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ニュースの読み方 NHKアナウンサー新人研修2024から 元ニュース7キャスター瀧川剛史講師 直伝の極意

『ニュースはどう読んだら伝わるのか?』そのヒントがここにあるかも知れません
  • 2024年5月21日

2024年4月、NHKに12人の新人アナウンサーが入局。2か月にわたって、アナウンサーとしての技術や心構えを学んでいきます。講師を務めるのは、これまでNHKの「顔」として、放送現場で最前線に立ってきた先輩アナウンサーたち。今回は、ニュースの原稿を読んで伝える「ニュースリード」実習の様子をのぞいてみました。

ニュースを読む前に・・・大事な心がけとは

ニュースリードとは、その名のとおりニュース原稿を読んで伝える仕事のこと。視聴者の皆さんにニュースを正確に伝えるニュースリードは、NHKアナウンサーの仕事の「基本のき」とも言えるかもしれません。新人アナウンサーたちは4つのグループに分かれ、連日のようにみっちりニュースリードの基礎を教わります。

左から鈴村奈美アナ、戸﨑悠斗アナ、中林彩乃アナ

ニュースリード実習初日、鈴村奈美アナ、戸﨑悠斗アナ、中林彩乃アナのグループをのぞいてみました。

この日は、昨年度までニュース7のキャスターをしていた瀧川剛史アナウンサーが講師を務めます。テレビで見ていたアナウンサーを目の前に、新人アナたちの背筋がピンと伸びます…。

冒頭、早速講師の瀧川アナウンサーから、ニュースを読むときの極意が伝えられました。それは、「ニュースを“読み上げる"のではなくて、目の前の相手に話すように伝える」ということ。これが最大のポイントであり、難しい点なのだと言います。

私も20年やっていますけども、それとの闘いです。ちょっと油断すると「読み上げているな」ってなっちゃうんですよね。だから、これはもうベテランだからすぐできるということではなくて、常に自然に話すように読めているかということを考える探求の道が続く感覚です

「話すように読む」ためにはいったいどうすればよいのか。実践を交えながら学んでいきます。新人アナたちに配られたのは、練習用のニュース原稿。練習用といっても、過去、実際に放送されたニュースから作られたものです。アナウンサーが読みやすいよう大きな字で、縦書きで印刷されていて、放送現場では「タテ原稿」と呼ばれています。

原稿に目を通して、早速声に出して練習!と、その前に、瀧川アナから、原稿を読むときの大切な心構えが。

瀧川アナ

いきなり声に出してしまうのではなくまずは黙読して、何がニュースなのか、何のために伝えるのかということを考えてほしいと思います。

声の抑揚の付け方や間の取り方といった「読み方」の練習の前に、まずはそのニュースのポイントは何なのか、どういった構成なのかを理解すること。なんとなく文字を追っているだけなのか、それとも内容やポイントをしっかりと理解した上で読んでいるかどうかで、そのニュースの聞こえ方がまったく変わってくるのだといいます。

瀧川アナ

これがね、意外と忘れてしまう点なんです。つい、原稿を文字として読み込むとか、意味を理解するというところだけにとどまってしまう場合が結構ある。なぜ自分はこのニュースを伝えているんだろうかっていうのが見えているか見えていないかで、伝え手の迫力、声の届く力みたいなものが圧倒的に上がってくるというのが実感としてあります。

いったいどのようなニュースなのか。いちばん重要なキーワードは何か。どんな人に、なぜこのニュースを伝えるのか。しっかりと黙読して全員で確認した上で、いよいよ1人ずつニュースリードに挑戦です。まずは中林彩乃アナ。

「自然な声でとてもしっかりポイントが伝わる読みだったと思います」との瀧川アナの講評に、それまで緊張の面持ちだった中林アナも思わず笑みがこぼれます。その上で、よりよくするための具体的なアドバイスも。

単語を蛍光ペンでハイライトするようなイメージだと、そこだけに読みの意識がいってしまって、結果として全体のつながりとかバランスが崩れてしまう。例えば「値上げ」に丸を付けると、「料金を”値上げ”します」とそこだけ不自然に強く聞こえてしまうので、あくまで「料金を値上げします」っていう風に言葉の固まりを崩さないようにしましょう。

伝えたいポイントはしっかり伝わるように、かつ強調しすぎず不自然にはならないように…このあたりのさじ加減は、なかなか1回で身につけることは難しそう。これからたくさんの原稿を読むなかで、少しずつ身につけていってほしいですね。

いい読みは正しい姿勢から!

続いて、この日が人生初のニュースリードだという戸﨑悠斗アナ。一見スムーズに読めているようにも見えましたが… 読む姿をじっと見つめていた瀧川アナ、戸﨑アナの弱点に気付きました。

戸﨑さんの場合、特に首から肩、胸の上の辺りに少し力みを感じるんですよね。力みは大敵。緊張すると息が吸えなくなって長時間読むことが難しいし、聞いている方もすごく強い球を投げつけられているような感じで情報が届いてくるので疲れちゃうんです。

読んでいるときの姿勢に力みの原因があると見抜いた瀧川アナは、余計な力を抜くための正しい姿勢と呼吸のしかたを指南します。

瀧川アナ
しっかり地面に足をつけて、上から糸でつり下げられているようなイメージで座ってもらうと全身の力がだんだん抜けていきます。読む前に息をすーーっと吐いて、吐いた分の息を、自然な横隔膜の反動で中に入れるというぐらいのイメージで入れて読むということを一回やってほしいなと思います。

瀧川アナのアドバイスを意識して、再度読んでみると…

激変!ガラッと声が変わったの分かる?

読みやすくなりました!

最初の読みからものの数分で、落ち着いた印象の読みになりました。戸﨑アナ本人も、読みやすくなったと驚きです。

油断すると力む、緊張すると力む、準備できていないと力む、時間が追い込むと力む…。私も未だに戦っています。どれだけ経験を積んでも、「いま自分力んでいないかな」って考えることは忘れないでください。

自分の読み方のクセを知る

左から中山真羽アナ、稲井清香アナ、石井晶也アナ、講師の中山果奈アナ

日付は変わって、ニュースリード実習3日目。この日は石井晶也アナ、稲井清香アナ、中山真羽アナのグループをのぞいてみました。講師を務めるのは中山果奈アナウンサーです。少しずつ自分の課題が見え、壁にぶつかり始めた新人アナたちへ、中山アナから「ニュースリードにゴールってなくて、私自身もまだ自分の読みが100点だとは思っていません。できないできないって思いすぎず、課題を一つずつ潰していく気持ちで前向きに頑張ろう!」とのエールが送られました。

この日は読みを録音し、再生して自分で自分の読みを聞きながら癖や課題を探っていきます。イントネーションや抑揚の付け方など、それぞれの細かい癖を中山アナがひとつひとつ指摘します。例えば…

中山果奈アナ

中山真羽さんは、「〇〇がー」「▲▲をー」といったように、少し助詞が伸びる傾向がありました。文末はきれいなんだけど、難しい単語の前とか、迷ったときに伸びる傾向があるかな。

どんなときにどんな癖が出やすいのかを具体的に指摘してもらった中山真羽アナ。1回の実習ですべてが改善、というわけにはいきませんが、自分が向き合うべき課題がはっきりと見えました。

中山真羽アナ

明確に「まずはこれを直そう」っていう課題をいただけたことが本当に嬉しくて。その次の一歩がどういう方向に向けばいいかが分かったっていうところが大きかったなと思います。

スラスラ読むだけが正解じゃない!?

この日の練習用の原稿は、「全国の火山を観測・研究する調査推進本部が立ち上がった」というニュース。「火山調査研究推進本部」「活動火山対策特別措置法」「火山噴火予知連絡会」…難解で、読むのが難しい単語がズラっと並びます。

新人アナの3人が言葉をつっかえずに読むのに苦戦するなか、中山アナからこんなアドバイスが。

漢字が多くて、まずスムーズに読まなきゃという意識がどうしても起こるんだけど、でも自分が読んでいて難しい言葉って、視聴者も、一瞬で聞いても絶対分からないゆっくり丁寧に読んであげたほうが、聞いてる方も「ああ、なるほどね」と入ってくると思うんです。最初はたぶんとちることが多くなるんですけど、でもそこにめげないという気持ちでやっていくといいと思います。

なめらかにスラスラと読むことが必ずしもいい読みだとは限らない…。上手に読むということだけではなく、視聴者の目線に立ってニュースと向き合うことも大切なんですね。

最初に原稿を読んだときのファーストインプレッションを大事に、自分の「思い」みたいな、「へぇ」って思ったところをきちんと取っておいて、そこを大切に読むという気持ちを持って読んでいくといいかなと思います。

実習を終えて 新人アナが学んだこと

ニュースリード実習を通して、心構えから具体的なノウハウまで、実践をまじえながらみっちりと学んだ新人アナウンサーたち。今回密着した6人は、実習からどんなことを感じ取ったのでしょうか。

中林彩乃アナウンサー

何を伝えるのか、何のために伝えるのかというその根本は、これからいろいろと経験を重ねていくなかでも大切にしたいなと思います。

鈴村奈美アナウンサー

「アナウンサーだからこういう風にしないといけない」っていうイメージにとらわれずに、一人の人として、「そのニュースを必要としてくださってる人に届けるんだ」という思いをこれからも大事にしたいと思いました。

戸﨑悠斗アナウンサー

これまで講義で習ってきたことを実際に自分がするとなると、やはり頭で理解はできていても、体で行動に移すことができないなと、今回の原稿読みで改めて実感しました。もっとこれから意欲的に学べていけたらと思っています。

中山真羽アナウンサー

すごく意識しやすい課題をいただいたので、どんどん練習して回数を重ねて、次また新たなステップを踏めるようにひとつずつ頑張っていきたいと思います。

石井晶也アナウンサー

最初に「視聴者の気持ちになって読んでみる」っていうのが新しい発見で、正しく言い切るというだけではなくて、やはりニュースが伝わる、見ている方々にしっかり届くことを意識しようと思いました。

稲井清香アナウンサー

自分が恥ずかしくないように原稿をきれいに読むことや難しい漢字を読めることを大事にしていましたが、そうではなくて、ニュースの本質を視聴者にきちんとお伝えするのが私たちの仕事であって、それを忘れてはいけないなと感じました。

まだまだアナウンサーとしての一歩を踏み出したばかりの新人アナウンサーたち。次回は、中継リポートの実習の様子をお伝えします。

新人研修の様子を放送します

 総合 5月26日(日) 午前11:00〜 放送後はNHKプラスで1週間見逃し配信 ※画像をクリック! 

今回お伝えしたニュースリードや、緊急報道対応、野球中継などの研修のようすは、NHKの広報番組「どーも、NHK」でもご紹介します。新人アナウンサー12人がスタジオに勢ぞろいし、自己紹介や決意表明も。放送後はNHKプラスで1週間見逃し配信されます。

〈「どーも、NHK」の同時配信・見逃し配信はこちらから(2024年6月2日午前11:25まで)

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