長周期地震動の緊急速報スタート どう変わる?解説します

2月1日から、緊急地震速報の対象に「長周期地震動」が加わりました。
どんな揺れ?起きたらどうする?詳しく解説します。

(取材・杉本織江記者)


長周期地震動とは?

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長周期地震動は、大地震の際に生じる周期が長い揺れで、遠くまで伝わりやすく、高層ビルなどを長時間にわたって大きく揺らす特長があります。東日本大震災の時、震源からおよそ400キロも離れた東京で高層ビルが大きく揺れたことは、多くの人が覚えていると思います。

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ビルが大きく揺れた要因は揺れの周期にあります。短い周期の揺れは、ヒトが感じやすく、低い建物の方が激しく揺れますが、周期が長くなると高い建物や大きな構造物の方が揺れが大きくなります。地震そのものの揺れと建物の揺れが共振するためです。

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長周期地震動で大きく揺れる建物は、▽おおむね15階建て以上の高層ビル、▽大型の吊り橋、▽大型貯蔵タンクなど。高層でなくても免震構造の建物も影響を受ける可能性があります。

国土交通省は、
▽ビルの上層階ほど揺れが大きい
▽固定していない家具やオフィス機器が転倒・移動してけがをするおそれがある
▽エレベーターの停止や閉じ込めなどが起きるおそれがある
と警戒を呼びかけています。

長周期地震動のもう1つの特徴は、遠くまで伝わりやすいこと。東日本大震災は東北が震源地で、関東や関西でも長周期地震動が起きましたが、逆に、宮城県は震源から遠く「震度」はあまり高くなくても、長周期地震動で大きく揺れるということもありえます。


緊急地震速報はどうなる?

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これまで緊急地震速報は、震度5弱以上の大きな揺れが予想される場合に発表されていました。今後はこれに加え、長周期地震動が予測される地域にも発表されます。例えば震源が東北沖であっても、遠く離れた関東や関西地方にも、緊急地震速報が発表される可能性があります。

ただ、発表の形式はこれまでと変わりません。従来の地震の予測なのか、長周期地震動なのかは区別せず、対象地域が並ぶことになります。

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気象庁は長周期地震動の揺れを4つの階級に分けています。このうち、速報の発表対象は「階級3」と「階級4」です。
気象庁によりますと、今回から速報の対象になる階級3と4の長周期地震動は、気象庁が「階級」にもとづいた観測を始めた2013年以降、宮城県内で4回観測されています。

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東京都内の超高層ビルなどでは、緊急地震速報が出た場合はエレベーターを最寄りの階にいち早く停止させたり、館内にアナウンスをしたりして、利用者の安全確保に生かそうという取り組みも進んでいます。


速報が出たらどうする?

従来からの地震でも、長周期地震動でも、とるべき行動は同じです。
落ち着いて、落ちてくるものなどから身の安全を守るということです。

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専門家は、超高層ビルなどにいる際に緊急地震速報を見聞きした場合、「基本的には、その場で安全なところにとどまることが必要だ」と指摘しています。慌てて階段を降りると転落したり、落下物に当たったりするおそれがあるためです。

そのうえで、このような対応を挙げています。
▽机などがあれば下にもぐり、周囲に見あたらない場合は頭を守る。
▽飛ばされないように伏せることも有効。
▽転倒・移動してくるものから離れる。

また、オフィスやマンションでは日頃からの対策も重要だといいます。キャスターがついたコピー機などは大きく動くことがあります。地震が起きる前に、しっかり固定しておくことが大切です。

         
NHKはどう伝える?

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NHKでも、速報が発表された場合はテレビやラジオで、これまで通りすみやかに伝えます。最初に通常の地震の予測で速報が発表されたあと、長周期地震動が予想された別の地域に追加で発表されることもあります。その場合は、NHKも追加の情報を、字幕や音声でわかりやすく伝えます。

震源から離れているからといって油断せず、安全を確保するようにしてください。


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仙台局記者 杉本織江
2007年入局
震災当時は仙台局勤務。
アジア総局などを経て2019年から再び仙台局。
震災・災害を中心に担当。