ページの本文へ

  1. 首都圏ナビ
  2. 埼玉WEB特集
  3. ハラールの大型複合施設を新たな交流拠点に 埼玉・八潮

ハラールの大型複合施設を新たな交流拠点に 埼玉・八潮

  • 2023年06月13日

さまざまな国や地域の人たちが数多く住む埼玉県八潮市。ことし3月、イスラム教を信仰する“ムスリム”と呼ばれる人たちのためのフードコートとスーパーマーケットを兼ねた大型複合施設が誕生しました。
お互いの文化を理解することが、外国人が暮らしやすい未来につながるー」、施設にはこんな思いが込められています。

(さいたま局/ディレクター 池端祐太郎)

ハラールの大型複合施設

八潮市の周辺には中古車のオークション会場が多く、1990年頃から中古車の輸出を手掛けるパキスタン人が移り住むようになりました。イスラム教を信仰するパキスタンの人たちが苦労するのが食事です。豚肉やアルコールを含む食品を食べることが禁じられているほか、鶏や羊などの肉でも、イスラムの教えに沿った方法で加工されていなければ食べることができません。こうした食材を「ハラール」といいます。

施設には、ムスリムの人たちに安心して食事を楽しんでもらうためのハラールのフードコートがあります。パキスタンの炊き込みご飯「ビリヤニ」や、マレーシアの焼きそば「ミーゴレン」のほか、ラーメンやハンバーガー、麻婆豆腐や餃子なども提供されています。ラーメンの出汁にはハラールの鶏や魚粉、麻婆豆腐や餃子の具にもハラールの鶏のひき肉が使われています。

フードコートの隣にあるスーパーマーケットには、羊肉のマトンやレトルト食品など、日本のスーパーではあまり目にしないアジア各国の食材が並んでいます。もちろんすべてがハラールです。 さらに、女性が頭を覆う「ヒジャブ」やパキスタンやインドの民族衣装なども販売され、ムスリムの人たちの暮らしに必要なさまざまなものが揃っています。

この大型複合施設を経営しているのは、パキスタン出身で日本国籍を取得した味庵ラムザンシディークさんです。長い日本生活のなかで、自身がこれまで感じた不便さや暮らしづらさを少しでも解消したいと考えていました。 

「ハラールの食べ物をたくさん揃えることで、日本人と同じように、我慢することなく好きなものをお腹いっぱい食べてほしいという思いでこの施設を作りました。家族そろって来てほしかったので、大きな駐車場も作りました。」
(味庵ラムザンシディークさん)

キーワードは“日本流”

施設で働くスタッフの出身はパキスタンやマレーシア、タイ、インド、ネパール、バングラデシュ、そして、日本などさまざまです。このため、勤務中の共通言語は日本語です。また、言葉だけでなく仕事の進め方も日本流を取り入れることで、みんなが仲良く仕事ができる雰囲気がつくられています。

「性格や育ってきた文化も違うので、スタッフ同士で意見が食い違うこともあります。そんなときは日本の生活が長いスタッフが率先して声をかけるようにしています。“困っている人がいたら助ける”という昔ながらの日本の助け合いの精神を見せることで、コミュニケーションを円滑に進めています。」
(店長のアスリさん)

日本人も外国人も集える施設に

シディークさんは、今、「チャレンジキッチン」という新しい取り組みを始めようとしています。自由に使えるキッチンスペースを施設に作り、スタッフ同士でお互いの料理のノウハウや経営を学んだり、これからムスリム向けの飲食店を経営したいという人たちが料理の腕試しをしたりする場にしたいと考えているのです。

チャレンジキッチン

施設を経営するうえで欠かせないのが地域とのつながりです。 シディークさんは、地域の子どもにも気軽に来てもらおうと、日本薬科大学の学生たちと協力して子ども向けのカレーを開発しました。 5月上旬に開かれたカレーの無料試食会には100人以上の外国人や日本人が集まり、新たな交流が始まるきっかけになりました。

「子どもでもスパイスの効いたカレーを食べられるように、マンゴーで甘みを出しました。 地域の特色も出したかったので、八潮市特産の小松菜も使っています。」
(日本薬科大学の皆さん)

「子どもの頃から日本人も外国人も関係なく交流してお互いの文化を理解することが、外国人が暮らしやすい未来につながると思っています。八潮市を拠点に外国人と日本人の交流が活発になるよう、これからも積極的にイベントを開いていきたいです。」
(味庵ラムザンシディークさん)

  • 池端祐太郎

    さいたま放送局 ディレクター

    池端祐太郎

    2017年からさいたま局。埼玉県出身。土地勘をいかして、埼玉県全域を熱心に取材

ページトップに戻る