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外国人増加の陰で 不足する日本語教室 埼玉

  • 2023年5月29日

地域の日本語教室を知っていますか?
日本で働く外国人や、その家族が通っていて、その数は、全国で1300あまり。多くが市民ボランティアなどの手で、無料もしくは教材費程度の低額で開かれています。外国人の数が増え、その必要性が増す一方、課題も浮かび上がっています。

さいたま局 藤井美沙紀記者

外国人急増でボランティアが足りない

川口市にある日本語教室

埼玉県川口市にある日本語教室です。通うのは来日してまもない中国や東南アジアなどからの外国人です。
講師を務めるのは、地域のボランティアです。多くが地元の住民で、比較的年齢層が高くなっています。なかには大学生や、日本語が堪能な外国人が教えているケースもあります。講師は、日本語を教えることはもちろん、日本の文化や行事なども紹介します。取材に訪れたこの日は、講師に日本地図を見せてもらいながら、都道府県の特産品について教えてもらっている子どもたちがいました。

複数の生徒の指導にあたる講師

こちらの日本語教室、以前は、講師1人に対して生徒1人のマンツーマンで対応できましたが、今は2人以上の生徒を1人の講師が見ることが多くなりました。入国制限の緩和を受けて、去年の夏頃から利用者が急増したためです。希望者は増え続けていて、5月には新規の受付を停止しました。

日本語教室を運営する団体 林一廣代表
「ほとんど毎日のように、来たいという電話があるんですけど、なかなか受け入れ体制が整わず、受け入れられません。もうボランティアだけでは厳しいのかなという感じがしています」

日本語教室って?

地域の日本語教室は、多くが市民のボランティアなどの手で、無料もしくは教材費程度で開かれています。このため、留学生などが通う大学や日本語学校とは異なり、労働者やその家族など、立場や国籍もさまざまな人たちが利用しています。

文化庁の文化審議会は、日本語教室について「日本語に通じない外国人にとって、日本語の勉強だけでなく、日本社会へつながる居場所としての役割も持っている。生活上の心配事の相談や地域住民との日本語を介したふれあいを通じて、少しずつ地域社会になじみ、社会参加に向かえるよう、日本社会側との調整を行う場でもある」としています。

地域の日本語教室は、日本語だけでなく、日本の文化や生活習慣を学んだり、地域社会に住む人たちと交流をしたりと、さまざまな役割を担っています。

「日本語教室、町に1つもない」

埼玉県伊奈町に住む、インドネシア人のムハマド・ソレックさんです。
祖国に家族を残し、自動車関連会社で技術者として働いています。
伊奈町にはおととしから住み始めましたが、役場に問い合わせたところ、町には日本語教室が1つもないと告げられました。

ムハマド・ソレックさん
「困ることがあったら誰にききますか?それはいないから、我慢しかないね」。

ソレックさんは買い物の際には食品の表示の確認を欠かさないという

イスラム教徒のソレックさんを困らせたのは、日々の食材の買い物です。
豚肉などを食べることが禁じられていますが、原材料を理解できないことがたびたびあったといいます。

ムハマド・ソレックさん
「豚のこと入っているか確認して、豚が入っていたらもう買いません。難しい。全然読めないから」

ソレックさんの元に届いた入院費用の助成に関する文書

さらに、ソレックさんを悩ませたのは、自治体からの通知文書です。コロナで入院した際の費用を助成する内容でしたが、まったく理解できなかったといいます。会社の同僚も外国人ばかりで、相談しても分かりませんでした。

ムハマド・ソレックさん
「住民票とか、全部わからない。読めないから。本当に困ることです」

ソレックさんが見せてくれた通知文書には、住民票や世帯調書などの7つの書類を提出するように書かれていましたが、日本人でも苦労しそうな手続きだと感じました。

“空白地域の在留外国人”埼玉は2番目に多く

文化庁の調査結果

日本語教室がない地域は“日本語教室空白地域”と呼ばれています。文化庁が去年公表した調査によると、空白地域は、全国の自治体で、877か所。空白地域に住む在留外国人の数は、17万8000人あまりに上ります。
このうち、埼玉県の場合、2万2000人あまりに上り、北海道に次いで全国で2番目に多くなっています。

念願の日本語教室 開設

去年9月に開設された伊奈町の日本語教室

伊奈町では去年9月、町に日本語教室がないことを知ったボランティアが役場に相談し、教室を立ち上げました。ソレックさんも、すぐに通い始め、必要な日本語や手続きを教えてもらえるようになりました。

講師に教わるソレックさん

ムハマド・ソレックさん
「いろいろな日本語、日本の文化も自分が分かるようになってよかったです。これからも来ます。一生懸命がんばりたいと思います」

伊奈町の日本語教室を運営 山本安津子さん
「ふだんの生活、日常の生活でいろんなことがあると思うので、お互いに協力しあったり、つながっていける場、仲間になれる場になるといい」

“外国人支援に関心を”県の取り組み

埼玉県が開催した研修

日本語教室を支える市民ボランティアを養成するため、埼玉県も研修に力を入れ始めました。心構えや外国人への接し方を学んでもらい、ボランティアに参加しやすくするのがねらいです。

研修に参加する久保三智代さん

川口市の久保三智代さんです。こうした研修をたびたび受けてきました。川口市は、在留外国人が次第に増えていて、全国の自治体で最も多くなっています。川口市に住む外国人の数は令和5年5月1日の時点で4万人あまりで、川口市の人口の6.7%です。これは15人に1人は外国人、という計算になります。
久保さんも、周りで暮らしている外国人のことが気になっていましたが、外国語ができないことから、なかなか声をかけにくかったといいます。県の研修で「やさしい日本語」で外国人と交流する方法などを教えてもらい、少しずつ自信がついてきたということです。

日本語教室でボランティアとして活動を始めた久保さん

久保さんは、5月から市内の日本語教室に登録し、ボランティアとしての活動を始めました。

久保三智代さん
「ボランティアについて、固く考えすぎていたのかなと。私でもできるかなというところで、登録させていただきました。親しみを持って、会いたいなと思ってもらえるように笑顔で迎えたいと思います」

埼玉県は、今後も取り組みを充実させていく方針です。

埼玉県国際課 安部里佳課長
「本県は外国人の数が全国的に多いですし、日本語を学ぶことができるという地域の日本語教室は重要な役割を果たしていますので、ぜひ県は日本語教室とかボランティアを充実させたいと考えています」

専門家「行政の働きかけが必要」

日本語教室は、多くの外国人、なかでも、経済的な理由などで、学校で日本語を学べない人たちの大事なよりどころになっています。
実はもともと、市民の善意で始まったところがほとんどですが、日本で暮らす外国人が増えるなか、行政などからの依頼で、日本語だけでなく、行政の通知などをわかりやすく伝えることなども求められる機会も増えているのが実情です。
専門家は、今後は、行政もその人材の育成や運営を積極的に支える必要性を訴えています。

国際教養大学 伊東祐郎特任教授
「外国人にも開かれたまちづくりを行うのは、市民だけではできないので、そこに行政の働きかけやアクションが必要です。ちゃんとお金を払ってそれなりの人を雇って、日本語教室の運営などをやってもらうということが、必要ではないかと思います」

取材後記

取材では、日本語を教えるにとどまらない幅広く多様な役割を、市民ボランティアが担っていることに驚かされました。同時に、ボランティアと外国人が教室で生き生きと交流を深めている様子が、印象的でした。
今後、日本社会において、外国人の存在は、職場、学校、地域の中で、より大きくなるのは間違いありません。こうしたなか、行政が日本語教室を支援していくことは欠かせないと感じます。その上で、外国人がどこにいても孤立することがないようにするには、周囲で暮らす私たちもより気にかけていく必要があると感じました。

  • 藤井美沙紀 記者

    さいたま局 

    藤井美沙紀 記者

    2009年入局。秋田局、国際部などを経て、現職。県政や川口市政を担当。

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