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空港の“働き手”も海外から

  • 2023年5月29日

日本の空の玄関口、成田空港。コロナ禍では航空需要が大きく減少し、空港を支える現場の仕事から離職する人が相次ぎました。最近の需要の回復に伴って、人手不足が顕在化しています。さらに成田空港では、6年後に新たな滑走路が建設されることが決まっていて、利用客の大幅な増加が予想され、働き手の確保が待ったなしの状況です。そこで空港をあげて注目しているのが、海外の人材です。

(千葉放送局成田支局記者 佐々木風人)

フィジーの若者 成田空港に

ことし4月、空港の到着ロビーに、大きな荷物を持った若者の姿がありました。23歳(取材時)のキャロライン・デラマルムさん。南太平洋の島国、フィジー出身です。成田空港で働くために、遠く離れた日本までやってきました。

キャロラインさんが働くのは、航空機からの荷物の積み降ろしなどを行う「グランドハンドリング」の現場です。

「タグが着いているところを、手前に向ける。お客様が取りやすいようにね」ーー。キャロラインさんはいま、先輩社員から荷物の取り扱い方法の説明を受けながら、仕事を覚えている最中です。

キャロラインさん

私は昔から飛行機に興味がありました。今は、必要なこと、重要なことをできるだけたくさん学びたいと思っています。

コロナ禍で離職相次いだ成田空港

閑散とするターミナル

航空業界はコロナ禍の影響を色濃く受けました。国際線の便数が減った結果、離職者が相次ぎ、特にグランドハンドリングの作業員数は、国のまとめで、コロナ前よりおよそ2割減少。人手不足が深刻な問題になっています。特に成田空港では、6年後に新たな滑走路が建設され、利用客の大幅な増加が予想されているため、空港従業員の確保が待ったなしです。

こうした中、成田空港会社やグランドハンドリング会社が注目したのが海外の人材でした。現地で日本語や航空の知識を身に付けたうえで、成田空港で働いてもらうプロジェクトを始めました。

フィジーの日本語学校で
(画像提供 成田空港ビジネス)

そのプロジェクトが注目したのは、フィジー。教育水準が高く、航空用語にも使われる英語が公用語だからです。現地の日本語学校と連携し、参加した学生たちに、1年以上かけて日本語や航空知識を教えてきました。

円安によって、働く場所として日本の存在感が低下しているとも言われる中、このプロジェクトでは、日本の「丁寧な作業」を学べることなどをアピールしているといいます。

成田空港ビジネス
假谷実 社長

日本の丁寧な仕事を、日本では働く人たちには身につけてもらうことができる。そして、日本の文化に触れられるということも、われわれは日本の魅力として訴えて、来てもらおうとしています。

空港会社では現在、フィジーのほかにポリネシアのトンガでも、現地の学校と連携できないか検討していて、将来は年間100人規模で人材確保をしてきたい考えです。

“日本流”を身に付けたい

プロジェクトの1期生として来日したキャロラインさん。先輩社員の指導を受けながら、必死に仕事を覚える様子は、真剣そのものです。

翻訳機も使いながら指導

基本的な会話は日本語ですが、日本が「売り」とする丁寧な仕事や心構えを身につけられるよう、先輩社員が翻訳機も使いながら細かく指導します。

この会社が海外から直接外国人材を受け入れるのは、初めてのケース。どのように育成していくか、手探りで進めているといいます。

JALグランドサービス成田支店
下山喜隆 総務部長

人材不足を補うだけではなくて、日本人と同じスキル・技量を教えることで一緒に仕事をしていく。一体感を持てるように努力をしています。

キャロラインさん

日本人には、他では見られないほどの規律と優しさがあるので、それを学びたいと思っています。簡単な仕事ではありませんが、早く任せられた仕事を一人でできるようになりたい。

仕事だけでなく、地域のことも

寮で過ごすキャロラインさん

来日しておよそ1か月半。キャロラインさんは、仕事以外でも日本のことをもっと知り、時間をかけて、地域の一員として生活していきたいと考えています。

キャロラインさん

「将来は、自分の住まいを持って、日本に移住したい。両親を日本に呼び寄せたい。日本の一員になりたいのです」

キャロラインさんは日本で働き続けられるの?

キャロラインさん、がんばってほしいナ。日本のあらゆる現場で人手不足が深刻だけど、空港も例外でなく、もう海外出身の人が支えるようになっていることがよくわかったラッカ。そもそもキャロラインさんはどんな枠組みで来日しているのだろう。取材した佐々木記者に聞くんだナ。

成田空港会社などのプロジェクトが利用しているのが、「特定技能制度」という制度。人手不足が深刻化している産業分野で、一定の専門性を持った外国人を受け入れていくという仕組みだよ。キャロラインさんはこのうち「特定技能1号」という在留資格で働いていて、国のまとめでは、この資格で働いている外国人の数は、ことし3月末の時点で、航空を含めた全ての分野で15万4000人あまり。1年間で2倍以上に増えているんだ。深刻な人手不足が背景にあるということだよ。

キャロラインさんは、これからずっと日本で働いていきたいと話していたけど、それはかなえられるのかナ?

キャロラインさんの「特定技能1号」では、在留期間の上限が5年で、家族の帯同は基本的に認められていない。一方で、特定技能制度では、「1号」のほかに「2号」という資格もあり、こちらは在留期間の上限がなく配偶者などの帯同も認められているんだ。ただ「2号」は、現在、限られた分野のみとなっていて、航空分野も含めて業種を大幅に拡大しようという議論がいま進んでいるんだよ。そうなれば、もちろん試験に合格するなど必要な条件はあるけど、キャロラインさんも含めて、これから日本で暮らし続けながら働ける外国人が増えていく可能性があるということなんだ。

今よりもっといろんな場所で、外国人の人と一緒に働くようになっていくかもしれないということなんだナ。

専門家はこんなふうに話しているよ。

日本国際交流センター 毛受敏浩 執行理事

外国人が働かないと、すでに日本社会が回らない時代。外国人とは職場だけでなく、住宅のある地域での活動や、地元の人たちとの積極的な交流ができるよう、自治体もサポートする必要がある。 

一時的な労働者としてでなく、共に暮らす住民としてどう受け入れるか、考えることが大切だと思うよ。

取材後記

成田空港は「日本の空の玄関口」と言われ、毎日多くの外国人が利用していますが、いま、空港の「働き手」にも外国人が増えていることを改めて実感しました。取材中一番印象的だったのは、先輩の仕事を真剣に見つめるキャロラインさんのまなざしです。一生懸命仕事を覚えようとする姿を応援したくなりました。永住もできる在留資格の対象を拡大しようという議論が進むいま、キャロラインさんのように日本を選んだ人たちを失望させない社会であって欲しいと思います。

  •  佐々木風人

    千葉放送局成田支局

     佐々木風人

    大学時代は、地域で暮らす外国にルーツのある子どもたちの日本語教室で、ボランティアをしていました。

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