放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

05.09.01英ケーブル最大手のntl,Telewest買収へ

イギリスのケーブルサービス事業の最大手ntlは10月3日,国内のライバルであるTelewestを34億ポンド(約6,800億円)で買収すると発表した。ケーブル業界は,デジタルサービスへの対応が進む中で,テレビサービスでは衛星放送のBSkyBや地上放送のFreeviewとの競争や,BT(ブリティッシュ・テレコム)との電話やインターネット,オンデマンド・サービスをめぐる競争に直面し,両社の合併が模索されていた。この合併によって,イギリスのケーブル事業はほぼ一本化され,500万世帯の加入を持つケーブル会社が誕生する。

05.09.01仏,地上デジタル放送でHDTV,携帯受信を試行

フランスの衛星放送TPSは9月14日,エッフェル塔から地上デジタルテレビ放送では世界初というMpeg-4 HDによるHDTVのデモンストレーション放送を行った。またTDF,TPS,カナル・プラスによる3つのコンソーシアムが9月15日からパリで9か月間 DVB-Hによる携帯受信の実験を開始した。さらに商業テレビのTF1を中心としたコンソーシアムは10月15日から6か月間,VHFで韓国方式のT- DMBによる携帯受信実験を行う。いずれも公共放送を含む主要放送局などが参加している。

05.09.01伊,『放送統一法典』が発効

イタリア国内で過去30年間に出された放送法制,独立規制機関AGCOMの決定,度重なる判断で不透明となっていた憲法裁の判決などをすべて整理し合理化した,いわゆる『放送統一法典』が9月8日に発効した。これはデジタル時代でのテレビ・ラジオ分野の各規制,各種サービスや公共放送の任務の再定義,広告規制の再明確化などの内容を含む。しかし同法典は,国内で今年1月から大手民放MediasetやTelecom Italiaがサービスを開始し,急速に利用者が伸びている地上デジタル放送で提供するペイパービュー・サービスを「双方向関連サービス,又はCASサービス・プロバイダー」によるオンデマンド・サービスと定義づけており,テレビ放送局の集中規制から外れることから,新規参入を阻害する状況を容認する内容となっている。

05.09.01独メディア庁,「2005年デジタル化報告書」を発表

デジタル放送の技術フォーマットや標準規格導入に関する意見調整や方針策定を中立的な立場から行うメディア庁連合体ALMは,ドイツのデジタル化の現状についての報告書を8月30日に発表した。調査は7月に行われたもので,1世帯につき3台の受信機までカウントされている。報告書によると,ドイツのテレビ視聴世帯の25.7%がなんらかの伝送路でデジタル放送を視聴しており,地上放送視聴世帯の45.6%,衛星放送視聴世帯の38.8%,ケーブル視聴世帯の9.7%がデジタルで視聴している。また報告書は,地上放送に関しては2007年内のデジタル化完了が可能であるとしている。

05.09.01SBS Broadcasting,欧米の大手投資ファンドが買収

ヨーロッパ9か国でテレビ・ラジオ放送事業を行うSBS Broadcastingは,欧米の大手投資ファンドPermiraとKKRに16億9,100万ユーロ(約2,300億円)で全事業を売却することで合意し,10月3日のSBSの株主総会でも承認された。PermiraとKKRの所有となったSBSは,今後中東欧のテレビ市場に積極的に事業拡大していくものとみられる。SBSは1990年スカンジナビアでテレビ放送事業を開始し,90年代半ば以降ベネルクス諸国やハンガリーなどに事業を展開,現在RTL グループにつぐヨーロッパ第2位の商業放送事業者となっている。

05.09.01EU委員,「テレビ命令」全面見直しの意向を表明

欧州委員会は,加盟各国のテレビ放送法制・行政の共通原則を定めた1989年の「国境のないテレビ命令」を改正する準備を進めているが,この改正作業に責任を持つレディング委員は,9月23日,イギリスで開催された専門家会議の席上,同命令は89年のメディア状況を前提としたもので,今後のメディアの発展に対応するため見直す必要があると述べた。同委員は,特に,広告規制については自主規制や共同規制が各国で進展すれば,EUレベルのテレビ広告の1日あたりの時間限度規制は緩和される可能性があると述べ,また欧州制作番組や独立制作番組の編成をテレビ放送事業者に義務づけることについても,欧州での番組制作奨励にこれが最適の選択肢かどうか疑問だと述べた。