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悪質ホストクラブ 売掛金問題の実態!歌舞伎町で相談に応じる代表“一部のホストクラブ「マインドコントロールテクニック」研修も”

  • 2023年11月28日

東京・歌舞伎町などのホストクラブを利用した客の女性が高額な料金を請求され、それをホストが立て替える「売掛金」。その返済をめぐるトラブルの相談が相次いでいます。

ホストクラブで多額の売掛金を抱え、ホストから売春を指示されていたという女性がインタビューに応じ、当時の状況を語りました。
急増する「売掛金」トラブルの実態や困った際の相談窓口とは?

悪質なホストクラブ取り締まり強化 通達

ホストクラブをめぐっては、高額な料金を客の女性に請求した上、「売掛金」などの名目でホストが立て替えた料金を女性に売春などをさせて返済させる悪質なケースが相次いでいます。

警察庁は11月、全国の警察本部に対して通達を出し、売掛金が原因の違法行為を見過ごさず、売春防止法や職業安定法を適用して、確実に取り締まるよう求めています。

また、ホストクラブの中には客引き行為をしたり、法律や条例で定められた時間を超えて営業したりする悪質な店舗もあることから、立ち入りをするなどして適正化を図るよう求めています。

警察庁は、悪質なホストクラブの背後では、暴力団や、闇バイトで実行役を集め、犯罪行為を繰り返す「匿名・流動型犯罪グループ」が不当に利益を得ている可能性があるとして、風営法を管轄する生活安全部門や、組織犯罪対策部門が連携して取り締まりに当たるよう全国の警察に指示しています。

ホスト「売掛金」めぐるトラブル相談増加

「売掛金」の返済などをめぐるトラブル、その現状はどうなっているのか?

東京・歌舞伎町でホストクラブをめぐるトラブルの相談に応じている民間の団体、「青少年を守る父母の連絡協議会」によりますと、ホストクラブの客の女性が高額な料金を請求され、それをホストが立て替える「売掛金」の返済などをめぐるトラブルの相談がことし、急増しているということです。

夏休みが明けた9月と10月を中心に、この4か月の間に200件を超え、これまでの10倍以上のペースだということです。

相談の多くが10代後半から20代の女性やその家族からで、地方から都内に進学したばかりの大学生なども目立っていて、団体は、新型コロナの影響が収まり、新たにホストクラブを利用する若い女性が増加したことが背景にあるとみています。

中には、一晩で100万円近い売掛金を抱えさせられ、返済を名目にホストから売春を指示されたり風俗店で働かされたりするケースも目立つということです。

「青少年を守る父母の連絡協議会」の代表で、およそ20年にわたって歌舞伎町でホストクラブをめぐるトラブルの相談に応じている玄秀盛さんは、「SNSなどでホストが女性に接触し、初回は安い金額で入店させたうえで、ことば巧みに誘導してコントロールするような悪質なケースが目立っている」と話しています。

警視庁もこうした事態を問題視していて、歌舞伎町のすべてのホストクラブに対し、客に売春をさせるなど強引に売掛金を回収することは違法だとする警告を出すなど、警戒を強めています。

“ホストに洗脳された” 女性 売春繰り返す生活に

ホストクラブで多額の売掛金を抱え、ホストから売春を指示されていたという女性がインタビューに応じ、「家庭などに居場所がなく、路上で声をかけられたホストに洗脳されるようにのめり込んでいった」と当時の状況を語りました。

23歳の女性は、18歳のころ、家庭や周囲に居場所がなく、歌舞伎町を1人で訪れた際に路上でホストに声をかけられたといいます。

「初回1000円でどう?未成年でも大丈夫」と誘われ、断り切れずにホストクラブに行くと、かわるがわるホストがあいさつに訪れ、女性が親に頼れない状況だと打ち明けると、「この後、ご飯に行こう」と店の外に誘い出されたということです。

女性は当時の状況について、「当時はアフターということばも知らず、扱いやすい存在だったと思う。『仕事を紹介するからあしたも来てよ』と言われ、ご飯をごちそうになったし、行かなきゃと思って必然的に通うようになった」と話します。

紹介されたのは売春のあっせん業者で、ホストクラブの営業時間中は店に通い、それ以外の時間は1日10人ほどの男性を相手に売春を繰り返す生活になったといいます。

女性は、「ある意味洗脳されていた。ホストはかっこよくて、それまで会った大人と違い私のことを否定しなかった。『お前は悪くない』と言われ、ホストクラブが居場所になってしまっていた」と振り返ります。

手に入れた現金は実質的にホストが管理していて、大半は売掛金の返済にあてられていたということです。

一方で、自身は、1日に1食、弁当を食べる程度でやせほそり、ホストクラブの営業時間以外は男性を相手にしていたため、睡眠を取れるのは逆にホストクラブにいる時間だけだったといいます。

女性が寝ている間に担当のホストが高額な酒や飾りを注文することも多く、売掛金は500万円を過ぎたころから、総額がいくらなのかも分からなくなっていったといいます。

女性は「その頃、別のホストから言われた『君はホスト狂いの鏡だね』ということばが今も記憶に残っていますが、当時はそうした自分に疑問を感じることはなかった」と話します。

女性は2年ほどこうした生活を繰り返していましたが、友人がホストの売掛金に悩んで亡くなったことをきっかけに、「この街にいても未来はない」と思い、抜け出そうと考えるようになったということです。

いまは、NPOで活動していて、歌舞伎町の路上にいる若い女性に声をかけて悩みがないか話を聞いているということです。

女性
「最近ではホストがSNSでの発信をするようになっているが、本当のことが書いていない、ある意味、偽りの姿を信じて居場所を求めて夜の街に来て搾取される若者たちが本当に多い。そうした人たちがいまの状況を被害だと気づける状況になった時に、社会がSOSに気づけたり、守ることができるような体制や支援の整備が必要ではないか」

“巧みな手法 抜け出すのは簡単ではない”

「青少年を守る父母の連絡協議会」の代表、玄秀盛さんによりますと、一部のホストクラブでは、新人ホストに対し、客への「マインドコントロールテクニック」とする研修が行われているということです。

団体が入手した、研修を受けたホストの手書きのメモには、客を「姫」と表現した上で、「好きな人を押し上げるために姫はお金を使う」とか、「クールな感じでいてもすぐ飽きられる」などと書かれています。

さらに、「マインドコントロールテクニック」として、「鎖をかける」とか「地雷をおく」などのキーワードが記されていて、玄代表は、「『鎖をかける』とは、ホストクラブから客が抜け出せなくすることで、客の良いところを褒めたり、『一目惚れした』とか『理解者だ』、『好きだ』など、ふだんは聞かないような言葉で客を持ち上げることで心が傾くようにしている」と指摘しています。

また、客の行動を否定することはだめだとされ、メモでは、客がほかのホストクラブに行かないよう求めるときには、「行くな」と言うのではなく、「ほかの店に行かないから俺も姫を大切にできる」などと表現するよう書かれています。

玄代表は「ブレーキをかけると客の反発を生むので、否定はせず、ホストのことを裏切れないと思わせ、ホストが嫌がることを客の深層心理で避けさせるためのテクニックだ」と指摘した上で、次のように話しています。

玄代表
「こうした研修は最初の一歩で、女性をコントロールし、『沼にはまる』ような状態にもっていくための勉強をホスト側は毎日している。はまる方が悪いと女性をせめる意見もあるが、こうした巧みな手法から抜け出すのは簡単ではない」

“問題を抱え込まず相談を”

ホストクラブをめぐるトラブルの法律相談に取り組んでいる徳田玲亜弁護士によりますと、客の女性からの相談のなかには、酒に酔った状態でホストからねだられ、無理だと伝えているにもかかわらず高額なボトルを注文されたというケースもあり、こうした場合はホスト側との交渉で売掛金が減額されることがあるということです。

ただ、相談の多くは、金銭トラブルだけではなく、ホストとの人間関係に悩んでいるケースが多く、徳田弁護士は「男女の感情の問題が絡むので売掛金を払う、払わないで相談が終わることはまずない。破産や分割払いも見据え、女性に寄り添いながら解決策を考えざるを得ないのが現状だ」と話しています。

徳田弁護士が所属するNPO「風テラス」では、こうした相談を弁護士が無料で受ける相談会を定期的に開催していて、自分で問題を抱え込まず、相談してほしいと呼びかけています。

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