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ラッカー盤 長野県宮田村パブリックレコード アナログを支える唯一の製造企業

JASRAC音楽文化賞に選出
  • 2023年11月22日

長野県宮田村の「パブリックレコード」はレコード生産に欠かせない「ラッカー盤」を世界で唯一、製造している企業です。今や世界で広がるレコード人気を支える存在で、2023年の「JASRAC音楽文化賞」に選ばれました。ラッカー盤はどう作られるのか、CDの登場でいったんは需要が大幅に落ち込んだなかで製造を続けた思いを聞きました。

小アナログレコードの人気 若者中心に高まる

近年、デジタルにはない音質の魅力などからレコードの人気は若者を中心に高まっていて、日本レコード協会のまとめによりますと、協会に加盟する企業の去年のレコードの出荷枚数は213万枚余りと、10年前の2012年のおよそ5倍に急増しています。

ラッカー盤 世界で唯一の製造企業が長野県に

長野県の南部、伊那谷にある宮田村の「パブリックレコード」は1976年に設立され、その6年後、「ラッカー盤」と呼ばれるレコードを作るための原盤の製造を始めました。

JASRACによりますと「ラッカー盤」を生産していたアメリカの企業の工場が2020年に火災に遭ったため、今は世界で唯一の製造企業となりました。

ラッカー盤をもとに作られた型から

レコードは溝に刻み込まれた波形を針で読み取り、音として復元しますが、このレコードを大量生産するために必要なのが「ラッカー盤」です。

アルミ板に「ラッカー」と呼ばれる塗料を0.2ミリと薄く、均一に塗ったもので、「ラッカー盤」をもとに作られた型で塩化ビニールをプレスすることでレコードが大量生産されています。

片面ごとに1日乾燥 手間がかかる作業

「ラッカー盤」は、わずかなホコリの付着も許されません。塗料をコーティングする際は温度や湿度などが完全に管理された部屋で行われ、片面ごとに1日乾燥させるなど手間がかかる作業です。
CDの登場で、需要は長らく落ち込んでいましたが、レコード人気の再燃で現在は最盛期と同じ年間およそ12万枚、製造しているとうことです。

“みんなのための記録・記憶を残す”

「パブリックレコード」の社名は「みんなのための記録・記憶を残す」という思いから名づけられたということで、かつては、地元の学校の演奏会や卒業記念に制作するレコード作りにも携わってきたということです。

奥田聖社長
「レコードの需要が少ない時期もあったが必要としてくれた人がいたので続けてこられました。いまの人気が続いてレコードを聴いてくれる人が増えるとうれしいです。レコードを必要とする人がいるかぎり『ラッカー盤』を作り続けていきます。みなさんに喜んでもらえるいい製品作りをしたいです」

「JASRAC音楽文化賞」に

JASRAC=日本音楽著作権協会は音楽文化の発展に貢献した人や団体を「JASRAC音楽文化賞」に選出しています。

ことしは、3つの企業と団体が選ばれ、ラッカー盤を生産する「パブリックレコード」は、シャンソンの祭典、「パリ祭」を60年前から開いてきたパリ祭実行委員会と、愛知県で地域住民によるオペラを上演している三河市民オペラ制作委員会とともに受賞しました。

「パブリックレコード」は、近年人気が高まっているレコードの文化を根底で支えていると評価されました。

奥田聖社長
「世界に1社となってしまい大きな責任とプレッシャーを感じているが今後も微力ながら音楽文化に貢献できるよう頑張りたい」

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