都政担当記者のTOKYO深掘り中!
  1. NHK
  2. 首都圏ナビ
  3. 都政担当記者のTOKYO深掘り中!
  4. 「カスハラ」 定義づけへ 東京都 全国初の防止条例制定に向け 具体的行為も例示の案

「カスハラ」 定義づけへ 東京都 全国初の防止条例制定に向け 具体的行為も例示の案

  • 2024年04月22日

東京都は、全国初のカスタマーハラスメント、いわゆる「カスハラ」を防ぐ条例の制定に向けて、「カスハラ」を定義づけるとともに、店側のミスで法外な金額を要求するなどの具体的な行為を例示する案が都の部会で了承されました。どんなことが「カスハラ」にあたると示されたのかなど、まとめました。

これはカスハラ?カスハラじゃない?

「じろう」くんはきょうが誕生日。家族はお祝いに、張り切ってネームプレート付きで3000円のおいしいケーキを買いました。ところが、自宅に戻ってケーキを開けてみると、ネームプレートには違う人の名前が…。
親はいてもたってもいられず、ケーキ屋さんに抗議しに行き、店員の胸ぐらをつかんで3000円を返金するよう求めました。カスハラ?カスハラではない…?

全国発「カスハラ防止条例」へ定義づけ 

東京都は、全国で初めてとなる「カスハラ防止条例」の提出を目指していますが、それに先立って、カスハラを定義づけるとともに、具体的な行為を例示する案が、22日、専門家などが参加する東京都の部会で了承されました。
部会の中で、都は、カスハラは「パワハラ」や「セクハラ」などと異なり、法律上の定義がないことから、条例で「就業者に対する暴行、脅迫などの違法な行為、または暴言や正当な理由がない過度な要求など不当な行為で就業環境を害するもの」と定義づけることを提案しました。

「カスハラ」具体的な行為を例示へ

さらに、条例の実効性を確保するため新たに設けるガイドラインに具体的な行為を例示することも提案しました。
それによりますと、冒頭の誕生日ケーキの例えは「カスハラ」にあたるとされました。いくつかの例が示され、該当するかどうか示されました。

“「カスハラ」に該当”
▶店員の胸ぐらをつかみ、1億円を要求すること
▶丁寧な口調で1億円を要求すること
▶店員の胸ぐらをつかみ3000円の返金を要求すること

“「カスハラ」に該当しない可能性”
▶丁寧な口調で3000円の返金を要求すること

このように、都がカスハラの例として挙げた子どもの誕生日ケーキの名前が間違っていた場合の
対応について街の人に聞いてみると…。
 

「1億円の要求はひどいですが、丁寧な口調で3000円の返金を要求するのが
カスハラではない可能性があるというのは納得できます。私たち年配のものは
カスタマーハラスメントって何かなと思いますが、具体的に示してもらえれば
わかりやすくていい」

「自分がカスハラだと思っていなくても相手がカスハラだと捉えていることも       あると思うので、線引きは難しい」

そもそも「カスハラ」法律上の定義なし

「カスハラ」と違い、セクハラやパワハラは、法律上の定義があるほか、ハラスメントを防ぐために事業主が講じるべき措置が法律で定められています。

「セクハラ」
「職場において行われる性的な言動に対する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受けるもの」など

「パワハラ」
「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより労働者の就業環境が害されるもの」

そして、セクハラは平成18年に、パワハラは令和元年に、労働者からの相談に適切に対応するため、事業主は体制整備や雇用管理の点で必要な措置を講じなければならないなどと法律で義務づけられました。しかし、カスハラは法律上の定義はなく、事業者が対策を講じる義務はありません。

カスハラに詳しい、関西大学社会学部の池内裕美教授は、条例で、カスハラの定義づけが検討されていることについては、次にように述べました。

関西大学社会学部 池内裕美 教授
「これまでは『今、自分が受けていることがカスハラなのか』ということを明確に認識できなかった。定義づけされれば、自信を持って認識したうえ次の対処をとることが
可能になったと思う。その一報で、パワハラやセクハラと違い、定義づけしたとしても、
業種や業態、都会か郊外の店かなどによって、客と接する状況はさまざまで、すべての業種にあてはまるかどうかはわからない。また、線引きすることでこのボーダーラインまでなら言ってもいいんだろうというような悪い面が出てくる可能性はある。この条例をもとに、それぞれの企業や店舗で、対策方針をカスタマイズしていくことが課題になってくる。カスハラということばを認知してもらうことが対策の第一歩。条例の制定を通じ、
消費者側も含めて、従業員が働きやすい環境をつくることは消費者の利益にもつながる」

今後は    

東京都の部会では今回の提案のほかに、罰則を設けないことも了承され、都はこうした内容に基づいて早期の条例案の提出を目指しています。

部会の座長 慶応大学の橋本博之名誉教授
「条例でカスハラをわかるように示すことで対策につながる。都はスピード感を持って対策してほしい」

ページトップに戻る