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“ヤングケアラーの負担軽減を” 船橋市が配食支援 千葉

  • 2023年12月07日

日常的に家族の介護や家事などを担う子ども「ヤングケアラー」。なかには、毎日の買い物や食事の用意などが負担になっている子どももいます。そうした負担を少しでも減らし、必要な支援につなげようと、千葉県船橋市では希望する家庭に無料で食料を届ける支援を始めています。

(千葉放送局記者 木原規衣)

「首都圏ネットワーク」での放送内容は、12月14日(木)まで「NHKプラス」でご覧いただけます。

家事も勉強も…

大学合格を目指し勉強している

船橋市に住む19歳の浪人生の男性。70代の父親と2人暮らしです。

小学生の時に父親が心不全で倒れ、食事の用意や掃除などの家事を担うようになりました。父親は腎臓病や糖尿病などがあり、1日の塩分量を6グラム以内に抑える必要があります。

そのため、毎食塩分量を計りながら減塩の料理を作っていて、同じものばかりで飽きないようインターネットでレシピを調べ、味付けのしかたを工夫しています。

料理は得意ではないんですけど、誰かに頼るということもできないので自分がやっています。インターネットや動画を調べてレシピを見ながらやっています。塩分量を計算しながらやっているので、大変です。

調理にかかる時間は1時間ほど。買い物などの手間もあり、負担になっているといいます。

将来はロボットエンジニアになるという夢を叶えるため理系の大学を志望していて、合格を目指し予備校に通わずひとりで受験勉強をしています。金銭的な不安もあるためアルバイトもしていて、勉強時間の確保に苦労しているといいます。

勉強しながら頭の中で家のことを考えてしまう時もあります。3食違うメニューを考えないといけないので、その時間を勉強にあてられたらなという思いもあります。

負担を軽くするため食料を

船橋市は、こうした負担を抱えるヤングケアラーや学生などの負担を軽減し、必要な支援先につなげようと乗り出しました。

この日男性の家を訪問したのは、船橋市こども家庭支援課で「ヤングケアラーコーディネーター」を務める、江馬瑞紀さん。男性から相談を受け、介護保険サービスの導入や奨学金を受ける手続きなどのサポートも行っています。

リゾットやみそ汁などは減塩のもの

父親と男性の2人分の食料を段ボールいっぱいに詰めて届けました。中身は、レトルトの米やカレー、みそ汁など1週間分です。

親子はさっそくハヤシライスソースを電子レンジで温め、味わっていました。

父親

息子が作ってくれるんだからおいしいよ。

全部食べてくれてすごくうれしいです。時間の短縮にもなりますし、テストも近いのですごく楽になります。ありがたいです。

目的は「別の支援につなげること」

船橋市がこの支援事業を始めたのはことし9月。今回、男性が利用したのは、世帯で1人1日あたり1食、1週間分の食料を受け取れる事業で、来年3月までに最大3週間分の支援を受けることができます。このほか、弁当の配達を週1回、2か月間受けられる事業や、ホームヘルパーの派遣を受けられる事業もあります。船橋市こども家庭支援課のヤングケアラーコーディネーターに相談したうえで申し込むことができます。

弁当の配食を利用した家庭からは、「子どもの家事負担の重さについて家庭で考えるきっかけになった」という声や、「配食を受けることで家族で話をする時間が増え、別の配食サービスを利用することになった」という声も寄せられたといいます。

江馬さんは、こうした支援は「一時的な支援」だといいます。本当の目的は、これをきっかけにして別の支援先につなげることや、家族以外の大人への相談など、精神的な負担の軽減につなげることです。

ヤングケアラーコーディネーター
江馬瑞紀さん

この事業だけで家事負担を減らすということはなかなか難しいかなと思っています。事業をきっかけに別の支援事業につないだり、この支援を使うことによってご家族の中で家事について考え直すきっかけ作りになればいいなと思っています。

なかなか自分から声を上げるということは難しいと思いますし、市役所の職員など知らない人に相談するのも難しいとは思いますが、近くの大人にまず相談してもらうのが第1歩だと思うので、支援につながればいいなと思っています。

  • 木原規衣

    千葉放送局 記者

    木原規衣

    8月から千葉県政担当。前任地の山梨でもヤングケアラーの高校生やその家族を取材してきました。これからも支援のあり方について取材していきます

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