社会的入院の子どもを診た
小児科医は

かつて社会的入院を余儀なくされた子どもを担当した大阪府内の病院の小児科医が子どものプライバシーを守るため匿名を条件に、取材に応じました。


「ほんまやったら家族で“わいわい”したところで育つのが良いのに病院のベッドで1日過ごしているなぁというのが、やっぱり切ななりますね」

この医師が担当した生後2か月の女の赤ちゃんは、体重が少なく、やせていたため、「体重増加不良」と診断され、入院しました。ミルクを与えると体重が増えたため、退院させて家庭に帰しましたが、わずか数日で再び体重が減り、改めて入院することになりました。

保護施設もいっぱい 入れたのは7か月後

病院は、親が十分な栄養を与えていないと判断して児童相談所に通告し、赤ちゃんは、保護されることになりました。しかし、児童相談所からは、保護施設がいっぱいで、受け入れ先がないと伝えられ、病院は、引き続き入院させるしかありませんでした。入院している間、赤ちゃんは、ナースステーションの隅のベッドに寝かされ、医師や看護師が、仕事の合間に交代でミルクを与えたり、おむつを替えたりしたということです。赤ちゃんは、受け入れ先が決まらないまま、別の病院への転院を繰り返し、最終的に施設に入れたのは、7か月後だったということです。

担当した医師は、「子どもにとって病院は病気を治すところで、決して育っていく環境ではありません。家族に囲まれて育つことが一番なので、切ない気持ちで見守っていました。子どものために何とかしたいという思いでボランティアで面倒を見ていました。本来の仕事に支障が出るおそれもあり、ジレンマを抱えながら対応していました」と話していました。

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