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増える外国人観光客の防災 千葉のホテルの避難訓練に密着!

  • 2023年11月17日

街なかで、再び外国人観光客の姿をよくみかけるようになりました。さまざまな面でインバウンドの対策が進められていますが、「インバウンドの防災が課題なので、訓練をしたい」。こうした声がNHKに寄せられ、取材をすることになりました。
(アナウンサー 安藤佳祐)

訓練は外国人観光客を想定

訓練は千葉県の旅館組合と千葉市のホテルが共同で行いました。
このホテルは部屋数およそ100。羽田空港と成田空港の双方にアクセスがよいということもあり、外国人観光客の利用も増えているといいます。

総支配人 伹野智尚さん
「通常は災害時の誘導は日本語で行っていました。火災など避難誘導が必要なことが起きた際、お客様の命を守りながら、スムーズに避難誘導ができるか、今の課題です」

今後に生きる対策につなげたいと話す総支配人。
そこで、千葉県内の大学や専門学校に通う外国人留学生、およそ30人に協力してもらうことにしました。
想定は「深夜の火災」そして「避難誘導」です。
大規模なビル火災は、日本では非常にまれです。しかし、いっときビルで火災が起きると、炎や煙による被害だけでなく、混乱した人が殺到して群集事故のようなことも起きかねません。初期消火だけでなくどう適切に避難誘導できるかが、非常に重要なのです。火災からの避難に詳しい東京理科大学の関澤愛教授にも参加してもらい、訓練を見た上でアドバイスをしてもらうようお願いしました。

実際の訓練では…

訓練はホテルの8階から火が出て、燃え広がったという想定です。
まず、火災報知器が鳴り、確認した従業員は日本語と英語の両方で館内放送をしました。

お客様にご案内します。ただいま火災報知器の警報が鳴りました
Just now a fire alarm has been activated in room 825

ふだんは日本語でしか放送していないということですが、訓練を実施するにあたってホテルでは英語の館内放送を自分たちで準備しました。

仮眠中だったという設定のスタッフがヘルメットと消火器を携え、現場に急行。
初期消火を試みたものの、炎が燃え広がっていったという想定で、宿泊客の誘導を開始しました。

「火事だー 火事だー 逃げてください! Fire, Fire, Escape! 」
英語の呼びかけも、今回考えました。
なるべくシンプルなものにして、ジェスチャーも加えました。
観光客役の留学生、多くは指示通りの避難ルートに向かいますが…

訓練では「不測の事態」も

非常階段に向かい、火元に近い部屋を通ってしまう人や、エレベーターに乗ろうとする人が出てしまいました。「どこに、どのように逃げるのか」を伝えることも、火災からの避難には重要だと感じました。エレベーターに乗っていた人も含めて、非常階段へと誘導しました。

しかし、今度は非常階段で足をくじいて座り込んでいる人が。
スタッフがすぐさま駆け寄り、話しかけます。
「大丈夫ですか? Are you OK?」

肩を貸せば歩けると判断し、一緒に避難することにしました。
関澤教授によると、けがの状況がひどく、避難階段の安全が確認できている場合、救急隊が来るまでその場にとどまってもらうという判断もあるそうです。

留学生からは高評価 見えた課題も

全員無事に避難を終え、訓練を終えるまで、出火確認からおよそ10分でした。
今回、スタッフの人たちが考えた呼びかけやジェスチャー、参加した留学生に聞いてみるとおおむね好評でした。

参加した
留学生

手順はとてもすばらしかった。

参加した
留学生

指示がはっきりしていて、よかったです。

スタッフの方にも聞いてみると…

ホテルの
スタッフ

別の場所から避難しようとする人もいて、そういった方を誘導するのに少し時間がかかってしまいました。

ホテルの
スタッフ

日本の言葉がわからない人に対しての対応になると、自分自身慌ててしまう部分があると感じて、とても勉強になりました。

さらによくなるにはどうしたらよいか聞いてみると、参加者からは、「外国語の表示をもっと増やした方が良い」という指摘がありました。

確かに、各階の案内板をみると、非常口や、現在地などの表示は日本語のみ。
日本の大きなホテルでは、避難階段など、避難の手段が2か所設けられている「2方向避難」ができるようになっています。関澤教授は、あらかじめ表示を外国人観光客にもわかるようにしておき、事前に説明することも大事だと指摘していました。

東京理科大学 関澤愛教授
「ホテルは十分な対応をされていたと思います。一方で、火元のフロアに行ってアナウンスする人だけでなく、館内放送では『避難階段は安全な状態で、まずは階段の中に逃げ込んでください』とか、お客さんに対して安心させるようなメッセージを発することも非常に大事かなと思います」

取材を終えて

今回この訓練を取材して発見したことのひとつは、ジェスチャーでの意思疎通もかなり有効だということでした。
訓練に参加した留学生の皆さんの多くも、スタッフのジェスチャーでの誘導がとてもわかりやすかったと話していました。英語などの語学力ももちろん大事ですが、「何かを伝えたい」という思いは言葉の壁を超えるものなのだなと実感しました。

  • 安藤佳祐

    アナウンサー

    安藤佳祐

    2014年入局。山口放送局や徳島放送局を経て現所属。これまで河川の防災や障害者福祉を取材。趣味は筋トレと料理。子育てに奮闘中。

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