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“学校に行きたくない” 不登校に詳しい「カタリバ」今村久美さんに聞く

  • 2023年8月28日

「ほんとに学校行くことが苦痛だよ」「家にいるのきつい。学校も行きたくない」

SNS上では、夏休みが明ける、この時期、“学校に行きたくないと”苦しむ子どもの声は少なくありません。

こうした言葉を聞いたら、どうしたらいいのか?
そこで不登校の子どもたちに伴走する取り組みを行っている、NPO「カタリバ」の代表理事、今村久美さんに子どもへの寄り添い方について伺います。

“人との関わりを諦めないで”

今村さんたちが2年前に始めた、学校に行けない小中学生を対象にしたサービス、メタバース登校。インターネット上の仮想空間、メタバースを活用し、子どもたちはアバターと呼ばれる自分の分身を使い、テレビゲームのような世界の中を自由に行き来することができます。 

アバターで専用の部屋に入るとオンライン通話での学習が始まります。

Q. アバターの姿をした先生だったり、友達と一緒に過ごせたりする、この取り組みですけれども、どんなことを目指して始まった取り組みなんですか? 

子どもたちが学校に行けない。または、行かないという選択をするときに、なかには『学校に行きたいが、体が動かなくなっている』子どももいるわけです。そのときに学校に行くか、家にいるかの2択ではなく、その間をつなぐような取り組みが必要だと考えました。 

Q. ずっと、こちらで通うというわけではないということですか?

基本的に目指していることは、人と関わることを諦めてほしくないという気持ちがあるので、まずはここの場に家から入って来て、人とオンライン上で話す。そのあと、また学校に行くのか、または近くのフリースクールとか、違う形の学びの場を見つけていただくような、そんなブリッジをかけるような企画になるといいなと思っています。

Q. 自治体によっては学校に行ったことになるのですよね?

いま、自治体と連携を進めていまして、なかにはこれが出席に認められるという学校もあります。

不登校の児童生徒増加

こうした取り組みを行う背景には「学校に行かない」、「行けない」子どもたちが増えているという現状があります。

全国の小中学校における不登校の生徒不登校の児童生徒の推移を見てみますと、2021年度は24万人余りとなっています。10年間で急激に増えています。

Q. この現状をどう見ていますか?

一つ言われているのは、コロナの影響で学校に行かないという日常を、家にいることが日常になった子どもたちが、もう1度、今までの形で学校に行くということに、どうしても慣れられなかったということが問題なんじゃないかという声もあります。しかし、実はこのグラフのとおりコロナの前から2万人ずつ増えていて、2021年度、突然5万人増えたという状況なのです。だから、これからも増え続けるじゃないかなと見ています。

夏休み明け注意すべき点は?

こうした中、今村さんたちは不登校の初期に出やすいSOSをまとめています。

Q. 夏休み明けは、特にどんなところに注意したらいいのしょうか?

夏休み明けは、まず昼夜逆転している子どもがすごく多いです。私たちが運営している施設、メタバース以外にもありますが、大体3月まで不登校だった子たちが4月になると頑張ろうと言って心機一転、また学校に通い始めることをチャレンジすることがすごく多いのです。それはとてもいいことですが、今までずっと学校を休んでいた子どもが、毎日のように学校に行くと、そうするとゴールデンウイークが最初のお休み期間、その次が夏休みになります。頑張って頑張って頑張ってバーンアウトする。1回休む期間をとったことによって『ふと、ちょっと糸が切れてしまう』そういったことが起きやすいんです。そこに加えて昼夜逆転しやすいというのが夏休みの特徴だと思います。

また、最近よく聞くのが、お友達がどんなふうに遊んでるのかや、誰と毎日過ごしてるのかというのがSNSで見えてしまう時代なんで、それをすごく繊細に捉えて、みんなが何をしてるのか。私は、そこにいないっていうことに、大人だって気になると思うんですけれども、そういうお祭りの様子とか、海の様子とか。そういったものが新学期になったときに自分が仲間にもう1回戻れるだろうか。声かけてもらえなかった。どうしてだろうか。そこが心配になって学校に行けない。行きたくないって声も聞きます。

Q. そういう子供たちの反応を大人はどう受け止めて、どう一緒に過ごしてあげることが大事になりますか?

最近は、よく『学校に行かなくていいんだよ』っていうようなメッセージもあるかと思います。これも1つの子どもたちの状態によっては、楽になれる言葉だと思います。しかし、なかには『1日休んだあと明日は頑張ろう』とか『1週間後に頑張ろう』という言葉がけがあって、その先の通常サイクルに戻れる子どももいます。

でも、なかには、もう心のエネルギー値が下がっていて、もうガス欠になっている。心がガス欠になっているという状況の子どもも少なくないんです。その子たちには学校に行くか、もう何もしないかではなくて、例えば家の中で、朝みんなで朝食は食べようかとか、あと家のお手伝いをお願いしたいとか、もしかしたら近所のつながりの場に行こうかとか、そういうような、その子にとってハードルを少し下げたスモールステップを、子どもを中心に置いて一緒に伴走することが大切かと思います。

Q. スモールステップを見つけていくにしても親御さんも、またこれは誰も教えてくれませんから、なかなか難しいですよね。

お子さんが不登校になれば親御さんも落ち込みやすいですよね。お子さんが学校を休みたいと言い出すことを想定してなかった方も多いのです。例えばまわりのご家族、義理の母親や、旦那さんから『お前の育て方が悪いんだ』と言われたり、言われているのではないかと思ってしまったり、近所の方々が『この子は学校に行けないなんてサボってるんじゃないか』と、見てるのではないかとか、そういったことに焦りすぎてしまい、自分を責める親御さんも多いと思います。

だから、これは一人で解決できる問題だとは思わずにオススメしたいのは、一緒に考えてくれる誰かを探すということです。そして、みんなでやっていくことが大切だと思います。 

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