イノシシ、サル、キョン…。
千葉県では野生動物による農業などへの被害が相次ぎ、深刻な状況となっています。
野生動物を捕獲する担い手を掘り起こし、ハンター不足の解消につなげていきたい。県が目を付けたのは、狩猟免許を取得したものの狩猟経験の少ない「ペーパーハンター」でした。
(千葉放送局記者・坂本譲)
千葉県内ではイノシシ、サル、キョン(中国などに生息するシカ科の特定外来生物)、アライグマなど、野生動物によるさまざまな被害が後を絶ちません。
イノシシに稲が踏み荒らされたり、サルに野菜が食い荒らされたりする被害が相次いでいます。
県内での野生動物による農作物の被害は、2022年度の1年間で約2億7000万円に上るということです。
また、「キョン」は農作物の被害だけではありません。
「ギャー!」という特徴的な大きな鳴き声で、住民の生活環境への影響が広がっています。鳴き声はこちらの動画でご覧いただけます。
キョンは本来、日本には生息していませんが、1980年代以前に、勝浦市にあった観光施設から逃げ出したものが房総半島で大量に繁殖したとみられています。
生息数はこの10年間で2倍以上に急増。2022年度の県の推計では約7万1500頭に上っています。
県によりますと、これまでに生息が確認されているのは、房総半島の17市町。このほか目撃情報は県北部でも寄せられ、さらに近年は、茨城県内でもたびたび目撃されています。
生態系への影響も懸念される中、生息域の拡大を食い止める対策が課題となっています。
県は、対策を進めるため新たな取り組みを始めました。
狩猟免許を取得したものの、狩猟経験の少ない、いわゆる「ペーパーハンター」からハンターを育成し、課題となっている担い手不足を解消しようというのです。
県は、熟練のハンターを講師に招き、狩猟に必要な知識や実践的な技術を身に付けてもらう研修を企画。「ペーパーハンター」30人が集まり、研修は2023年11月にスタートしました。
最初は座学や見学などが中心でしたが、翌年1月からは、「ペーパーハンター」が熟練のハンターとともに実際に山に入り、動物を捕獲する現場実習が始まりました。
山の中に事前に設置されたわなを1つ1つ見回り、取材を行った日には、わなにかかっている動物はいませんでしたが、参加者はわなを設置するコツや動物を捕獲する手順などを学びました。
参加者からは、積極的に質問が出されました。
エサのまき方のコツとして、わなの中だけでなく、外にもエサを置くと動物がわなにかかりやすくなります。
エサを取り替えるタイミングはどれくらいがいいのでしょうか?
ハンターによって判断は分かれますが、動物も新鮮なエサを好むので、できるだけ多いほうが好ましいです。特に葉物は頻繁に変えた方がいいと思います。
また、2日前にわなにかかっていた「キョン」を使って、動物を処理する手順について説明もありました。
狩猟免許を取ったものの、実際に始めるには難しさがありました。
わなの掛け方や捕まりやすくするコツを知ることができて勉強になりましたし、こうした機会は大変ありがたいです。
免許を取ってから、猟を行うまでの段差を埋めてもらえるのはうれしいです。
実際に私が住んでいる地域でもイノシシなどが出てきているので、もし役に立てるのであれば力になりたいと思います。
野生動物による被害は深刻な状況です。捕獲に取り組む上では担い手の確保が課題になっています。
今回、実地研修を行いましたが、参加者は真剣に説明に聞き入り、作業なども丁寧にやっていただいていたと思います。
将来的な活躍が期待できるというふうに思って見ていました。研修を通して実践的な捕獲技術を身につけ、ぜひとも有害鳥獣捕獲の担い手になってもらいたいと思います。