”繰り返さない” 子どもを交通事故から守る!
- 2024年04月08日
新学期が始まるこの時期、気をつけたいのが子どもが関係する交通事故。
白鷹町では、保護者が先頭に立って子どもの安全を守ろうとしています。
(山形局記者 西須隼太)
32年前の"あの日"
山形県白鷹町に住む、川井敬一さん(70)です。
川井さんは32年前の4月8日、自宅前の道路で起きた交通事故で、当時5歳だった息子を亡くしました。息子は保育園の年長になったばかりでした。
道路の反対側にいた息子。川井さんが「止まれ」と叫んだものの道路に飛び出し、ダンプカーにはねられました。川井さんが駆け寄り息子の名前を呼びましたが、返事はありませんでした。即死でした。
川井敬一さん
「32年が経過した今でも、あの日を忘れたことはありません。どうして守ってあげられなかったのか。親が子を亡くすというのは、あってはならないことです。あの事故のあと、ずっと苦しい思いをしてきました」
その8年後には、町内で自転車に乗っていた小学1年生がミキサー車にはねられ亡くなりました。
川井敬一さん
「どんなことを言っても、子どもは子どもで、言うことを聞かない。周りの大人たちが見届ける。それが一番大事だと思います」
悲惨な交通事故を"繰り返さない"
2つの交通事故をきっかけに始まった「保護者が子どもを守る」取り組み。
20年以上たった今でも、続いています。
地元の保護者がつくった“子どもを守る”安全マップです。
通学路で交通事故の危険性が潜む場所が赤く示され、「交通量が多い」「道幅が狭い」といった注意点がまとめられています。
ことし3月末、地元の子どもたちと保護者が集まり、安全マップを使って気をつけるべきポイントを改めて確認しました。
この取り組みを支えてきた高橋綱一郎さん(41)。
川井さんの息子のような事故を繰り返してはならないと、引き継いできました。
高橋綱一郎さん
「川井さんの息子の事故は、かなり鮮明に覚えています。それを機に、子どもたちにはそういう思いをしてほしくないと、この地区では交通安全の活動をするようになりました」
高橋さんは、子どもたちを連れて川井さんの息子が亡くなった現場を訪れました。
身近に潜む危険を覚えてもらおうというのです。
交通事故をきっかけに赤色灯や注意喚起の旗が設置されました。道路を横断するときは左右をよく見て、車が来ないか確認したうえで渡るよう、子どもたちにいつも呼びかけています。
高橋さんと子どもたちは、別の場所でも危険なポイントを確認。道路上には「カーブ注意」の表示。
坂道の途中のカーブは、車のスピードが出やすい上、子どもたちからは走ってくる車が確認しにくい、要注意の場所です。
気をつけるポイントを説明しながら親子で一緒に歩くことで、自分ごととして捉えてもらうことができると思います。
男子児童
「道全体が坂になっていて、カーブもしていたので、前から車が来ても見えづらいと感じました。風が強い日は、後ろから来る車の音も聞こえないので、ときどき後ろを振り返るなどして、気をつけることが大事だと思いました」
危険な場所を日頃から確認
高橋さんは、日頃から交通安全を意識することが大事だと考えています。
家族が毎日使う、自宅の洗面所と台所の間に安全マップを貼っています。
この春中学生になった娘と、通学路の危険な場所を繰り返し確認。小学1年生のときから毎日欠かさずに見ていたことで、一度も事故にあうことなく、小学校生活を終えました。
悲惨な交通事故を"絶対に繰り返さない"。
子どもたちの安全を、地域の大人たちが支えます。
高橋綱一郎さん
「親が子どもにしっかり教え、子どもが自分で危険な場所を認識してもらうことが大切。取り組みを通じて交通安全の意識を高め、事故にあわないように遊んだり登校したりしてもらえたら」
子どもの交通事故を防ぐには
子どもたちの交通事故を防ぐためには、どうすればよいのか。
県警察本部交通企画課に取材し、対策をまとめました。
①「交差点・見通しの悪い角は“左右確認”」
子どもは大人に比べて視野が狭いため、いったん立ち止まって左右を確認しましょう。
②「歩道のない道路は“振り返る”」
後ろから走ってくる車には気づきにくいため、ときどき振り返りましょう。
③「危険な場所は“共有”」
通学路やふだん使う道で危険だと思う場所は、日頃から親子で話し合いましょう。
子どもの目線では気づきにくいことや、逆に、子どもでしか気づけないこともあるかもしれません。
新学期が始まるこの時期、通学路やふだん使う道のどこに危険が潜んでいるのか、散歩がてら親子で改めて確認してみてはいかがでしょうか。