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2019年12月12日(木)

イギリス総選挙 待ち受けるいばらの道
~“ブレグジット疲れ”の先に~

イギリス総選挙 待ち受けるいばらの道 ~“ブレグジット疲れ”の先に~

イギリス国民が熱狂とともにEU離脱を選択した3年半前の国民投票。その後、イギリスは混迷を深めてきた。医療制度や治安の問題が置き去りにされ、市民の間には「ブレグジット疲れ」と呼ばれる心理状況が広がっている。かつて、市民が警戒を強めたEU諸国からの移民の流入は急減し、むしろ、これまでイギリス経済を支えてきた労働者や研究者の流出が始まっている。12月12日に行われる総選挙。イギリスを待ち受けるその後の未来を見通す。

出演者

  • 田中理さん (第一生命経済研究所 主席エコノミスト)
  • 遠藤乾さん (北海道大学公共政策大学院 教授)
  • 武田真一 (キャスター)

3年間で何が変わった?流出する企業・移民

3年以上に及ぶイギリスの混乱。
見切りをつけ、すでに動き始めた外国企業もあります。

チェコの首都、プラハ。
その郊外に日本の金属メーカーの工場があります。
作っているのは電子部品を固定する、はんだ。
EU域内の自動車部品メーカーなどに納めています。

千住金属ヨーロッパ 村松栄彦社長
「これはイギリスの工場から、閉鎖した時に持ってきた在庫です。」

イギリスの工場を閉鎖し、チェコにすべての生産を移管した背景には強い危機感がありました。
EU域内では人や物が自由に行き来できます。ところがイギリスのEU離脱によって物流が滞ることを懸念する声が取引先から強まったのです。

千住金属ヨーロッパ 村松栄彦社長
「ドーバー海峡で(物流が)止まってしまった、通れません、ではすまない。経営者としては判断しなければいけない。(イギリスの)工場を閉じるという判断。」

6月にイギリスの工場を閉鎖。
従業員30人全員を解雇せざるを得ませんでした。

千住金属ヨーロッパ 村松栄彦社長
「たとえEUと合意して離脱した、そのあとがさらに不透明。今のイギリスは、まったく見えなくなっている。」

移民労働者の間でもイギリスを見限る動きが広がっています。
イギリス東部の街、ピーターバラ。
人口の2割を占める移民が、製造業や観光業など経済を支えてきました。
街の中心部にあるホテルです。

取材班
「出身地は?」

従業員
「ポーランドです。」

「スロバキアです。」

従業員およそ500人のうち、6割以上を主に東欧からの移民に頼っています。しかし、通貨ポンドの価値が1割下落したことで、移民労働者にとっての魅力が低下。人材の確保が難しくなっているといいます。

ホテル経営者 ロバート・ピールさん
「ユーロに対し、ポンドが下落していて、ヨーロッパ出身の従業員の賃金が下がりました。ドイツやオランダなどで働くほうが経済的に安定するし、ユーロで給料を受け取れるので、そちらに流れてしまうのです。」


「イギリス国民は『EU離脱』を選んだ。」

移民を巡る状況は、国民投票を行った3年前と大きく変わりました。

当時、EU離脱を後押ししたのが増え続ける移民の問題でした。賃金の安い労働力がイギリス人から仕事を奪っていると不満が高まっていたのです。

「こんなに失業者がいるのに、なぜイギリス人を雇わないのでしょうか。」

ところが、現在はEU域内からの移民の増加数が鈍り、当時の3分の1になっているのです。

EU加盟国の間では、こうした移民を自国に呼び込もうとする動きが活発になっています。

ドイツ ゲルリッツ市長(ゲルリッツ市の移民誘致PR動画)
「よい仕事がたくさんあります。職場までは目と鼻の先。車の渋滞もありません。人生を楽しんで!」

先月下旬、ドイツ東部のゲルリッツ市が公開した動画です。イギリスにいる移民たちに、同じEU加盟国のドイツで働こうと呼びかけています。

高齢化で人手不足に悩んでいた、この自治体。
地元企業への就職や住宅のあっせんなど、手厚いサポートを打ち出しました。

ドイツ ゲルリッツ市 移民誘致担当者
「イギリスの総選挙は、私たちにはチャンスです。ブレグジットについて報道されればされるほど、私たちの誘致プロジェクトに、より多く注目が集まるのです。」


すでに、この街の靴メーカーに転職を決めた人もいます。
ポーランド人のヤロスハフ・クチュンスキーさんです。
14年前にイギリスに渡り、自動車部品工場などで働いてきました。EU域内を自由に行き来できるうえ、イギリス人と同等の待遇も保障された生活に満足していました。ところがEU離脱の議論が持ち上がると工場の受注が減少。同僚の移民たちも次々に解雇されていったといいます。

ポーランド人 ヤロスハフ・クチュンスキーさん
「不安定な状況が続き、ブレグジットでいつ仕事や家を失うか、不安な日々はもううんざりです。ドイツで仕事を見つけることができたので運が良かったです。」

今年9月からドイツで働き始めたクチュンスキーさん。イギリスに未練はないといいます。

妻 バーバラさん
「今は最高です。給料もいいし、生活の質も上がりました。」

ポーランド人 ヤロスハフ・クチュンスキーさん
「イギリスとどっちがいい?」

妻 バーバラさん
「戻りたい?」


「ううん。」


EU離脱への不安がある中でも、保守党のジョンソン首相はEU離脱の実現を公約にしています。離脱することでEUの政策に縛られず、外交や経済政策などを自国で決定できるというのです。

イギリス ジョンソン首相
「離脱に決着をつけて前進すれば、すばらしい未来が待っている。」

最新の世論調査では、EU離脱を公約にする保守党の支持率は43%と、34%の労働党をリードしています。
3年前の国民投票で、住民の半分以上が離脱を選択したフリントシャー州。
この街でも主要企業が撤退する可能性が浮上したにもかかわらず、多くの住民からは保守党を支持する声が聞かれます。
ヨーロッパの大手航空機メーカー、エアバスのトップの発言が波紋を呼んでいました。

エアバスCEO(当時)
「我々の航空機の翼をつくりたい国は、他にもたくさんあるんだ。」

それでも地元では、EU離脱こそがイギリスの国益につながると考える住民が少なくありません。

地元の声
「自国のことは自分たちで決めるべきです。離脱を実現してほしい。」

「アイデンティティーを取り戻さなくてはなりません。離脱を支援する党に入れますよ。」

ブレグジット疲れのなか、投票が行われているイギリス。
この3年の変化を具体的に見ていきます。

国民投票から3年 何が変わった?

武田:長年、イギリスの動向を追ってきた田中さんが指摘するこの3年の変化。まずは経済的な魅力のダウン、そして、人材の流出ですが、どういうことでしょうか?

ゲスト 田中理さん(第一生命経済研究所 主席エコノミスト)

田中さん:離脱協議が迷走している。ある意味、イギリスが立ち止まっている間に、実はイギリスから見ると保護主義的だと思っていたEUのほうが、日本やシンガポールといった国と貿易協定を結んでいるという事実があるわけです。日本の進出企業からすると、不透明感が続くイギリスにとどまらなくても、EUの大陸に移るとか、あるいは日本から直接輸出をする選択肢も出てきている。
人材面ということになりますと、実は研究者などの頭脳流出、こういったものも始まっているということです。

武田:それは、イギリスの国力を下げると?

田中さん:イギリスという国は、強さの秘密は目に見えないソフトパワー。その源泉が優秀な人材なわけですから、そこが細ってくるということになると、イギリスの地盤沈下にもつながりかねないと。

武田:一方、北海道大学の遠藤さんは、イギリスの政治の面から外交力の低下、そして議会の機能不全という点を挙げていらっしゃいますが、どういうことでしょうか?

ゲスト 遠藤乾さん(北海道大学公共政策大学院 教授)

遠藤さん:3年で内外に問題を抱えまして。今、ソフトパワーと田中さんがおっしゃいましたが、外交でも尊敬とか信用が失われて、それだけではなくて、イギリスは伝統的に3つのサークルですね。アメリカとの特別な関係、旧植民地コモンウェルスとの関係、EUのメンバーということで、この中にいることで影響力を持っていた。それがEUから出ることで失われるということです。
中では、議会のほうですね。世論の分断を受けまして、議員に対する脅迫が増えたり、議会の中の言葉遣いがののしりあいに近くなったり、ずいぶん劣化した。それだけではなくて、議会の中が割れ、与党が割れ、通常想定されるような議会の決定がなかなかしにくくなった。そういう問題があったかと思います。

武田:そして、もう1つイギリスは連合王国になっていて、かつて独立を模索したスコットランド。このイギリスという国自体が今、バラバラになるような可能性もあるということですが。

遠藤さん:中で抱えているもう1つの大きな問題は、ブレグジットってイングランドのナショナリズムの声、自分たちが離脱したいという声だったんですね。それに対して、スコットランドはEU残留を求めたわけで、そこがねじれた結果、連合王国の中で遠心力が非常に高まっている状況かと思います。

武田:スコットランドが分離しようというような動きにも、もしかしたらつながるかもしれないと。
分断というのがもう1つのポイントでして、この3年間、国民の分断が深まったんじゃないかということもいえると思います。
こちらは、離脱か残留かどちらを支持しているか、去年3月から9月までの推移です。残留のほうがやや上回っているんですが、1年半にわたってきっ抗しているんです。注目したいデータで、離脱派も残留派も9割が考えを変えていないんですが、田中さん、3年余り議論してきて、なぜ考えが変わらないんでしょう。

田中さん:自分たちの生活がなぜ苦しいのか、その原因に対しての認識の違いがあるんだと思います。国民投票で現状に不満を感じて離脱に投票した有権者からしてみると、EU残留を呼びかけている人々というのは、EUを離脱して困るのは結局EUとの貿易で潤っているエリート層なんだろうという意識があるわけですね。自分たちの生活が苦しいのはもっと前からで、失業したり、賃金が上がらなくなったり、社会福祉の水準が低下していると。こういったものはすべてEUの責任だと思っているわけで、そのEUから離脱することによって現状を変えたいと。それによって、イギリスの誇りを取り戻したい。そう考えていると思います。

武田:逆に現状が変わらない以上は、EU離脱を撤回することもなかなかできないと。
ただ遠藤さん、残留のほうが上回っているんですね。なぜ、離脱を主張している保守党が今のところリードしているのか?

遠藤さん:わずかに残留を上回っているんですが、離脱の48%ぐらいはイギリスの保守党がごそっととっていくのに対して、残留派のほうは、労働党とか自民党とかスコットランド国民党で割れていくと。それで保守党が有利だといわれています。

武田:3年の間ブレグジットの議論に多くの時間が費やされる中、ほかの重要な課題が進んでいないという不満の声も上がっています。

“重要な課題が進まない…”停滞への不満

街の声
「みんな、離脱の議論が長引いていることにうんざりしているんです。」

「離脱でも残留でも、さっさと進めてほしい。金と時間の無駄だ。」

アナウンサー
「ブレグジットなしの5時のニュースです。」

イギリスでは、EU離脱をまったく扱わないニュース番組が話題となりました。
先行きの不透明さから、3人に1人の心の健康に悪影響が出ているという調査結果も伝えられています。

去年3月からの1年間に議会がEU離脱に費やした時間は、前年の倍以上の300時間。審議時間の4分の1が割かれる異例の事態となりました。
こうしたなか、国民の関心が高い、社会保障や治安対策などについての議論が十分になされていないと不満が高まっているのです。

中でも、懸念されているのが“NHS=国民保健サービス”の改革の停滞です。

イギリスでは原則、無料で医療を受けられます。しかし近年の緊縮財政により予算の配分が十分に行われてこず、その影響が現場に及んでいました。医師やベッドが不足し、医療の質が低下。早急な改革が必要という声が高まっていました。
その不満がジョンソン首相に直接ぶつけられる場面も。

男性
「医師も足りない、看護師も足りない、NHSは崩壊しているんだ。」

男性は、この病院に入院する女の子の父親でした。救急で運ばれた際、数時間待たされ、すぐに診療を受けられなかったといいます。

NHSの改革については、有権者の7割が総選挙の最重要課題に挙げているという調査もあります。

改革を求める1人、ロンドン郊外の公営住宅に暮らすメッテ・イェンセンさんです。おととし、当時18歳だった娘のソフィアさんをがんで亡くしました。

メッテ・イェンセンさん
「彼女は私の前では涙を見せなかった。人生で一番いい時期だったのに。」

今、イギリスでは医師不足のため、診療の予約をなかなか入れられない状況が続いているといいます。ソフィアさんが体調の異変を訴えたときも詳しい検査がなされず、がんの発見が大きく遅れたといいます。二度と娘のような悲劇が起きないように、一刻も早くNHSの改革に着手してほしいと訴えています。

メッテ・イェンセンさん
「ここ3年で悪化していることは明らかです。何年も待たないと手術が受けられないことだってあります。そういうところを変えてほしいのです。」


欧州・英国関係のシンクタンク マット・ベヴィントンさん
「ブレグジットばかり議論しているため、教育や医療などの社会サービスについて、政治家の関心が離れてしまいました。どの政党も政府に問いただしていないのです。」

社会福祉の充実を主張してきた最大野党・労働党。

労働党 コービン党首
「この国で格差が広がっている。ひどい貧困が各地で生じている。」

今回の選挙では、EUからの離脱か残留か、どちらを支持するか立場を明確にしていません。支持者の間でも、離脱派と残留派の双方がいるからです。

労働党の支持者の中には、離脱を巡る議論に早く決着をつけてほしいと、支持政党を変える人たちも出てきています。
長年にわたる労働党の牙城、ワーキントン。この街で今、労働党離れが進んでいます。

ピーター・スタッグさん
「母も父もいとこもおじも、私の家族はみんな労働党を支持してきたんだよ。でももう、私は支持しない。」

パブで出会ったピーター・スタッグさんです。
息子の失業をきっかけに、別の離脱を掲げる政党を支持するようになりました。息子は1年半前に失業して以来、今も仕事が見つかっていません。この3年、有効な雇用対策が進んでいないことに、スタッグさんは憤りを募らせています。

ピーター・スタッグさん
「息子は1年半も職を失っているんだ。もし仕事があって、経済が安定するなら離脱した方がいい。うまくいくならうまくいくし、うまくいかないなら、その時だ。イギリス人の気質ならどうにかできるさ。」

今、投票が行われている総選挙。
その結果がイギリスに何をもたらすのか、行方を占います。

見通しは?最新の選挙情勢

武田:ロンドンの向井支局長に聞きます。最新の情勢はどんな見通しでしょうか?

向井支局長:大手調査会社による最新の議席の予測では、与党・保守党が過半数を取るという見通しが示されています。特に、労働党が地盤としてきた北部や中部の工業地帯だった地域では、EUへの不満から離脱を支持する人が多く、ジョンソン首相はこうした人たちをターゲットに離脱を実現させようと明快なメッセージを伝えて労働党の切り崩しを図っています。ただ、労働党も若い世代の支持を背景に追い上げを図っていて、支持率を見ると、少しずつその差を詰めてきていることがわかります。
おととしの選挙でも当初、保守党が圧倒的優位だと伝えられていましたが、結局、過半数割れという結果になりました。労働党としては、今回も同じ展開に持ち込みたいところだと思います。

武田:この議論が停滞して3年余りになるわけですね。このことが選挙戦に与えている影響を、向井さんはどういうふうに見ていますか?

向井支局長:選挙期間中、さまざまな地域で市民に聞きましたが、誰もがうんざりしているというのが実感です。離脱でも残留でもいいからとにかく議論を前に進めてほしいという声は、支持政党にかかわらず、あらゆる場所で、あらゆる人たちから聞きました。それだけに、離脱してさまざまな課題に取り組もうと、ことあるごとに繰り返し、ソーシャルメディアも駆使して訴えかけるジョンソン首相のメッセージは、一定程度人々の心をつかんだというのは間違いないと思います。
とはいえ、離脱に賛成か反対かがまるで宗教論争のようになり、国内の分断がますます広がる中、選挙によって離脱が実現したとしても、今後、EUとの将来の関係をめぐる議論をスムーズに進めるのは難しいというのが実感です。

選挙後に待ち受けるいばらの道

武田:今もありましたように、選挙の結果にかかわらず、ブレグジットをめぐってはいばらの道が今後も続くとみられます。
それぞれ選挙結果のパターンで見ていきたいんですが、まず、保守党が過半数を確保、政権が継続する場合。ジョンソン首相は1月にも離脱を決定するとしていますが、田中さん、そのあとEUとの交渉が待っているんですね。

田中さん:この場合、離脱の先に待つ新たな崖に注意が必要なんだと思います。来年の12月末までに、イギリスはEUと包括的な貿易協定をまとめたいとしているんですが、過去のEUの貿易協定の締結までにかかった時間は、最短で4年です。これを11か月でまとめるというのは、かなり至難の業。これをまとめないと、合意なき離脱と同じぐらいの混乱が起こる可能性があると。

武田:もう1つのパターンは、保守党が過半数割れしても、少数与党として政権が維持される場合。今までどおり、何も決められない宙ぶらりんの議会が続くということですが。

田中さん:この場合、離脱関連法案を議会に通すことができない。そして、離脱期限をさらに延長することも難しいかもしれないということで、来年の1月末に向けて合意なき離脱のリスクが浮上してきます。

武田:そして、保守党が過半数割れして、労働党を中心とした政権に交代する場合。再び、国民投票が行われる可能性がありますね。

田中さん:労働党の離脱方針は、より穏健な形の離脱案をEUともう一度、協議していきます。その離脱案とEU残留、これを2択にして国民投票をもう一度やりますと。この場合は、EU残留の芽もあるということです。

自国第一主義の行く末は

武田:イギリスのEUの離脱、アメリカのトランプ大統領のアメリカファーストなど、自国第一主義が世界で広まっています。
その行方が一体どうなるのか。それを考えるために、遠藤さんが注目しているデータがこちら。世界の人々の所得の伸び率を表したものですが、左が所得が低い人、右が所得の高い人です。所得の伸びが高いのは新興国の労働者や先進国の富裕層で、先進国の労働者は平均を下回っている、取り残されているということです。先進国労働者が取り残されている限りは、ブレグジットのような自国第一主義の動きは今後も続くというふうに遠藤さんはみているわけですね。

遠藤さん:イギリスだけじゃなくて、ほかの先進国もそうですけど、労働者の実質的賃金が伸びない中で、経済的な意味での不満が高まっているということがあります。有名なゾウのカーブという図なんですけど、それを端的に示すことで有名になった図です。経済的な要因とともに、自国第一主義にはもう1つ、社会文化的なアイデンティティー要因、先ほどのインタビューでもありましたが、それぞれの人たちが誇りを持ちたいわけですよね。実質的賃金が伸びない中、国の誇りみたいな、自分の人生の意味を見いだしていくと。そういう人たちが増えていて、自国第一主義になる。もし手当てができるとすると、先進国労働者の辺りは公共政策的に手当てが可能な部分かなと思います。

武田:ただ、こういったアイデンティティーも含めたグローバル化がもたらした構造が続く限りは、なかなかイギリスの分断も、あるいは世界の分断もどうなるんでしょうか。

遠藤さん:そこのところはかなり構造的な要因で、技術革新もあると思いますけど、先進国労働者が落ち込んでいる限りは、穏健な政治というのはなかなか取り戻せない部分があろうかと思います。

武田:なかなか難しい状態が続きそうだということです。
分断が進むイギリスは、どこに向かうのか。

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