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ネコのオブジェ 無断デザイン変更で作者抗議 著作者人格権とは

  • 2023年5月9日

東京・渋谷区の複合施設に展示されていた現代アートの作者が手がけた招き猫をモチーフにしたオブジェが、突然、黒を基調としたデザインに改変され、作者がオブジェを所有する企業に抗議する事態となりました。問題とされた「著作者人格権」という権利はどのようなものなのか、事態の経緯とあわせてまとめました。

オブジェ制作 海外客を意識し日本的イメージで

東京都内に住む現代美術作家の吉田朗さんは、大手不動産会社が、渋谷区内に開発した複合施設のレストランに展示するオブジェの制作を依頼されました。
吉田さんは、招き猫をモチーフとしたオブジェを完成させ、2020年から、展示されていました。

吉田朗さん
「このネコのオブジェは、海外のお客さんを意識して、日本的なイメージで赤と白を基調としました。設置される場所が、渋谷駅のハチ公像と、対角になるので、このネコも愛される作品になってほしいという思いを込めました」

“著作権の侵害” 作者が所有の企業に抗議

ところが去年9月。吉田さんはSNSをみて衝撃をうけました。デザインが、突然、黒を基調にしたものに変更されていたのです。吉田さんは、所有する企業に抗議しました。「作者に無断で姿を変えるのは著作権の侵害にあたる」と主張したのです。

「なぜこんなことをするのかショックでした。思いやコンセプトを含めて全く違うものにされて大きく踏みにじられました。美術作品に対する最低限の理解と敬意があればここまでの事態にはならなかったはずです」

著作者人格権 作者に無断で改変はできない

著作者には、「著作者人格権」という権利が付与されています。これは、たとえアートなどの作品を購入した人であっても、作者に無断で改変できないというものです。
専門家は、今回の出来事が、アート作品と著作権について、考えるきっかけにしてほしいと指摘しています。

武蔵野美術大学 志田陽子教授
「アートには、著作者人格権という考え方がある。特に今回は、作品を第三者の目に触れる場所に展示していたことに問題があった。アート作品は、アーティストの人間的な内面と深く結び付いている。所有したらどう扱ってもいいというものではない。そこが芸術作品、著作物の大事な部分だということが、これを機に広まってくれるといいなと思う」

オブジェは作者のもとで修復作業

オブジェは、今は作者のもとに戻され、修復作業が行われているということです。オブジェを所有していた三井不動産は、NHKの取材に対して「店舗の運営事業者から、アートを含めた店舗全体の内装変更の依頼を受けた際に、著作権に関する確認が不十分でした。アーティストへの配慮を欠く対応を行ったことを深くお詫び申し上げます」とコメントしています。

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