放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

「公平原則は復活しない」FCC委員が明言

米FCC(連邦通信委員会)のM.コップス委員は,対立する見解にも放送の中で等しく時間を割り当てることを義務付けた「公平原則(Fairness Doctrine)」ルールを復活させる考えはないことを,明らかにした。12月10日付けで下院エネルギー・商務委員会のバートン議員(共和党)へ送った回答書の中で述べた。公平原則は1949年に導入されたが,憲法に違反するとして1987年にFCCが廃止していた。コップス氏が講演の中で「FCCは放送局への免許付与や更新に関して,放送内容を検証して厳格に行うべきだ」と発言したことに対し,バートン議員が,政府は放送の中身に介入し過ぎるべきではないとして質問状を送っていた。

米国民のネット利用時間,テレビ視聴時間に並ぶ

アメリカ国民は,平均すると1週間に13時間インターネットを利用しており,これはテレビ視聴時間に匹敵するという調査結果が12月13日に発表された。米調査会社Forresterが4万人を対象に実施した調査によると,インターネットの利用時間は過去5年で121%増加したという。一方で,テレビの視聴時間には変化が見られず,減っているのはラジオの聴取時間や新聞・雑誌を読む時間だという。ネット利用で人気が高まっているのはオンラインショッピングやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で,オンラインショッピングの利用者は調査対象者の3分の2に達し,また,SNSの利用者は全体の 35%と,いずれも3年前の調査に比べて倍増している。

CNN『ラリー・キング ライブ』が終了

米CNNの看板トーク番組『ラリー・キング ライブ』が12月16日,25年に及ぶ番組の幕を閉じた。司会のキング氏は,自身の意見は交えず簡潔な質問で相手の本音を引き出す話術が人気を呼び,大統領から新人の芸能人まで幅広いジャンルの人にインタビューを行った。最近では個人の意見を声高に主張する司会者が増えるなか,同番組はFOXやMSNBC などに押されて視聴率が低迷していた。
2011年に始まる後継番組では,英国人のピアーズ・モーガン氏が司会を務めることになっている。

米,コミュニティーラジオ法成立

アメリカ上院は,12月18日,低出力のFM 放送局の設立を容易にする「ローカルコミュニティーラジオ法」を可決・成立させた。アメリカでは,これまで商業局などの反対が強いことなどもあり,一部の農村部などを除いてコミュニティーFM 局の設立が認められてこなかった。新法の成立によって,自治体や教会,学校といった非営利団体が地域住民のニーズに即したコミュニティー放送を容易に始めることができるようになる。新法は,出力100ワットまでの放送を対象としている。

ベネズエラ,新メディア法でネット規制強化へ

ベネズエラでは,12月20日,インターネットのコンテンツを規制する内容を盛り込んだ法律が国会で可決・成立し,放送や新聞などを対象に設けられてきた規制がインターネットにも適用されることになった。新法は,社会不安をあおったり,合法的な権力機関を尊重しないコンテンツを禁止するとしており,違反した事業者には,巨額の罰金や,場合によっては事業免許奪などの制裁が科される。チャ ベス政権はテレビ局などマスコミへの規制を強化しており,今回の動きも,言論の自由を脅かすと野党などから批判が上がっている。

ウルグアイ,地デジ規格で日本方式採用

ウルグアイ政府は,12月27日,地上デジタルテレビ放送方式として日本方式(ISDB‐T)の採用を決定したと発表した。ウルグアイは,2007年8月に,当時のバスケス政権のもとで欧州方式の採用を決定・公表していたが,南米諸国で日本方式の採用が相次いだことを受け,2010年3月にムヒカ大統領が就任後,放送方式の再検討を行ってきた。ムヒカ大統領は,南米で欧州方式を採用するのが同国とコロンビアに限られていたことについて,地域内で孤立することに懸念を表明していた。海外での日本方式の採用は,11か国目になる。