首都圏ネットワーク

  • 2021年9月14日

水害の危険繰り返す鬼怒川 命を守るための3つのポイント

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首都圏各地を流れる川のリスクをお伝えする「かわ知り」。    
今回は、栃木県から茨城県を流れて利根川に注ぐ鬼怒川です。    
鬼怒川の堤防が氾濫し大きな被害を出した6年前の関東・東北豪雨は、茨城県常総市に被害が集中したことから「常総水害」とも呼ばれています。    
鬼怒川の命を守るために知っておきたいポイントをまとめました。    
(水戸放送局/記者 田淵慎輔)

6年前に大規模水害の後も危険が 鬼怒川

鬼怒川は栃木県日光市が水源で、栃木県から茨城県の南西部を流れ、利根川に注ぎます。    
流域の自治体は上流から順に、    
栃木県が日光市、塩谷町、宇都宮市、さくら市、高根沢町、真岡市、上三川町、下野市、小山市。    
茨城県が筑西市、結城市、下妻市、八千代町、常総市、つくばみらい市、守谷市で、茨城県内では常総市などで川沿いに多くの住宅が集まっています。

鬼怒川で多くの人の記憶に新しいのが6年前の関東・東北豪雨だと思います。    
この豪雨で常総市の堤防が決壊、ほかにも7か所で水が堤防を越え、鬼怒川沿いでは常総市で2人が死亡、13人が災害関連死に認定されています。    
さらに住宅およそ1万棟が浸水し、逃げ遅れて救助された人は4000人以上にのぼりました。

ひとたび水害が起きると大きな被害が出る鬼怒川。    
関東・東北豪雨の被害をきっかけに、堤防は最大で1.4メートルかさ上げされました。

しかし、おととしの台風19号でも堤防の高さに迫るほどまで増水し、氾濫の一歩手前まで危険が迫っていました。

国土交通省 下館河川事務所の担当者    
「もし堤防が改修されていなかったら、氾濫が起きている水位だった。6年前と同じ程度の危険な状態で、かなりの危機感を持って対応した」

年を追うごとに豪雨災害が激しさを増しているいま、想定を超える水害はいつ、どこで起きてもおかしくありません。    
鬼怒川のように数年前に大きな被害を受け、新しく大きな堤防が完成したとしても決して安心はできないのです。    
私たちは鬼怒川の水害から命を守るために、どんなことに気をつければいいのでしょうか?

命を守るポイント(1)国道50号バイパスより南側

鬼怒川には、川の流れが大きく切り替わる場所があります。    
それが水戸市と前橋市を結ぶ国道50号のバイパスです。    
ちょうど、鬼怒川が栃木県から茨城県に入るあたりで川とバイパスが交差します。

ここより上流の栃木県側では、鬼怒川は広い川幅をゆるやかに蛇行していきます。    
一方で、国道のバイパスを越えた先からは堤防から対岸の堤防までの幅が狭まっていき、鬼怒川の水は堤防の間に押し込められるようにして下流を流れていきます。

さらに、国道50号線バイパスを境にして流れの傾斜も変わります。    
上流側では急な傾斜を流れていますが、下流側では緩やかな流れになっていくのです。    
このため大雨が降った場合、上流側では水が勢いよく流れて堤防が削られるなどのリスクが高いのに対し、流れ込んだ水が流れの遅いところに入ってくるため、下流側では水が一気に集まって水位が上がりやすくなっています。

下流からは上流の水位を確認して

このため、下流に住む人たちが気をつけたいのは、上流の栃木県側の水位です。    
見るべき場所は塩谷町の「佐貫観測所」と、宇都宮市の「石井観測所」。    
関東・東北豪雨やおととしの台風19号のデータから、佐貫観測所で「水防団待機水位」を超えたとき、石井観測所で「氾濫注意水位」を超えて「避難判断水位」に迫ったときには下流の常総市などで氾濫の危険性が高まるといいます。

また、下流ではこれらの上流の観測所で水位が上がってから遅れて、水位のピークがやってきます。    
おととしの台風19号では10時間から14時間ほどの時間のずれがありました。

早めに上流の水位を確認し、水位が高くなってきたら迷わずに避難することが大切です。

大雨が予想されるときには、国土交通省のウェブサイト「川の防災情報」https://www.river.go.jp/    
NHKのニュース・防災アプリでリアルタイムの水位を確認するようにしてください。

命を守るポイント(2)隣の小貝川も見て

鬼怒川の近くに住む人には、鬼怒川以外にも注意してほしい川があります。    
それが小貝川です。

鬼怒川の東側を並行するようにして流れる一級河川の小貝川。    
小貝川も昭和61年に氾濫し大きな被害が出ています。

2つの川に挟まれた地域は土地が低く、なかには住宅が集まるところもあります。    
鬼怒川と小貝川が同時に危険な状態になった場合、この地域に住む人たちは逃げ場がなくなってしまいます。

大雨の時には小貝川の上流である栃木県真岡市付近の雨や、「三谷観測所」の水位も確認しておきましょう。

命を守るポイント(3)自分の“逃げ時”を知ろう

これまで注意して見てほしい水位観測所などをお伝えしました。    
では皆さんは、いつ上流の水位や雨の量を確認するのか、いつまでに・どこに避難をするのか、いざというときに実際に行動に移せる自信がありますか?

こうしたことをあらかじめ決めておくのが「マイ・タイムライン」です。

平成29年撮影

6年前の水害をきっかけに常総市内で始まった取り組みで、住民ひとりひとりが事前に「自分だけの避難計画」=マイ・タイムラインを作っておくというものです。

避難を終える時からさかのぼって、上流の水位や雨の状況をどこで、どうやって確認するかなどをあらかじめ決めておきます。

マイ・タイムラインを作るときには、「数日前には避難する時の持ち物を準備しておく」、「緊急速報メールが届く時までに避難所に逃げる」など具体的に行動をイメージしておくことが大切です。

下館河川事務所は、出水期を迎えた今こそ、マイ・タイムラインを作成して備えてほしいとしています。

下館河川事務所 青木孝夫 副所長    
「マイ・タイムラインを作れば、いつ避難すべきか、いつ行動を取るべきかということが分かります。その上で、いかに水害を“自分ごと”として考えるかを大切にしてほしい。鬼怒川沿いは新しい堤防ができて安心とは思わずに、堤防ができていても避難すべきときには早めに避難してほしいと思います」

鬼怒川のかわ知り 3つのポイント

この記事では以下の3つのポイントをお伝えしました。

繰り返しになりますが、新しい堤防ができたからといって油断することはできません。    
鬼怒川の堤防は「6年前と同じ程度の水害にも耐えられるようになった」とされていますが、ただ、より多くの水に耐えられるということは逆に言うとひとたび氾濫すれば、より多くの水がより高いところから流れ込んでくる可能性があるということです。

想定を超える水害は必ず起きます。    
6年前の関東・東北豪雨で被災した人からは「まさか鬼怒川が決壊するとは思わなかった」「小貝川が危ないと思ってそっちを注意して見ていたら、背中のほうから鬼怒川の水があふれてきた」という話を繰り返し聞きます。    
想定外の水害、予想外の水害は起きるものだということを忘れずに、上流の水位の見方を確認しておくなど、いまできる備えを進めてください。

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