ページの本文へ

とちぎWEB特集

  1. NHK宇都宮
  2. とちぎWEB特集
  3. 馬術一家の17歳 「とちぎ国体」で得たもの

馬術一家の17歳 「とちぎ国体」で得たもの

  • 2022年10月13日

栃木県で開催された国民体育大会「いちご一会とちぎ国体」に初出場した広田大和選手。
両親ともに国内トップクラスの「馬術一家」で育った17歳が、地元の国体で得た経験と課題とは。

(宇都宮放送局記者 梶原明奈)

馬術一家の17歳 いざ初めての国体へ

広田大和(やまと)選手は、馬とともに障害物を次々と跳び越え、正確性とスピードを競う「障害馬術」の選手です。ここ数年はジュニアの大会で優勝を重ねるなど、将来を期待されています。
10月の「とちぎ国体」に、栃木県代表として初出場しました。

中央が父・龍馬さん 右が母・思乃さん

大和選手の両親はともに世界で活躍してきたトップ選手で、父親の龍馬(りゅうま)さんはシドニーオリンピックにも出場しています。17歳の大和選手は幼いころから両親の指導を受け、技術を磨いてきました。
ことしの国体は大和選手が生まれ育った那須塩原市が馬術の会場となり、地元の大会で親子3人で優勝することが、一家の目標でした。

大会直前のアクシデント

トレーナーとリハビリをする龍馬さん

大会の1か月前にはアクシデントに襲われました。
龍馬さんが落馬し、鎖骨とろっ骨を折る大けがを負ったのです。本来なら大会の棄権を考えなければならないほどのけがでしたが、龍馬さんは黙々とリハビリを続けていました。

「応援してくれた人たちの分まで頑張らなければいけない。痛いなんて言ってられない」と話す父親の姿に、大和選手は「これからは自分が家族を引っ張る」と決意し、大会に備えてきました。

自分との闘い

大会本番。
トップバッターで出場した母親の思乃(しの)さんが「成年女子二段階障害飛越」で優勝。同じ日に「成年男子トップスコア」に出場した龍馬さんも、痛みを抱えながら優勝して続きました。

一方の大和選手は、最初の2種目で緊張からミスが続き、7位と6位にとどまりました。

あとがない状況で迎えた、最終日の「少年トップスコア」。
両親が見守る中、競技が始まりました。

出だしは好調でした。
難度の高い障害を次々と跳び越え、得点を重ねていきます。
しかし後半に入ると、急に不安を感じたと言います。

広田大和選手
スタートはすごく良かったんですけど、これまでの2種目で失敗を続けてきたので、逆に不安になってしまいました。僕が馬のリズムを崩してしまい、そこから馬がいい状態で跳べなくなってしまいました。

弱気な気持ちが馬にも伝わり、相次いで障害物を落下させてしまいました。
大和選手は得点を伸ばすことができず、結果は5位となり、一家の目標には届きませんでした。

表彰式で大和選手は、時折、笑顔を見せながらも、表情には悔しさをにじませていました。

広田大和選手
馬は能力があるのに、僕が上手に跳ばせてあげられなかった。
親子3人で優勝を目指していたので悔しいですね。

両親の笑顔と涙

長男の表彰式を見届けた両親の表情は、対照的でした。
父親の龍馬さんは、表彰状を受け取った息子に笑顔で大きな拍手を送っていました。

広田龍馬さん
絶対に勝たなきゃというプレッシャーが大きくなりすぎちゃったのかな。「優勝して当然」のようなプレッシャーがあったと思いますが、本当によく頑張った。
ベストを尽くしてこの結果だったのですから、この経験を糧にして、これからどうやって生きていくかが大切です。思ったような成績を収められなかったけど、この経験は人生でかけがえのない財産になると思う。
親子全員優勝は、次の機会に楽しみに取っておきたいと思います。

母親の思乃さんは、大きなプレッシャーと戦った息子の姿を見て、涙を浮かべていました。

広田思乃さん
初めての出場で頑張ったと思います。緊張していたのか、いつもの走りができていませんでした。プレッシャーもあったと思いますが、またたくさんの経験をして、いつか優勝できるように頑張ってほしいです。

“温かい”国体をばねに飛躍へ

会場には、大和選手の中学校時代の同級生も観戦に訪れていました。
馬術を見たのは初めてだったそうです。
同級生に囲まれた大和選手は、照れくさそうでもあり、うれしそうでもありました。

プレッシャーもあったと思いますが、頑張ったなと思います。
初めて馬術を見ましたが、感動して、また見にきたいと思いました。

友達が出場しているのを見るのは緊張しましたが、格好よかったです。
初めて国体を見ましたが会場の雰囲気もよく、いい経験になりました。

広田大和選手
国体は県のチームが一丸となって出場するので、栃木県の選手が活躍したらみんなで喜んで、自分が出るのも応援してくれて、とても楽しく、温かいなと感じました。同級生や知り合いの方々もたくさん見にきてくれて、馬術のことを知ってもらえてすごく嬉しいです。
今回は親子3人の優勝は逃してしまったけど、これからの国体に向けて経験と練習を積んで優勝できるように頑張りたいと思います。

大和選手はこの国体で、緊張への向き合い方や心の保ち方など、貴重な経験を積みました。
一家の団結も強まり、実りの多い大会になりました。
悔しさをばねに、さらなる飛躍を遂げようとする大和選手のこれからに期待したいと思います。

  • 梶原明奈

    宇都宮放送局 記者

    梶原明奈

    宇都宮放送局が初任地。
    休みの日は動物の動画を見て 癒やされています。

ページトップに戻る