ミツバチの世界、奥深し。自分はまだ入り口ですが・・・。

15年ぶりの仙台局勤務になり、不在にしていた間、富谷町は富谷市になり、市役所の屋上ではミツバチが育てられていました。市役所で話を聞いてみると、「富谷と言えばブルーベリーだったけれど、市制移行を機に新たな特産品を作ろう」と始まったそうです。そして新たにハチミツビールの販売も。さっそく富谷市を訪ねてきました。

(仙台放送局 映像取材 小幡倫之)


【ハチミツビールを求めて】

▼富谷市産ハチミツをかける味噌トースト
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まずは富谷市産ハチミツを使ったビールが誕生したというので、市内の観光商業施設に。市役所のハチミツ作りに携わっているNPO「SCR」が運営するカフェでは、ハチミツを使った料理を提供し、売り上げを養蜂の活動費などに充てているそうです。

ちなみにSCRはSmile(笑顔)Challenge(挑戦)Relation(つながり)の頭文字。
ハチミツ作りだけでなく、自然再生などの環境保全や持続可能な街づくりにも取り組んでいて、ミツバチの環境作りも全てつながっているんだなあと勉強になりました。

▼富谷市産ハチミツ入りのクラフトビール
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4月8日に販売を開始した、富谷市産のハチミツを原料に使ったビールです。
販売日を“ハチ”にしたところにも、ミツバチ愛を感じます。

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肝心のお味は、ビールの苦みがまず来ます。でも、そこまで苦くなく、甘くもありません。舌触りにトロリとしたハチミツの食感を感じました。

ビールの製造を担当した会社に聞いたところ、炭酸の成分をあえて抑えて作り、泡を立ちにくくしているそうです。これまで作ったハチミツビールは1,500本。貴重な1本をゆっくり味わいました。

【富谷市産ハチミツ作り、今シーズンもスタート】

▼完全防備でミツバチが暮らす屋上へ
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そのハツミツはどこでどうやって作られているのか。巣箱がある場所へ向かう前に、ミツバチに刺されないよう編み目のカバーが付いた帽子や、白い防護服を身につけます。ミツバチは隙間の下から上へと入り組んでくるそうで、裾や袖もテープで留めて準備完了です。そして向かったのは富谷市役所の屋上です。市農林振興課の佐藤純一さんに案内してもらいました。

▼屋上に並ぶ16箱のミツバチの巣箱
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屋上でミツバチの世話をしているのは、富谷市が募集した市民サポーターやNPOメンバーで作る「とみやはちみつプロジェクト推進協議会」の方々です。市役所のハチミツ作りは今シーズンで7年目。初めて間近で見る作業でしたが、皆さん手際がいい、と感じました。

▼飛び交うミツバチに囲まれての作業
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それ以上に、ものすごい数のミツバチが行き交う風景に圧倒されました。目の前に迫って来るミツバチと羽音に、恥ずかしながらビビってしまい、前に進めません。「大丈夫、刺しませんから」と後ろから声をかけてくれた佐藤さんの声を信じて恐る恐る巣箱の方へ向かいます。すると「痛っ」と佐藤さん。どうやら刺されたようです。ちょっと帰りたくなりました。

▼板を引き上げ、生育状況を確認
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今シーズンのハチミツ作りに向けた作業は4月4日に始まりました。週2回ペースで行うそうです。巣箱に入っている四角い板を1枚1枚引き上げて、ミツバチの育ち具合を確認していました。1つの巣箱には、さなぎを育てる板や、ハチミツを貯める板、それに卵の部屋など、役割が異なる9枚ほどの板が入っているそうです。その役割を担うのがミツバチです。ミツバチってすごい、と素直に感心しました。

▼ハチミツを貯めるための板
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ミツバチが作り出す芸術的な正6角形の巣穴の構造も、見れば見るほど不思議でいっぱい。少しずつミツバチの「なぜ?」の世界にのめり込み、恐怖心よりも愛おしさが増していきます。この時期は桜の花から集めた蜜が主で、既にたくさんの蜜が巣穴に貯まっていました。5月半ばに今シーズン1回目のハチミツの採取が行われます。実際に活動するミチバチと人が作業する様子を見て、ハチミツがより貴重な物に感じました。

▼巣箱1つに1匹だけいる女王バチ
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作業でもう1つ大事なことは、女王バチが元気にしているか、です。巣箱1つには約1万匹のミツバチがいますが、女王バチは1匹。それで1群と呼びます。その女王バチがいなくなると、その群は混乱してハチミツ収穫どころではなくなるそうです。女王バチがいない時には、新たな女王バチが育つように環境を整えなければなりません。そのため、作業している人は目をこらして、ミツバチの群れの中から女王バチを探していました。ところで、写真には女王バチが写っていますが分かりますか?他より1匹だけ身体が長いハチです。

▼ミツバチと共生できる街へ
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市農林振興課 佐藤純一主幹
「ミツバチは“環境指標生物”と言われる自然に敏感な生き物ですので、ミツバチが生きていける自然豊かな街づくりというのも目指しているところです。」

 

【ミツバチが暮らしやすい里を目指して】

▼休耕田を花と野菜あふれる畑へ
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こちらは富谷市郊外で手つかずのままだった休耕田と竹林を、NPO「SCR」が整備した畑です。市役所屋上の活動とは別に、ミツバチの住みやすい環境作りは自然再生にもつながると5年前に始めました。この季節、咲き誇った菜の花の間をミツバチが飛び回っていました。

▼畑の一角に2種類のミツバチの巣箱
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畑の一角に置かれているのは、セイヨウミツバチと二ホンミツバチの巣箱。SCRでは、もともと畑を作る前からニホンミツバチの生育に取り組んでいて、市役所屋上の活動に関わったのをきっかけにセイヨウミツバチも育てることにしました。縦長なのがニホンミツバチの巣箱です。木の幹の形に少しでも近づけているとのことでした。それぞれに活動や育ち具合に違いがあり、今回はそこまで取材出来なかったのでぜひ次回に。

▼先輩から若手が教わり農作業
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畑にはラベンダーやひまわりといった季節ごとの花に加えて、豆やジャガイモなどの野菜も育てています。メンバーは毎月8の付く日に集まって、ミツバチの世話だけでなく、畑仕事も行っています。今は富谷市以外のメンバーも加わり、野菜の栽培に詳しい人や農機具の扱いに慣れた人など、自分の得意分野で力を発揮し、それぞれのやりがいにもつながっているそうです。ミツバチの受粉活動で野菜も生育がよいと聞きました。改めて、ミツバチパワー凄し!です。

▼作業の後はみんなで青空ランチ
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畑に集まる楽しみはもう1つ。作業後に青空の下でみんなと食べるランチです。畑で採れた野菜を使ったカレーや持ち寄ったおかずを囲み、笑顔と笑い声があふれる時間です。この日は、去年採ったハチミツをたっぷりかけた焼きたてのピザを作り、私も頂きました。ミツバチを育てる活動は、世代や地域を超えた人と人との交流にもつながっています。

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NPO法人SCR 村上幸枝代表
「おじちゃまとか、若い世代、子どもたちからみんながミツバチを通じてつながれるっていう世代間交流にもなっている。一緒に住みよい街づくりが継続して出来ればいいですね。」

 


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仙台放送局 映像取材

小幡倫之
青森・山形・東京・秋田をへて
ことし2月から宮城県の地域職員として仙台局勤務へ


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