを超える献金を受け取る際には受領証を発行。さらに借り入れによる献金ではないか、家族の同意を得ているかなどを書面で確認しているとしています。

改革の指揮を執る、教団幹部の勅使河原秀行氏です。

世界平和統一家庭連合 (旧統一教会)教会改革推進本部 勅使河原秀行 本部長
「家族の生活に支障をきたすような献金ではないと。97%の方々がそういう実感があるとおっしゃっています。(献金に基づく)予算額も一昨年に比べれば半額以下に金額を落として運用している状況です」

改革の成果を強調する日本の教団。その日本側が長年献金を送ってきたのが、韓国の教団本部です。

6月、ハン・ハクチャ総裁は教団幹部たちを集め、日本に求める役割について言及しました。

ハン・ハクチャ総裁
「日本という国が恵みを受けて経済大国になれたのは、天が祝福したから。天からの祝福を受けた者は、必ず恵みを施さなければならない」

さらに先週、日本の幹部や現場責任者を韓国の教団本部に集めた際は。

ハン・ハクチャ総裁
「日本の政治家たちは統一教会をどうするつもりなのか?家庭連合を追い詰めているじゃないか。日本の政治はどうなると思う?滅びるしかないだろう。政治家たちと岸田に教育を受けに来いと伝えろ。わかった?」

このとき現場にいたという勅使河原氏。総裁の言葉をどう受け止めたのか。

勅使河原秀行 本部長
「宗教の教祖は大なり小なりそういうところがあると思うのですが、わりとオーバーな表現をされているんだと思うんですけれども。やはりいまの日本の政界から誤解されているということをこのままの状態で放っておくのではなくて、もっとしっかり頑張れと。そして正しいことをきちんと訴えかけなさいという意味だと私は理解しています。多少の言葉じりの問題はあったとしても」

また、“日本は施すべき”という発言については。

献金は過度なものであってはならないという方針と逆をいく発言では?

勅使河原秀行 本部長
「そこだけとっていることと、ハン・ハクチャ総裁は献金と結びつけては全くないわけで。その一部だけが教えのすべてであるかのようにするのはミスリードです。(私たちが)過剰に献金を負担しないといけない責任があるという意味では全くない」

そのうえで信者や家族を苦しめるような“過度な献金は存在しない”と改めて主張しました。

勅使河原秀行 本部長
「確認書で確認しない10万円以上の献金は存在しない。100%(確認の)対象になります」

高額な献金はすべて把握しているとした教団。しかし、その主張が揺らぐ実態も見えてきました。

6月末、韓国の教団本部に入る大型バス。日本各地から信者1,000人あまりがやってきていました。

韓国の教団本部に長年在籍してきた現役の関係者は、献金に関する慣例についてこう指摘しました。

現役の教団関係者
「(韓国に来る場合)何十年も前から必ず現金で直接持ってこさせます。それが慣例でした。ハン・ハクチャ総裁も焦っています。信者らと面会するたびに『お金がない、お金がない』と言い続けていますから」

韓国に直接持ち込まれる献金について、教団は。

勅使河原秀行 本部長
「現金を韓国に持っていってそこで献金される場合は、日本ではコントロールが一切できないので、どういう状況になっているかはわからないということになります」

信者の家庭生活に大きな支障を与えないか徹底するとしたときに、お金が確認できないということはそこを不安定にさせる要因にならないか?

勅使河原秀行 本部長
「言われてみるとそうですね。そこをどう管理するのか新しく決めていかないといけないですね」

一方、国内でも信者の献金を巡って新たな問題が。

2023年1月、国の窓口に相談を持ちかけた年金暮らしの女性です。知人の信者に勧誘され、信仰を始めました。1人暮らしで金銭管理に不安を覚えていた女性。信者を信用し、通帳とキャッシュカードを渡していたといいます。親族などと一緒に出金の記録を調べると、毎月の年金収入を超える額の現金がたびたび引き出されていました。

教団が改革を宣言したあとの12月には、1度で26万円の出金がありました。女性は信者から生活費として週1万円を渡されていましたが、献金の受領証や確認書は受け取っていません。私たちの取材には、残りのお金が何に使われたのか十分な説明はなかったと話しました。

国の窓口に相談した女性
「だいぶおかしかったですね。やっぱり説明も欲しいわね」

ちゃんと説明があって寄付するようなことはあったんですか?

国の窓口に相談した女性
「ありません」
女性の娘
「年金生活の年寄じゃないですか。説明もなくお金を下ろしてきて、話を聞いておかしなことがたくさん」

教団側は取材に対し「去年(2022年)7月から12月までの100万円あまりの出金は教団への献金だった。女性は本人の意思で信者に相談のうえ預金を下ろしてもらってきたと証言している」と回答しました。

また、献金の受領証がないことについては「受け渡しが始まったのはことし(2023年)1月からなので渡されていないのは当然」としました。

改革を指揮する勅使河原氏は。

信者が資産を管理するケースが確認されているが、どう思うか?

勅使河原秀行 本部長
「もしそういう状況があるなら、それは即刻解消するように指導します」

それはやはり問題のある行為だと認識しているから?

勅使河原秀行 本部長
「問題があると思います」

高額献金問題 教団の対応に変化は?

<スタジオトーク>

桑子 真帆キャスター:
きょうのゲストは、宗教社会学が専門で、長年元信者への聞き取りを行ってきた櫻井義秀さんとリモートでつながっています。

まず一緒に見ていきたいのが、旧統一教会を巡る問題のうち「高額献金」について教団の変化はあったのかということで、教団は事件後、改革に取り組むとし、過度な献金にならないよう指導。献金を基にする予算額を半分以下にしたとしました。また、年間数百億円に上っていた韓国への送金は取りやめているなどとしています。
ただ、今回の取材では教団は信者によって直接韓国へ持ち込まれた献金については把握できないということでした。
また、他の信者が資産を管理するなど献金のあり方が問われるケースも浮かび上がってきました。

こうしたことを踏まえて櫻井さん、教団の改革の実効性についてどう見ていますか。

スタジオゲスト
櫻井 義秀さん (北海道大学教授)
宗教社会学が専門 元信者への聞き取りを行う

櫻井さん:
改革は実行できないと思います。統一教会の教えに日本の植民地支配、これに対して贖罪しなさい、贖罪の中身が日本でお金を集めて韓国に送金して統一教会全体を支えるということなんですよね。そのことはハン・ハクチャ総裁も明確に日本に対して指令していますので、これに従わないというわけにはいかないんです。

桑子:
関係性について、今後も変わることはないと?

櫻井さん:
もし関係性を変えるのであれば日本が分派するとか独立するとか、別の統一教会になるということなんですね。それは韓国の本部が許すわけがないと思います。

桑子:
教団に対し文部科学省は、これまで6回の質問権を行使し、解散命令の要件となる法令違反があったのかどうかを調べています。
そうした中で櫻井さん、高額献金の問題を解決していくためにどういったことが必要でしょうか。

櫻井さん:
献金とかお布施は青天井ではありませんので、適切な額をお渡しするということがあると思うんです。そのことは宗教者もやはり信者さんの生活を考えなきゃいけないし、信者さんも賢く宗教とつきあうことが必要だと思うんです。私は「宗教リテラシー」と言っているのですが、これをもうちょっと日本人が全体として身に着けていかなくてはいけないのではないのかと。
VTRでもありましたように、1人暮らしの高齢者が狙われてるということがあると思うんです。高齢者の方々に対して離れた家族が見守るということが大事だし、家族がいない場合は地域、あるいは自治体がケアをするということが大事だと思います。こういう基本がないと、いつまでたってもこの手の問題はなくならないと考えております。

桑子:
旧統一教会を巡り、高額献金と共に問題視されたのが政治との関係です。
複数の政党で教団側との接点が明らかになる中、接点があった国会議員が最も多かったのが自民党で、党の調査で180人に上りました。そして、岸田総理大臣は関係を断つことを党の基本方針として徹底するとしました。
この方針が示されてから初めての全国規模の選挙となったのが、2023年4月の統一地方選挙です。番組では自民党の47都道府県連にアンケートを行いまして、公認・推薦候補の選定に際し、どのような対応を行ったのか聞きました。

旧統一教会との接点や関係について調査・確認を行ったか聞いたところ、すべてまたは一部の候補者に行ったと答えたのは青色の37。黄色は、全く行わなかったとしたところですが、候補者の選定を行う前ですとか公認のあとに確認を行ったなどとしています。

ただ今後、教団側との関係断絶を徹底させるための対応を聞いたところ、その回答が分かれました。

誓約書等への署名・提出を求めたところは25。誓約書は求めず、文書や口頭での周知のみだったところは17でした。

自民党の方針は選挙の現場で実際に徹底されていたのか。教団との関係が指摘されていた議員の選挙戦を取材しました。

旧統一教会と政治 “関係”は断ったのか?

県議会議員選挙の告示日(3月31日)。自民党 栃木県連の会長を務める茂木幹事長が、教団側との関係が指摘された候補の出陣式に訪れました。

およそ50年間県議会議員を務め、議長の経験もある板橋一好氏です。

板橋一好氏
「統一教会等の問題で迷惑をかけましたが、そういったことを乗り越えて今日は応援に来ていただいた」

教団との関係を断ち切るため、栃木県連は候補者へ誓約書の提出を求めました。板橋氏は2022年9月まで7年ほど、旧統一教会の関連団体「世界平和連合」の支部の代表を務めていました。過去には教団側から名簿集めなどの選挙支援を受けていましたが、党の関係断絶方針に従うことを決めました。

3月21日 板橋一好氏
「約束した以上はきちんとけじめはつけて、それ以後は一切関係は持っていないので」

今回、名簿は?

板橋一好氏
「あがっていない」

それも使わない?

板橋一好氏
「うん」

再選を果たした板橋氏。しかし獲得票数を前回から2,000以上落とし、定員5人の選挙区で最下位での当選となりました。

板橋一好氏
「(教団は)そんなに悪いことをしている組織だったのかなという感じがしたので、すぐ分かったというかたちではなかったけれども、(党の)方針がそういうことならば、これは守らざるをえないということなのでそれには従った」

今回の選挙からは教団と関係を断ち切ることの難しさも見えてきました。

徳島市議会議員選挙に立候補した美馬秀夫氏です。旧統一教会の信者であることを公言しています。

美馬氏は過去2回の選挙で自民党の公認を受け、当選。議会でも自民党系会派に所属し、活動してきました。今回は関係断絶の方針を受け、自民党への公認申請を取りやめました。

しかし、議員同士のつながりは今も。美馬氏の出陣式に自民党の県議会議員から祝電が届いていました。

美馬秀夫氏
「向こうからですね。私がお願いしたのではないです。付き合いがあるから知っているからね」

教団の理念を徳島市政に生かそうと議員になった美馬氏。同性婚に反対する主張などを行っています。

徳島市議会 3月 美馬秀夫氏
「パートナーシップ制度は、人類歴史の自然の人間の根本法則に反する、同性婚合法化につながる間違った考えであります」

こうした美馬氏の主張は、旧統一教会の教えに基づいています。

選挙では10人ほどの信者が中心となり、美馬氏を支えました。投票を呼びかける運動員を務めたのは2世の信者。選挙対策本部の幹部は、旧統一教会の関連団体支部の元理事が担いました。

信者議員を出すことは大事なこと?

関連団体支部の元理事 選挙対策本部 事務長
「それはそう思いますよ。やっぱり政治に携わってね、世の中を変えていくのがいちばん政治が近道でしょ。神様、創造本然の、創造した本然の世界、つくりたかった世界をつくりたいんですよ」
美馬秀夫氏
「やっぱり市町村議員を一人ひとり出していって、そして県議会議員、国会議員と出して、そして国政、日本を背負うというふうにしないといけない」

投開票日(4月23日)。1,655票が当選ラインとなるなか、美馬氏は最終的に1,978票を獲得。500票に上るとされる信者の票が当選を後押ししました。

選挙から2か月。徳島市議会を取材すると、一部の自民党議員が美馬氏と活動を共にしていました。美馬氏が元々所属していた自民党系会派は人数が3人。会長が美馬氏の会派入りを認めたのです。

教団との関係断絶が求められるなか、なぜ信者の議員と協力するのか。会派の会長を務める須見矩明市議に理由を問いました。

(美馬氏が)旧統一教会の信仰をお持ちだってことはご存じだった?

徳島市議会議員 須見矩明氏
「うん、それは知っとるし、古かったしな」

同じ会派でやるということに関しては?

須見矩明氏
「別になんじゃもんな。みんながみんな悪いんでないけんね。統一教会は統一教会で自分の個人的なことやけん。われわれの自民党には持ってくんなと。持ってきたら会長としてそれはやめてもらわないかんけんね。それははっきりしとるけん」

旧統一教会と政治 今後求められることは

<スタジオトーク>

桑子 真帆キャスター:
教団との関係断絶方針に現在どう取り組んでいるのか。自民党の茂木幹事長に取材を申し込み、書面での回答を得ました。

昨年(2022年)10月にガバナンスコードを改訂し、党本部より旧統一教会及びその関連団体との関係遮断を徹底する方針を示していると。さらに、各都道府県連におきましては既にこの党の方針等を所属地方議員や地域支部等に対し、周知・徹底しているということでした。
また、教団と関わりのある議員と会派を組むことについて

党の活動と議員の活動は別であり、会派の構成について党としてコメントする立場にはありませんということでした。

ここからは自民党の取材を担当する小嶋記者に聞いていきます。
会派の構成について党としてコメントする立場にはない、これはどう理解したらいいでしょうか。

小嶋章史記者(政治部):
「会派」というのは議会の言葉なのでなかなかなじみが薄いと思うのですが、議会の中で活動する議員の集まりといえますので、政党とはちょっと性格が異なります。
特に地方議会ではそれぞれの議員が党というよりは議員個人の考え方に基づいて活動するケースが多くありますので、例えば人間関係ですとか、地域事情に応じて会派が組まれるということもあります。
徳島の市議会でも自民党系の会派、これは複数ありまして、党側の回答はこうした事情を踏まえたものだといえると思います。

桑子:
ただ、会派には「自民党」という名前がついているわけですよね。党の方針に反することにはならないのでしょうか。

小嶋:
今回の党の回答では、反するとも反しないともしていないですよね。といいますのも教団との関係は2022年、かなり問題になりましたが、これが政権運営に影響を与えかねないような状況になっていました。
このため、自民党としては党の姿勢を早く打ち出す必要がありました。ある党の関係者に聞いてみたのですが、当時この会派の構成については地方の事情を踏まえて具体的な検討を行ったことがないと話していました。
ただ、党の方針では関係を断つということははっきり言っていますので、今回のこのケースについて理解が得られるかどうかというのはなかなか難しいのではないかと思います。

桑子:
そして今後、徳島のようなケースが広がっていった場合、再び国民から疑念を抱かれるようなことにつながらないのかと思うのですが。

小嶋:
確かに党内にはそうした懸念もあります。それだけに自民党はこの方針を徹底していく。これが問われます。
また、自民党以外にも関係を持っている議員が他の党にもいますので、政治全体がこの問題に対してどう取り組んでいくのかを説明を続ける必要があると思います。

桑子:
そして今後私たちに求められることは何なのか。日本の政党政治を研究する中北浩爾教授に聞きました。

中央大学 中北浩爾教授
「自民党という組織は非常に分権性が強く、県連自治というかたちで運営されていますし、それが自民党の強さの源泉の一つでもあることも確かなのですけれども、自民党が『(関係断絶を)徹底する』と言っても本部がそういう意図をもっていたとしても組織運営上、相当難しいと言わざるをえないと思います。特にいま投票率が低いわけなので投票率が下がってしまうと一部の固定票が過大な過剰な影響力をもってしまうという結果になる。有権者もさまざまな政治的な事柄に関心をもって投票所に足を運ぶことが、今回の旧統一教会と政治の問題を解決して、よりよくしていくためにも必要」

桑子:
安倍元総理銃撃事件から1年となります。今回お伝えした以外にも養子縁組など、あの時あぶり出された問題が十分に検証されたとは言えません。私たちはこれからも旧統一教会を巡る問題を伝え続けていきます。

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