市販薬の過剰摂取=オーバードーズ。
12月13日には、東京・目黒区の小学校で、児童2人が持ち込んだ市販薬を過剰に摂取し、救急搬送されたほか、翌14日にも足立区で大量の市販薬を摂取したとみられる若い女性が意識不明の状態で救急搬送されるなど、若い世代を中心に問題となっています。
こうしたなか厚生労働省の検討会は、かぜ薬などの医薬品について、20歳未満には複数販売するのを禁止するなど、乱用を防ぐための販売制度の案を18日、取りまとめました。
市販薬の過剰摂取をめぐる動きをまとめました。
冬休みを前に若者が犯罪やトラブルに巻き込まれるのを防ごうと、警視庁は12月2日の深夜から17日早朝にかけて、3回にわたって新宿・歌舞伎町の「トー横」周辺で一斉補導を行い、28人を補導しました。
なかには、せき止め薬を大量に持っていた人も複数いたということで、警視庁は市販薬の過剰摂取=「オーバードーズ」が目的だったとみて詳しい経緯を調べています。
12月13日には、東京 目黒区の小学校で、女子児童2人が持ち込んだ複数の種類の市販薬を過剰に摂取し、救急搬送されていたことが捜査関係者などへの取材でわかっています。
翌14日にも足立区で大量の市販薬を摂取したとみられる若い女性が意識不明の状態で救急搬送されるなど、若い世代を中心に「オーバードーズ」が問題となっていて、警視庁が薬の入手方法など詳しいいきさつを調べています。
「オーバードーズ」で救急搬送された120人あまりを対象に行われた厚生労働省の研究班の調査では、平均年齢が25.8歳で8割近くが女性でした。
この調査は、埼玉医科大学病院などが参加する厚生労働省の研究班が行い、去年12月までの1年8か月の間、7つの救急医療機関に、解熱鎮痛薬などの市販薬の過剰摂取で救急搬送された122人を対象に行われました。
◇平均年齢は?男女別の割合は?◇
その結果、平均年齢は25.8歳で、男女別では女性が79.5%と8割近くを占め、男性が20.5%でした。
◇職業は…学生最多◇
職業別では、学生が33.6%と最も多く、次いでフルタイムで働く人が26.2%、アルバイト・パートが16.4%などとなっていて、7割あまりが家族と同居していました。
◇過剰摂取された市販薬は?◇
また、過剰摂取された市販薬は、複数回答で「解熱鎮痛薬」が24.9%、「鎮咳去痰薬」が18.5%、「かぜ薬」が18%などとなっています。
◇入手経路は?◇
このほか、入手経路は、複数回答で「実店舗」が65.9%と最も多く、次いで「置き薬」が15.5%、「インターネット購入」が9.3%でした。
研究班の埼玉医科大学病院臨床中毒科の喜屋武玲子医師は次のように話しています。
喜屋武玲子医師
「病院に搬送された人は気持ち悪くなっておう吐が止まらなくなったり、ふらつきが強くて歩けなくなったり、思っていた以上の体調不良に驚いたという話をよくする。多くの人は軽症で済むがICUに入るような重篤な状況になる人もいるので注意していただきたい」
オーバードーズが若者の間で深刻な問題となる中、厚生労働省の検討会は、かぜ薬などの医薬品について、20歳未満には複数販売するのを禁止するなど、乱用を防ぐための販売制度の案を18日、取りまとめました。
◇20歳未満に対しては…◇
案では、乱用される恐れがある薬について、20歳未満に対しては、複数の販売を禁止して1箱のみの販売とすることや、乱用目的ではないかの確認を薬剤師などが行うこと、それに、購入者の名前を写真付きの身分証で確認し、販売した情報を記録することなどの対策を盛り込んだほか、インターネットで販売する場合には、薬剤師などがビデオ通話で、薬の使い方を説明することが必要だとしています。
◇20歳以上の場合には…◇
また、20歳以上の場合には、1人1箱の販売を原則とした上で、購入者が複数買いたいと希望してきた場合には、購入理由を薬剤師などが確認し、購入者の名前を写真付きの身分証で確認することとしました。
◇ネット販売の場合は…◇
そして、▼複数をインターネットで販売する場合は、ビデオ通話が必要だとしています。
厚生労働省の研究班が去年10月までの2か月間で、薬物を使用したとして、全国の精神科を訪れた10代から20代の患者336人を対象に主に使用した薬物を調査したところ、かぜ薬などの「市販薬」が36%と最も多くなっていました。
厚生労働省は、18日とりまとめた案を大臣の諮問機関で審議した上で、再来年(2025)以降に医薬品医療機器法の改正を目指していくことにしています。
また、18日の検討会では、ドラッグストアなどで販売する市販薬の分類について変更する案が取りまとまりました。
これまで店頭で販売される市販薬は、副作用のリスクに応じて、▼重い副作用が報告されている胃薬など、リスクが高い「第1類」、▼風邪薬や解熱剤などのリスクが比較的高い「第2類」、▼整腸薬やビタミン剤などリスクが比較的低い「第3類」の3つに分類されています。
これについて今後は、第2類と第3類を1つにまとめた上で薬剤師や登録販売者が購入者の状況に合わせ薬の副作用などの情報提供を行うことになりました。