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小豆島の伝統 農村歌舞伎 最大の危機に全国から支援を!

  • 2023年09月14日
舞台が倒壊 最大の危機

小豆島の中山地区で、江戸時代中期からおよそ300年続く農村歌舞伎。その舞台が、老朽化により倒壊の危機に直面しています。「伝統を守り、次の世代へつなぎたい」。地域の人々が立ち上がりました。

自然豊かな地区の伝統 農村歌舞伎

 

中央奥の木に囲まれているのが「中山の舞台」

日本の原風景が残る、自然豊かな里山。およそ100世帯260人が暮らす中山地区です。棚田に囲まれた神社の境内にあるのが「中山の舞台」。国の重要有形民俗文化財にも指定されています。

去年10月に上演された中山農村歌舞伎

この舞台で上演されている「中山農村歌舞伎」。江戸時代中期からおよそ300年続く伝統芸能です。役者も裏方も、すべて地区の人々が担います。稲の収穫が終わる毎年10月に、五穀豊穣のお礼として神様に奉納します。

危機!柱の腐食にシロアリ被害

 

改修工事中の舞台

ところがこの「中山の舞台」、いま最大の危機に直面しています。

建てられて200年以上が経つ舞台は、いつ倒壊してもおかしくない状態。専門家には「半壊」と診断されました。中山自治会の井口平治会長は、建物の傾きやねじれで正面の扉も閉まらなかったと話します。

腐食が進んだ柱

はりの補強や古い木の取り替えなど、現在改修工事が進んでいます。総事業費はおよそ8600万円。中山地区では、このうち補助金を差し引いた1000万円ほどを負担しなければなりません。しかし工事が進むにつれ、さらなる傷みが次々と見つかります。

井口会長

柱の元が腐って宙ぶらりんになっていたり。そこまでとは思っていませんでした。

特に舞台の下、「奈落」は想定外の連続でした。
シロアリ被害や柱の腐食。改修か所が増えたことで、費用はさらに膨れ上がりました。

井口会長

まだまだ心配です。相談しながら進めていかないといけません。

増える改修費用 クラウドファンディングで支援募る

クラウドファンディング プロジェクトページ

そこで自治会の人たちは、「クラウドファンディング」に取り組むことにしました。全国から工事費用を募るのが狙いです。

谷久智己さん 中心メンバーのひとりとして活動

活動のメンバーのひとり、谷久智己さんです。井口会長から声をかけられたことをきっかけに、中心となって取り組んでいます。中山で生まれ育った谷久さん。農村歌舞伎では、7,8年ほど前から舞台師として演出や大道具を担当してきました。

谷久さんが力を入れているのは、「こまめな情報更新」。トラック運転手の仕事の合間を縫って、クラウドファンディングの活動報告や打ち合わせの様子をホームページやSNSなどで頻繁に発信しています。

谷久さん

とにかく情報を出すことが大事だと思ってます。ちょっとしたことでも出していれば見てくれる人がいるかなと。

さらに、支援してくれた人から寄せられたすべての応援メッセージに返信。メンバーと手分けしてすばやく対応しています。谷久さんは、小豆島とのつながりや支援の理由などがつづられたコメントが特に嬉しいと話します。

谷久さん

クラウドファンディングには、過疎化が進む小さな地区の取り組みを世間の人に知ってもらいたいという目的もあったので、それはなんとか達成できたかなと思います。

丁寧な発信 その成果は?

自治会館で行われたミーティング

8月中旬のある日、メンバーが自治会館に集まりミーティングを行いました。

一緒に取り組むクラウドファンディング運営会社の担当者は、谷久さんたちの取り組みを「支援者との縁をつなぐきっかけだ」と評価。

さらにこの日のミーティングでは、700万円の支援が集まったことが報告されました。
谷久さんたちは、「支援者とのつながり」が実を結びつつあると感じています。

谷久さん

とにかくほっとしました。とりあえずここまで来ないことには先の話もないので。

多くの支援集まり目標達成

最終的に1200万円以上の支援が集まりました

そして、8月27日の深夜、目標の1000万円を達成しました。締め切り日より4日も早い達成です。
最終的には、東京や大阪など県外も含む500人以上の人から合わせて1200万円あまりが集まりました。

谷久さんたちは、クラウドファンディングの返礼品の準備を進めながら、引き続きSNSやホームページを通じて活動報告を行っていく予定です。

谷久さん

(舞台の改修は)今やらないと、先延ばしにすればするほどできなくなってきます。300年続いてきた農村歌舞伎を止めるわけにはいかん、それだけの思いでずっと続けてきました。ここで止めるどころか、もっと先にどんどん続けていかなければいけないと思っています。

新しい舞台の完成予定は来年3月。

“伝統文化を守り、次の世代へつなげたい”。中山地区の人々の挑戦は続きます。

  • 内 水吟

    高松放送局 記者

    内 水吟

    2023年入局。
    警察や司法取材を担当。
    小豆島が好きで、学生時代に農村歌舞伎を見に行ったことも。

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