潜入!徳島初のウイスキー蒸留所 日本酒・焼酎の酒造会社が挑戦
- 2023年06月23日
徳島県内では初めてのウイスキー蒸留所が、阿波市土成町に完成しました。目指すは世界が酔いしれる「徳島ならではの味」。「原酒」作りが盛んに行われている現場に潜入です。
ウイスキー蒸留所内はお酒の甘い香りが漂います。日本酒や焼酎などを作る酒造会社の敷地の中に蒸留所はあります。もともと焼酎を保管していた倉庫を改装して蒸留所にしました。
ここで作られた原酒です。ウイスキーというと茶色いイメージですが無色透明です。これを3年以上熟成させると琥珀(こはく)色のウイスキーになります。
徳島のような暖かい地域は熟成が早く進むため、その早い熟成に負けない強い風味、強い香りの原酒に仕上げることを目指しています。
なぜ、今、ウイスキーなのか。
人口の減少、若者の酒離れ、さらに、コロナ禍などもあって、酒類の消費量は減少傾向です。
令和3年度までの数字です。この7年間で見ても75万キロリットル以上減少しています。このまま何も手を打たなければ、先細りは目に見えている。事業を多角化しようと目を付けたのがウイスキーでした。
さらに、近年「ジャパニーズウイスキー」は世界でも高い評価を受けています。
「埼玉・秩父の蒸留所のウイスキーが4年前海外のオークションでおよそ1億円(54本のセット)で落札された!」というニュースが話題になりました。
ウイスキーと言うとスコットランドや北海道など寒い地域で作っている印象がありますが、最近では鹿児島や沖縄など暖かい地域でも作られるようになりました。
ならば、徳島でも挑戦しようと「地ウイスキー」造りに着手しました。
目指すは土成の風土が育てる、徳島ならではの味です。
これはサンプルですが、この大麦の麦芽が原料です。これを粉砕して、お湯と一緒にかき混ぜ、その後、酵母と混ぜて発酵させたものを蒸留すると原酒ができます。
これが蒸留器。蒸留前はアルコール度数8%前後です。蒸留1回目でアルコール度数が20%以上に、2回目で度数が60%以上になり「原酒」の完成です。
この蒸留器には徳島らしいウイスキーを作るための工夫があります。徳島のような暖かい地域では熟成が早いため、強い風味、強い香りの原酒を作ろうとしていると紹介しました。重い酒の質、麦芽の風味が濃い、かつ、アルコールの香りが強い原酒を目指しています。
工夫したのが蒸留器の「ヘッド」部分です。
ヘッド部分がくびれているものは軽い酒の質。ストレート型だと重い酒の質。さらにその先、「ラインアーム」が長くて上向きだと軽い酒の質。短くて下向きだと重い酒の質になるとされています。
そこでこの蒸留所ではヘッドをストレートに、ラインアームを短くやや下向きにして重い酒の質、つまり濃い風味、強い香りになるよう蒸留器を特注しました。
仕上げた原酒を試飲すると麦の甘い風味があります。一方で、アルコール度数が60%以上ですから、かなりずっしりと重みは感じました。
この原酒が土成の風土の中でどんなウイスキーに育つのか楽しみです。
ウイスキーの製造を任された一人が丸山恵(まるやま・めぐみ)さんは、「この1年しっかりデータを取って、狙い通りのものを作れるようにしたい。」と抱負を語ってくれました。
こうしてできた原酒を樽に詰めて熟成させます。今月、この蒸留所で初めて原酒を樽に詰める作業が行われました。
樽はアメリカから輸入されたもので、1度バーボンを仕込んだ中古品です。新品だとバニラのような香りが強く出過ぎてしまうため、あえて中古品を使います。
樽1つにつき200ℓの原酒を詰めます。こちらでは年間70樽以上は仕込む予定です。
この倉庫には空調はありません。そのまま、土成の気候、風土の中で3年間熟成されてようやくウイスキーの完成です。
丸山さんは「華やかな香りで、多くの人に受け入れられやすい、飲みやすいウイスキーにまずは仕上げたい。やるからには海外で勝負できるものを作りたい」と力強く語ってくれました。
どんな徳島らしい「地ウイスキー」ができるのか? 答えは3年後。楽しみにしましょう!