監督就任は"宿命" 今江敏晃監督の東北への思い

プロ野球・楽天で今シーズンから指揮を執る今江敏晃監督。楽天に移籍してコーチを経て、ことしで9年目。東北での生活も長くなる中、監督という立場になり、震災を風化させてはいけないという思いも新たにしています。被災地・東北とどのように向き合い、歩んでいくのか。
今江監督からのメッセージです。

(仙台放送局・川本聖)

 

【監督に就任】
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楽天の今江敏晃監督は、去年10月、昨シーズン4位に終わったチームの再建を託され、監督に就任しました。

(今江敏晃監督)
「東北楽天ゴールデンイーグルスの監督をさせていただくというのは、ご縁もありますけれど、東北の少しでも力になりたいっていう思いがあったので、“宿命”だなと思って、1歩を踏み出せた部分もありました。本当に東北との縁というのは本当に大きなものがあると思います」

【今江監督の東日本大震災】
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東日本大震災の当時、ロッテにいた今江監督は、さいたま市で2軍の試合に出場していました。そして、試合中に地震が発生しました。

地震の後、ライフラインは停止、電車も運休、高速道路も使えず、道路は大渋滞。家族の安全を心配する中、やっとの思いで自宅に戻りました。東日本大震災は、今でも忘れられない出来事です。

(今江敏晃監督)
「関東の自分の住んでいた地域も液状化で被害を受け、断水もしました。自宅に帰るのも本当に苦労しました。東北の被害が大きかったのは、鮮明に覚えています」

【被災地とのつながり】
震災直後から、今江監督は被災地の支援に取り組んできました。当時、関わりのあった球団職員の地元、福島県いわき市が被災したことから、その年のオフに現地に足を運びました。初めて見る被災地の光景は現実とは思えず、胸が苦しくなりました。被災地の厳しい環境で生き抜く人たちを前に、なんと声をかけていいのか、思い悩みました。それでも、プロ野球選手である前に1人の人間として相手に寄り添う姿勢を持ち続け、ともに支え合ってつながりを深めてきました。「頑張って」ではなく「一緒に頑張ろう」ということばに、今江監督の寄り添う姿勢が表れていました。

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楽天に移籍したあとも「やるからには単発で終わるのは違う。続けること、とにかく会いに行くこと」を大切に、被災地の支援は変わらずに続けました。小学校で子どもたちと一緒に給食を食べたり、体育の授業を行ったりしました。風評被害に苦しむ店を訪問して被災地を励まし続けてきました。

(今江敏晃監督)
「みんなで一緒になっていい刺激を与えあって頑張れれば、一番最高じゃないですか。東北楽天ゴールデンイーグルスがあることによって救われる人がすごくたくさんいるということが分かりました。
ちょっと大げさかもしれないですけど、なおさらやっぱりもっともっと頑張れば、もっともっといろんな人を救えると思いました」

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去年11月の秋季キャンプ中。野球教室を開いて支援を続けてきた、いわき市の子どもたちが監督になって初めて激励に訪れました。「監督就任おめでとうございます。来年、楽天が優勝できるよう頑張ってください」ということばとともに、子どもたちのメッセージが書かれたボードも贈られました。被災地を励ましてきた今江監督でしたが、今度は子どもたちから勇気をもらいました。

(今江敏晃監督)
「元気づけに行こうと思って行っているのが、いつも本当に元気づけられています。自分がやってきたことが皆さんに喜んでもらって、活力になってもらえるとうれしいですし、なおさら頑張らないといけないと思いました。これからも皆さんと一緒に頑張っていきたい」

【震災の風化を防ぎたい】
今江監督は、いま、ある思いを新たにしています。
「震災を風化させてはいけない」

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去年12月、震災直後から、子どもたちを励まそうと続けてきた、いわき市での野球教室を開催しました。震災から13年近くが経過し、参加した子どもたちは、震災以降に生まれました。震災がきっかけで始めた野球教室を通して「あの日、東北で何が起きたのか」親子で考えるきっかけにしてほしいと思っています。

(今江敏晃監督)
「震災の経験はむだにしてはいけないと思います。次の世代につなげていってもらい、また災害が起きた時にも、それをいかせるようなものにしていかないといけないと思っています。野球教室を通じて備えないといけないなと思う人が出てきて、1人でも命が助かれば、うれしいです。僕が野球教室を行う意味は、そういうところにあるのかなと思っています」

【被災地とともに】
楽天は、球団創設からことしで20年と節目の年を迎えます。今江監督は、これからも本拠地・仙台市をはじめ、東北の人たちに、生きる勇気を届ける活動を続けていきたいと考えています。東日本大震災からまもなく13年。東北とともに歩み続ける覚悟をしたためてもらいました。

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(今江敏晃監督)
「東北楽天ゴールデンイーグルスの存在意義を改めて再確認しています。監督になって、皆さんの思いが詰まっているなと感じました。そういう意味で宿命と書きました。宿命を感じて今シーズンを戦っていきたいです」