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AI時代の『人間力』! 徳島 松茂町 STEAM教育の現場を取材

  • 2023年10月18日

課題解決のために科学や芸術などの複数の教科を横断的に学ぶSTEAM(スティーム)教育。
これからのAI時代を生きる子どもたちへ、松茂町の町を挙げた取り組みを紹介します。

タブレット端末を使って児童たちが取り組んでいるのは、町の魅力を紹介するポスター作りです。
松茂町の小学校で行われている「STEAM教育」の授業の1コマです。

タブレットで町のポスターをデザイン

STEAMとは、科学、技術、工学、芸術、数学の英語の頭文字をとったもので、教科横断的な学びをあらわします。

町ぐるみで取り組むSTEAM教育

徳島県の東側に位置する人口約14000人の松茂町では、令和3年度から、町内にある4つのすべての小中学校でSTEAM教育を導入しています。

松茂町教育委員会 丹羽敦子教育長

松茂町教育委員会 丹羽 敦子 教育長
これから子どもたちはAI時代を生き抜いていくということで、人と協力して何か新しいものを生み出していく力とか、自分が自分の思いをアウトプットする力、『人間力』というものが本当にこれから必要になってきます。そこでSTEAM教育に取り組むことにしました。

松茂町ではSTEAM教育を通して「6つのC」を育んでいきます。
 Collaboration・・仲間と協働する力
 Communication・・伝え合う力
 Content・・学力≒知識と論理的な思考力
 Critical Thinking・・ 批判的に考える力
 Creative Innovation・・想像し、創造する力
 Confidence・・失敗を恐れない気持ち

公教育に民間企業の専門家の力を

「STEAM教育」、実際にはどんなことをしているのでしょうか。
松茂小学校3年生の授業を見せてもらいました。
授業を担当するのは学校の先生と、プログラミングやSTEAMの教室を国内外に展開する民間企業の専門講師です。講師が各学校を訪れ、1年間のテーマにそった授業計画を学校の先生とともに考えます。

学校の先生と民間の講師が内容を話し合って一緒に授業を進めていく
STEAM教育を扱う会社 ヴィリング 中村一彰 代表

公教育に民間企業が関わるメリットはどんなことですか?

STEAMの専門講師 中村一彰さん
学習指導要領ではなかなか使わないような知見を提供できるというのがあると思います。プログラミングもそうですが、デザインの考え方とか、アンケートのとり方、データ分析のしかた、PowerPoint、最近ではCanvaというのがあるんですけど、その使い方、そういった新しい知見を提供できます。また、われわれは授業案や教材も作ることができるので、先生方の負担をなるべく少なく新しいことに取り組めます。

課題に向けて自ら考え、実践する

ことしのテーマは「いいね松茂 大好き!私の町」。町の良さを知り、それを伝えるという目標を、複数の教科の学びを生かして達成します。

1学期、社会の時間に町探検をして、町の好きなところを見つけました。

さらに、国語の時間で、町の良さを表すキャッチコピーを作成。

2学期、総合学習の時間で町の魅力を発信するポスターの制作に挑みます。 

文字の太さ 写真の配置 どうすれば見やすくなるかな?

ポスターは手描きではなく、タブレットを使って、デザイン用のアプリを操作します。
STEAMのT、Technology(技術)の活用です。

アプリの操作方法や、色使い、キャッチコピーの配置などについては、専門の講師がわかりやすく教えています。

講師

文字を入力して、エンターを2回押したら検索できます。
色がありすぎると見づらくなるので要注意。

色使いやイラストのレイアウトなどは、STEAMのA Art(芸術)の要素。
ある男子児童は、マツバギクが紫に合わせて、イラストや背景も紫にしたり、

マツバギクの色に合わせて紫で統一感を

ある女子児童は、園児が読めるように漢字をなくしたり、各々の感性で取り組んでいました。

園児を意識してひらがなに

課題解決のために必要な知識を得る

さらに、キーボードを使った文字入力にはローマ字の知識が必要です。ローマ字は国語で習いますが、3年生は習い始めたばかり。まだ慣れていないこともあり、児童からは「文字入力が難しい」という声も聞かれました。それでも、「打ちたい言葉がある」ということが、ローマ字学習のモチベーションになるということです。

必要に迫られることが学習のモチベーションにも
男子児童

楽しかった。入力するのがおもしろかった。

「ポスターで町の良さを伝える」という目的の達成のために、社会、国語、芸術など、複数の学びがつながっていきます。

友だちと教え合ったり意見を言い合ったり
松茂小学校 矢野由紀子 教諭

松茂小学校 矢野由紀子教諭
子どもたちが楽しくわくわくしながら取り組んでいるなって感じます。国語や算数だと正解があるので教師側も正解を持っていてそこに導いていくことがほとんどですが、STEAM教育だと正解のない答えに向かって子どもたち自身が課題を作ってそれを追究していくっていうそのあたりが大きく違うと感じます。普段、国語や算数の授業ではあまり目立たないような子も、STEAMの授業ではとても生き生きと活動しています。

私たちは なぜ学ぶのか

松茂町教育委員会 丹羽敦子教育長

松茂町教育委員会 丹羽敦子教育長
子どもたちには、自分をあきらめない、自分も何かやれるんだ、幸せになるために生まれてきたんだ、っていうこと。自分の将来に対して夢や希望が持てて、『なぜ学ぶのか』、『自分はこうありたいから学ぶんだ』っていう、そんなことを伝えていきたいなと思います。

遊びと学びはつながっている

どうすればSTEAM教育の考え方を取り入れることができるか、講師の中村さんに伺いました。

STEAMの講師 中村一彰さん
国語 算数 理科 社会などの教科と同じレイヤーでSTEAMがあるのではなく、STEAMは教科横断的な知識を活用しながら何かを作りあげるプロジェクトだと考えていただくといいと思います。
STEAM教育を学校に取り込もうと思った時に、何かを新しく追加しようと思うと時間がないんですよね。そうではなく総合学習などですでに取り組んでいる活動の一部を、ここは紙ではなくてパソコン使いましょうとか、プログラミングを活用してアニメーション作ってみましょうとか、そういうご提案をすることで、それならできそうだなってお話が進んでいくことが多いです。今ある活動にSTEAMをONしていくっていう考え方ですね。

おうちでは、例えば料理の手伝いをするとか、外遊びをするとか、家族でキャンプに行くとか、そういった活動はとてもいいと思います。天ぷらの下に紙を敷くときに、四角いままよりも三角に折った方がちょっとかわいく見えるとか、それも少しずらして折ったら見栄えがいいな、と。そういったことも図形の概念を体験することになります。自然のものに触れること、何かの作業をする、創作活動をする、それだけでSTEAMにとても近い学び体験になっていると思います

遊びと学びはつながっています。親側に「今これをやっているから、これを学び取ってほしい」という期待が思い浮かぶと、子どもの反応が期待と違った時に、「いやこうでしょ」って修正したくなると思うんですけど、長い時間をかけていろんなことを豊かに体験していくことが貴重な学びになる、というスタンスで見守るといいかなと思いますね。

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