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「ふなばしアンデルセン公園」 風車が回るのを見たい! デンマークの職人が来日 4月に回転再開 千葉

  • 2023年12月12日

大人から子どもまで幅広い年代に人気の「ふなばしアンデルセン公園」。この公園のシンボル、風車は5年前から止まったままです。「風車が回っている姿を見たい」という、多くの人たちの願いを受けて船橋市が呼び寄せたのは、本場・デンマークの風車職人。地元工務店と協力し、来年4月の回転再開に向けての作業が進んでいます。改修を歓迎する駐日デンマーク大使のコメントも紹介します。

(千葉放送局記者 金子ひとみ)

羽根を取り付け

12月8日、午前11時のふなばしアンデルセン公園。澄み渡る青空の下で、11.3メートルの木製の羽根がクレーンでつり上げられていきました。

この日行われたのは、補修を終えた羽根を粉ひき風車の屋根部分に取り付ける作業です。高所作業車に乗った2人が中心となって、高さ6メートルの屋根に注意深く固定していました。

1時間かけて2つの羽根が一直線に取り付けられると、本来の風車の姿に近づいてきました。

作業にあたったのは、ことし9月にデンマーク・シェラン島から来日した風車職人のミケール・ジョン・イェンセンさん(51)です。12歳から風車の勉強を始めたという風車職人の5代目で、27年前にも来日してこの風車の建築に父親とともに関わりました。

ミケールさん

27年前に初めて来て以来、改修のたび、愛情を込めて作業をしてきました。最初にここに風車が建った時は私自身もかなり若かったので、風車も自分も年を取ったなあと感じています。ただ一方で、長年機能していなかった風車を改修して再び動かすというのはやりがいを感じます。

アンデルセン公園の風車とは

ふなばしアンデルセン公園の前身は、1987年11月、船橋市制施行50周年の記念事業としてオープンしたワンパク王国でした。

1987年 ワンパク王国としてオープン

その後、新たなゾーンが次々と整備され、1996年、ふなばしアンデルセン公園として開園しました。東京ドームおよそ8個分の広大な敷地の中に、日本有数規模のフィールドアスレチック、四季折々・常時10万株を超える花があり、雨の日でも楽しめる美術館やワークショップスペースなども設けられています。

大人900円、小中学生200円で、年間パスポートを購入する人も多く、ことし9月には、入園者数が1500万人を超えました。

なぜアンデルセンなのか?童話作家アンデルセンは船橋市の姉妹都市であるデンマークのオーデンセ市生まれ。その童話の精神を生かしたいという思いが込められているからです。公園内は、アンデルセンが活躍した1800年代のデンマークの田園風景が再現されています。

この公園のシンボルとして組み立てられたのがデンマーク式の粉ひき風車です。粉ひき風車は、小麦から小麦粉を作る際など、穀物を粉に変える際の動力として活用されてきました。

アンデルセン公園の風車は、デンマークに現存する1800年代の粉ひき風車がモデルで、本体の高さ16.4m、1枚の羽の長さおよそ11.3m。3億200万円をかけてデンマークの職人も参加して建設されました。このときに来日した職人のひとりが、現在、改修工事のために来日しているミケールさんです。

2011年には船橋市景観重要建造物の第1号に指定された風車ですが、老朽化が進み、2018年から羽根は回転は止まった状態でした。そのような中で来園者などから相次いだのが「アンデルセン公園の風車が動く姿をまた見たい」の声。今年度、船橋市は、デンマークからミケールさんとピョートル・トマス・ヴォィナロヴィッチさんを呼び寄せ、改修工事を行うことを決めたのです。

八千代市からの
来園者

本場から職人さんが来ていると聞き、きょう見に来ました。こういう工事風景を見ることができるのも今だけかなと思います。以前、回っているのを見たことがありますが、再び回るのが楽しみですね。

船橋市からの
来園者

羽根は飾りだと思っていたので、動くと聞いてびっくりしました。本格的なものだったのですね。アンデルセン公園は1日中のんびりできるお気に入りの場所です。そのシンボルの回る姿、見てみたいです。

改修工事の内容は?

1億3900万円をかけて行われている風車の改修工事、その内容はどのようなものなのでしょうか。

まず、去年の5月に事前調査が行われたあと、ことしの5月以降、デンマークで部品の製作が行われました。9月に入り、風車のまわりに足場と工事用のフェンスが設置され、9月18日にミケールさんとピョートルさんが来日。9月下旬には、クレーンを使って4枚の羽根が取り外され、羽根を回転させるための軸を支える部分と台座の交換などの作業が進められました。

9月下旬 羽根の取り外し作業

そして、12月8日、2か月半ぶりに羽根がふたたび取り付けられました。12月下旬には、ミケールさんたちは帰国し、残りの作業を託された地元の工務店が、塗装や調整などの仕上げの作業を行います。回転再開は、来年4月の予定です。

羽根の取り付け作業の合間に、ミケールさんに話を聞きました。

Q.作業も終盤に近づいてきて、どんな気持ちですか?

ミケールさん

羽根を無事取り付けることができ、また、改修工事自体も完成が近づき、ほっとしています。

Q.来園者へのメッセージをおねがいします。

羽根が回る光景はとても美しく、楽しんでほしいです。風車自体はデンマークのオーデンセ市と船橋市の友好のシンボルですから、そのことも皆さんの心に置いておいてもらえばいいな、と思っています。

Q.この風車が今後どんな存在になってほしいですか?

今後100年間、ここに立っていてほしいです。同時に、船橋とオーデンセの友情が末永く続くことを願っています。羽根は20~30年ほどしか持たないですが、それ以外の部分は100年間じゅうぶん持つと思います。

改修費の一部はクラウドファンディングで 名前が刻まれます

「めったにない機会に、多くの人たちに関わってもらいたい」と、船橋市は改修費の一部を、ふるさと納税を活用したクラウドファンディングで募集しました。

船橋市のクラウドファンディング特設ページより

2万円以上寄付した先着150人には、風車内の銘板に名前を刻むことができるという特典を用意したところ、12月1日の募集開始からわずか6日間で目標額の300万円に達しました。現在は、目標額を600万円に引き上げ、銘板に名前を刻める特典の受け付けも300人に拡大して、募集を継続しています(12月12日時点)。

駐日デンマーク大使「よみがえるのを見るのがとても楽しみ」

風車の改修にあたり、駐日デンマーク大使館のピーター・タクソ-イェンセン大使もNHKにコメントを寄せてくれました。

<日本語訳>デンマーク王国大使館は、船橋市のデンマークと日本の強い絆への継続的な支援について大変感謝しています。来日するデンマーク人にとって、私たちが愛する童話作家H.C.アンデルセンの名にちなんだ「ふなばしアンデルセン公園」が存在していることをうれしく思っています。デンマーク人風車職人の指導のもと、公園の風車がよみがえるのを見ることをとても楽しみにしています。風車はデンマークの文化に欠かせないものであり、日本とデンマークの関係を農業とエネルギーという2つの重要な側面から支えています。風車は、農家の穀物を粉砕するところから始まり、農場に電力を供給するようになり、現在では、風力エネルギーが肥料生産の中心的役割を果たすという新たな段階を迎えようとしています。船橋市を訪れる方々に回転する風車の羽根を見て、風の力とデンマークのつながりを感じてもらえると幸いです。

<原文>The Danish Embassy remains highly appreciative of Funabashi City’s continuous efforts to support the strong bond between Denmark and Japan. For Danes coming to Japan, it is always heart-warming to know that our beloved fairy tale author H.C. Andersen has an actual place named after him in Funabashi Andersen Park. We are truly excited to see the park’s windmill come back to life under the guidance of Danish workmanship. Windmills are an essential part of Danish culture and bridges two important aspects of the Japan-Denmark relationship – agriculture and energy. Windmills have gone from milling the grain of farmers to producing electricity to farms and is just now entering a new phase, where wind energy can play a central role in fertilizer production. I hope that the sight of turning blades in Funabashi City will make visitors appreciate the power of the wind and the Danish connection.

取材後記

6年近く船橋市に住んでいますが、一市民として市内で最も誇りたい場所がアンデルセン公園です。公営でありながら、これほど内容が充実して、幅広い年代に親しまれている公園はなかなかないのではないでしょうか。

最近、現金支給や授業料・給食費無償化など、市民に直接給付する国や自治体の政策が相次いでいます。物価高の世の中において、直接給付は欠かせないものですが、公園や安らぎの場の整備も重視する行政であってほしいと思います。

「首都圏ネットワーク」での放送内容は、12月15日(金)まで「NHKプラス」でご覧いただけます。

  • 金子ひとみ

    千葉放送局 記者

    金子ひとみ

    太陽の池でボートに乗るのが好きです。

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