最初で最後のオリンピックへの挑戦 ~女子マラソン 大崎市出身・佐藤早也伽(積水化学)~

「年齢的にも上の世代になり、オリンピックを狙えるチャンスは最後になる。
しっかりとした準備を積み重ね、目標に挑んでいきたい」
宮城県大崎市出身の長距離ランナー・佐藤早也伽は、パリオリンピックの出場をかけた大阪国際女子マラソンでの快走を狙っている。

オリンピックのマラソンの日本代表は3人。
前回の東京大会から、代表選手はMGC=マラソングランドチャンピオンシップの一発勝負を中心に代表が決まるようになったが、佐藤は、去年秋のMGC出場権を獲得しながらも、コンディション不良で出場することができなかった。
オリンピックにはMGCで2人が内定し、残されたオリンピックの切符は1枚。
ファイナルチャレンジでの最後の一枠を懸け、今週末のレースに全てをかけて挑む。
(*対象となる大会で設定記録をクリアした選手の中で、最上位の選手に代表の枠が与えられる制度)

佐藤の大会までの道のりと決意を紹介する。

<アナウンサー・黒住駿>

 

東京大会直前にマラソン初挑戦!最初で最後の五輪挑戦
大崎市出身の佐藤早也伽(29)。
仙台市の常盤木学園高校時代は全国の上位に入った経験はなかったものの、東洋大学、実業団・積水化学で地道な成長を重ね、トラックや駅伝で徐々に結果を残してきた。
持ち味はスピード。

トラック種目では日本選手権10,000mで3位、さらにチームで出場する駅伝でも活躍するなど、徐々に頭角を現してきた。

その後、“ずっと憧れてきた”マラソンに本格的に取り組むことを決め、2020年春、初めてマラソンに出場。
名古屋ウィメンズマラソンで女子選手の初マラソン歴代6位(2時間23分27秒)をマークしたことで、
東京大会では考えることすらなかったマラソン日本代表への思いが強まり、
30歳で迎えるパリオリンピックへの出場に向けた挑戦が始まった。

「オリンピックを目標に戦うのは年齢的にもパリ大会が最後になる」と心に秘め、
“最初で最後のチャンス”に懸けてきた。

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(トラックで走る佐藤早也伽選手:写真提供 積水化学)

アメリカ合宿と世界陸上選手権を経て、“大阪国際女子マラソン”に照準を絞る
マラソンの経験が豊富とはいえなかった佐藤は、国内に限らず海外レースにも出場し、経験値を高めてきた。

おととし9月に初の海外でのレース、ベルリンマラソンに出場して9位。
世界トップレベルの選手との戦いに身をおいて、自身の力量を図った。

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(ベルリンマラソン後の佐藤早也伽選手:写真提供 積水化学)

さらに、去年はハンガリー・ブダペストで行われた世界選手権の日本代表に初めて選出。
1カ月間のアメリカ合宿を経て出場したが、結果は20位だった。
佐藤はこのレースについて、
「猛暑の中での走りでコンディションの辛さもあったし、海外の選手がペースをアップダウンして揺さぶりをかけてきた。
順位は納得いくものではなかったけど、自分がさらに強くなるための貴重な経験が出来た」と振り返る。

自身初の日本代表としての走りを成長の糧に、秋のオリンピック代表選考レース(=MGC)に挑もうと考えていたが、思った以上に世界選手権の疲れが影響して状態が上がらず、MGCへの挑戦は回避せざるを得ない状況となってしまった。

しかし、佐藤はすぐに気持ちを切り替えた。
「勝負にならない状態でレースに出ても悔いが残るだけ。
ファイナルチャレンジでの日本代表獲得を目指すための走り込みや調整に切り替えたい」と、
年明けの対象レースに、万全の状態で迎えることに目を向けた。

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(大阪国際女子マラソン向け調整する佐藤選手:写真提供 積水化学)

全日本実業団対抗女子駅伝MVPの自信、ふるさと宮城の快挙を刺激に大一番へ
佐藤は、マラソンが1月に控える中、去年11月の全日本実業団対抗女子駅伝に出場し、各チームのエースが集まる3区で区間2位の走りを披露。
チームを優勝に導く活躍で、大会の最優秀選手に選ばれた。
「武器であるスピードを駅伝で出せているし、いい状態をマラソンにもつなげていける」
と、大会に向けてプラスだと捉えている。

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(全日本実業団対抗女子駅伝で優勝した積水化学 前列左から3人目が佐藤選手:写真提供 積水化学)

さらに大阪国際女子マラソンに向け、年末年始に九州で長期の合宿を行うなど、大会に向けて距離を積む練習にも取り組む中、佐藤にとって大きな出来事があった。
1月に京都で開催された都道府県対抗女子駅伝で、ふるさとの宮城チームが29年ぶりに頂点に立ったことだ。

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(ことしの都道府県対抗女子駅伝で頂点に立った宮城県チーム)

佐藤は、
「ふるさとの若い選手たちが全国の舞台で力を発揮している姿は、本当にかっこよかった。
自分も奮いたたされる気持ちになった」と大きな刺激をもらったという。

今回の大阪国際女子マラソンでパリオリンピックを狙う佐藤は、過去2回この大会を経験している。
昨年は接触があって途中棄権となったものの、
「昨年も準備が上手くいって、調子が良い感覚があった。途中まで速いペースで走ることが出来た」
と、コースへの対応にも自信をのぞかせる。

自己ベストはベルリンマラソンでマークした2時間22分13秒。
ファイナルチャレンジは、佐藤が出場する大阪と、3月に行われる名古屋ウィメンズの2レースだ。
このいずれかで設定タイムの2時間21分41秒以上を達成し、
さらにその中で最もタイムがいい選手1人がオリンピックの切符をつかむ。
目標を達成するためには、これまでの自分を大きく超える走りが求められる。

「タイム更新のための準備はしっかりと重ねてきた。
とにかく悔いのないように、しっかり挑戦する気持ちを持って臨みたい」と佐藤。
「最初で最後のチャンス」と意気込む佐藤の走りから、目が離せない。

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