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鳴門わかめ 収穫量減少 気候変動に挑む現場は

  • 2023年12月08日

豊かな風味と歯ごたえが特徴の「鳴門わかめ」。
わかめの生産量が全国トップクラスの徳島が誇るブランドもまた、気候変動への対応に迫られています。
海水温の上昇という環境の変化に挑む現場を取材しました。

鳴門わかめ 海水温の上昇で…

漁業者の南谷遊さん(45)は10年前から鳴門わかめの養殖を行っています。
冬の間に成長するわかめの収穫は例年2月上旬からの2か月間ですが、海水温の上昇で春が近づくにつれて品質を保てなくなったといいます。

南谷 遊さん
収穫できる時期がすごく短くなってきている。出漁する日数が減ると、水揚げが減ってくる。毎年、海の環境が変わっていて、おそらくよくなることが期待できない。生産者だけではどうしようもない。」

農林水産省によりますと、徳島県の養殖わかめの収穫量は2021年の時点で約4100トン
1991年のピーク時の約3分の1で、この20年ほどで半分近くに減りました

原因の1つが海水温の上昇です。
県の調査では鳴門沖の海水温は1970年代以降の40年で1℃以上上昇し、収穫最盛期の2月から3月の時期で見ると最大で1.9℃上がりました。

暖かい海でも育つ品種を

急激な環境の変化にどう対応すればいいのか。
県水産研究課の専門研究員、棚田教生さんは暖かい海でも育つ品種を鳴門わかめに取り入れられないかと考え、研究を進めてきました。

成長に強い影響を与えるとされるオスの配偶体を、同じ県内でも太平洋に面した阿南産に変更
春先でも肉厚なわかめを維持できるようになりました。

収穫量減とは別の問題も…

写真提供:徳島県水産研究課

しかし改良した品種にも、5年前から別の問題が生じるようになりました。
鳴門わかめ特有の濃い茶色が色落ちすることが増え、ブランドのイメージに関わる事態になっているのです。鳴門沖の水質改善が進み、海水に含まれる栄養が大幅に減少したことが理由でした。

徳島県水産研究課 棚田教生 専門研究員
「わかめの場合は栄養塩レベルが下がってくると、わかめの葉っぱの色を維持することができなくなる。2020年以降ぐらいは特に色落ちが顕著になってきている。『もうちょっと色をよくしてほしい』と漁師からも要望があった」

そこで棚田さんが始めたのが、色あいを大きく左右するとされるメスの品種改良です
県によると、色落ちを防ぐための取り組みは全国でも珍しいということです。

鳴門産を使うメスの配偶体には濃い色のものを選んで掛け合わせることで、本来の色合いを取り戻しました。

“鳴門わかめ”のブランドを守るために

徳島県はさまざまな産地のわかめの配偶子を長期保存して品種の改良を続けていて、色落ちしない新たな品種は来年2月からの収穫に向けて、地元の漁業者が試験養殖を行う予定です。
気候変動とともに環境の変化は厳しさを増しています。
豊かな鳴門の海が育むブランドを守るための研究は、これからも続きます。

徳島県水産研究課 棚田教生 専門研究員
「今後ますます、わかめ養殖には厳しい環境になっていく。養殖する若い漁師もたくさんいる中で鳴門わかめというブランドを守っていくためにも、私たちは品種の研究を続けていかないといけない」

  • 能智春花

    徳島局 記者

    能智春花

    2012年入局 大分局、長崎局、国際放送局、国際部を経て現所属 

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