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鳥取 市来秋果アナが取材!おでかけアシストツアーとは!?

外に出るきっかけをつくり、社会参加へとつなげるツアーに密着
  • 2023年07月31日

たまには外に出て気分転換を

今年3月から鳥取市で始まったおでかけアシストツアー。お年寄りを中心に、普段家にいる時間が多い人を外出に誘い、一緒に楽しい時間を過ごそうというものです。
 

参加者の2人

晴天の中、公園でおしゃべりを楽しむお年寄り2人。 この日の参加者70代の男性と80代の女性です。 男性は、ここ数年で足腰が弱り、車も運転できなくなったことからなかなか遠出ができていません。 女性も、体力が衰え、買い物にもほとんど行かなくなりました。 この日初対面の2人。3〜4ヶ月ぶりの外出に会話も弾みます。

ツアー主催者 桑田達也さん

ツアーを主催するのは桑田達也さん。 ボランティア団体で数多くの活動を手がけています。
 

ツアーの背景にあるのは…切実な声

桑田さんは、日頃から地域の見守り活動をしています。定期的に同じ地域を歩いて回り、自宅を訪問して生活の困りごとがないか聞き取りを行ってきました。 去年の6月からは、見守り活動と共に半径500メートル以内にスーパーマーケットがない地域の住人を対象に買い物アンケートを始めました。
 

「雪の降る日も暑い日も、買い物袋を持って歩くお年寄りの姿が気になって、なにかできることはないかと思って、まずは実態を知るために始めました。」

今までに得られた回答はおよそ600件。 
 

皆さん、家族に買ってきてもらう、移動販売車を利用する、タクシーで行くなど、どうにかして食料調達できているとわかりました。

自宅を訪問して直接話を聞くうちに、ある課題が見えてきました。

アンケートでは、「週1回のごみ出ししか外に出ていない」、「家から出られない」といった声が聞かれました。
アンケートの対象はお年寄り中心です。 免許を返納したなどの理由で車の無い人は、徒歩、自転車、タクシーなどで買い物に行くしかありません。 買い物に行くだけでも身体的、金銭的負担が大きく、買い物の頻度が週1回などと少なくなったという回答もありました。 買い物を家族に頼んだり、移動販売車をつかったりしている人は、ますます家から出る機会がなくなっているということもわかりました。 
回答の中には 「今はまだ車を運転しているから、買い物に行けるが、免許を返納したらどうなるか不安」という回答もありました。 さらに家から出ないお年寄りが増えている現状に追い討ちをかけたのは新型コロナウイルスだと桑田さんは話します。
 

このコロナの3、4年で、本当に家から出る機会を失ってしまっていると感じました。家にずっといる生活を続けると、寝たきりになるなど健康阻害が出てきます。そういう人たちを一人でも出さない地域を作らないといけないと思い、“外に出られないのなら私が自宅に迎えに行って一緒にお出かけをしよう”と考え、ツアーを始めました。

車で送迎つき!ツアー当日に密着

そうして始められたおでかけアシストツアー
ツアー当日、参加者2人を自宅まで迎えに行きます。 ツアーの行き先は車で20分〜30分の場所。 この日は、参加者の自宅から公園を経由して古民家に行きます。

以前は車を運転してよく出かけていたという男性。運転しなくなった今、行動範囲がぐっと狭まったと話します。

最初の目的地の公園。 日陰にある椅子に座って少し水分補給をします。

参加者の80代女性

晴れて気持ちがいい。前の日からツアーを楽しみにしながら服装を考えていました。今日は暑いから、帽子をかぶってきました。

天気が良すぎるくらい。こんなきれいな空気、ふだん吸うことない。

二つ目の目的地の古民家

公園のあとは、二つ目の目的地の古民家へ。
桑田さんはこの日、暑い中長時間外にいるのは危険と判断し、涼しい場所でゆっくり過ごせるこの古民家を最終目的地に選びました。

おでかけアシストツアーの必需品 お弁当

おでかけアシストツアーでは、目的地で必ずみんなでお弁当を食べます。これは主催者、桑田さんのこだわりです。

みんなで一緒に食事をすることで、心を開くことができる。食には、人の心をほぐし、人と人を繋げる力があると信じて、毎回お弁当は必ず持っていくようにしています。

古民家での食事

囲炉裏を囲んでの食事。 懐かしい雰囲気の中、自然と会話は、幼少期の思い出話になりました。すると、偶然にも参加者2人は、以前近くに住んでいたことがわかりました。一気に心の距離が縮まり、思い出話に花が咲きます。

いいなあ。こうして昔の話ができて楽しい。家ではできないでしょう。

まだまだ話足りない昔話がいっぱいある。こんなふうに、人と話をしたい。話を聞いてあげたい。こうしたことが老人の活力になる。

そんな2人の様子を見た桑田さんは

表情が明るいですよね。迎えに行った時の顔と、連れてきた時では表情が全然ちがいます。

今年3月から試験的に始められた「おでかけアシストツアー」。今まで25回ほど実施され、また参加したいという声が寄せられています。

主催者の桑田さんは

この取り組みがもっといろんな地域でやってもらえたらと思います。家から出られず塞ぎ込んだ気持ちの人に声をかけていくような活動が広がってほしいです。久しぶりに外に出て会話をして、改めておでかけって楽しいなと思ってもらえれば、今度は地域のイベントに行ってみよう、自分にできることをやってみようというように、次の行動に繋がるかもしれません。このツアーが社会参加のきっかけになることを願っています。

ことし(2023年)3月から始められたおでかけアシストツアーは、今はまだ試験的な取り組みで少人数のスタッフで実施しています。そのため、今は限られた人数しか参加できません。
桑田さんは今後、大学生など若い世代にもスタッフになってもらうことで、より多くの、そしてより幅広い年代が参加しやすいツアーにしていきたいと話していました。

  • 市来秋果

    鳥取放送局・アナウンサー

    市来秋果

    令和3年入局。地元鳥取県の地域課題を中心に取材、発信している。

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